遺志固く、されど意志胸に
カナデ
第1話 夢 松本奏
僕、
暗い、暗い深淵の中。そこに僕は身動きが取れないままただそこにいる。手足の感覚は全くと言っていいほどない。今手を動かしているのか、一生懸命に足をバタつかせているのかもわからないし、それを確認する術もない。手足どころか全ての部位が全く動かない。動かそうとしても体に力が全く入らない感覚もあるし、誰かから体を縛られているような感覚すらある。
怖い。逃げたい。夢から覚めたい。声を出して助けを呼びたい。
そのどれもが最も簡単に一蹴されてしまう。ここから逃げたくても体の自由が効かない。声を張り上げようとしてもまず口が開かない。誰も僕のことを助けに来ない。
もう嫌だ、こんな世界。
そう願っていると不意に首筋にひんやりと冷たいものが触れた。叫びたくても叫べない。何が触れたのか確認したくても確認できない。しかし首に触れたそれが何かはすぐに知ることができた。
それは無機物だった。鉄のような色合いに水銀のような流動性。円柱の状態で伸び縮みしているのかと思えば角柱になりながらもくねくねと曲がったりしている。その柱のようなものは幾重ににも交差しあい元々一本のものがこうなったのか、何本もの柱によって幾何学模様を織り成しているのか全くわからない。その真実を突き止めようとすると何年もの時間を要する気もするし、生きているうちに解明することができのだろうとも感じる。
体にまとわりついた柱たちによって体が上へ上へと持ち上げられる。
次第に目線の先に光るものが見える。青白い光線を放った神秘的な物体。
このまま見つめているとこの物体に全てを奪われてしまう、そんな気すらする。
思考の全てをアレに奪われていた時、不意に我に帰る。
アレの全貌が見えてきた。
2メートルを悠に超える巨大な眼球だった。
柱が僕をその眼球へ押しやっていく。
僕はそれに飲み込まれ徐々に体が溶けていった。
溶けていく際に何かが僕に話しかける
『お前は…………。』
「うわぁぁ!!!!」
大きな声を上げながら勢いよく僕は起き上がった。現在時刻午前6時半身体中に気持ちの悪い汗をかき、よほど悪い夢を見たのか肩で息をしている。一度呼吸を整え、汗でベタついた体を綺麗にするためにシャワーを浴びる。
今日は友達と4人で遊びにいく日だ。
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