第2話 朝 松本奏
シャワーを浴びた後、着替えを済ませ身支度をした後、リビングへと向かう。現在時刻は8時10分前、よくある一般の家庭ではこの時間ならテレビから聞こえる出演者の声や状況に合わせた音楽、蛇口から流れ出る水の音だったりでうるさくなっていてもおかしくはない。
だが僕の家は違う。リビングからは何も聞こえない。聞こえてくるのは外の音。小鳥たちのの
聞こえる人たちのあいさつの声や会話。
先にも言ったようにそれらが聞こえてくるのは家の外の音。家の中から聞こえてくるのはせいぜい閉めた蛇口から水滴がシンクへ落ちる音ぐらいだ。
「いつも思うけどやっぱり寂しい部屋だなぁ。」
この時間この家には僕以外の人はいない。父さんは音楽関係の仕事で単身海外へ行っている。母はこの時間から自分が教師をしている音楽教室の方へ行ったり、コンサートのための準備、月例音楽会の設営などで日中いつも忙しくしている。リビングのテーブルの上には一枚の置き手紙が置かれている。
奏へ
今日も朝早くからお仕事があるので先に行ってきます。朝ごはんはいつもみたいに冷蔵庫に入っているので温めるものはレンジで温めて食べてください。友達と遊びに行くんだっけ?楽しんできてね。
母より
置き手紙を読んだあとは空いている場所に読んだよと記しの丸印をつけてそのままにしておく。そのまま捨ててしまうのは少し心が痛むからいつもこうしている。置き手紙の通り冷蔵庫にはラップされている焼き鮭が入っていて、IHコンロの上にある片手鍋には味噌汁が作ってある。鮭を温めながら白ごはんと味噌汁をテーブルに置く。そべて準備がすみ、一人朝ごはんを食べる。いつもの家の光景だ。小学校までは母がまだいて準備だったりをしていたが中学になってから高校2年になった今までそうしてきた。だからもう慣れてしまった。これが僕の家の普通である。
食べ終わった後のお皿を洗って洗浄器に入れておく。時刻はそろそろ9時を回ろうとしている。集合時間は10時、場所はここから30分ほどで着くことができる。少し時間を潰そうかな。何か音楽を聞いて時間を過ごそう。スマホで曲を選択し、音楽をかける。作曲者は
僕は父が作曲した曲たちが大好きだ。一番のファンと言ってもいい。何より海外へ赴任している父がそばにいる感じがして良い。父の演奏をそばで聞いている感覚、それすら覚える。プレイリスに入れてある曲が全て流れた。ちょうど良い時間になった。そろそろ家を出て目的地に行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます