第12話 防具が出来たって!


――タッタッタッタッ

走ってる。私、走ってる!


防具が出来たと聞いて、嬉しくて。身体が自然に動いてしまったんだけれど……

私、ちゃんと、走れてる!なんだか、二重の喜びだ!


「ハーナルさーん!」


「おーおー!どうしたどうした!そんなに急いじゃって!」


「はぁ……はぁ……」

少し息切れはしちゃったけれど、全然苦しくない!胸が痛くない!それどころか、なんだか気持ちいい。爽やかな気分。走れるって、すごい!


「はぁ……はぁ……はぁ……防具……防具出来たって……!」


「あぁ、出来たよ!ちゃあんと腕によりをかけて作ったからね!すんごいのが出来てるよー!

ちょっと待ってなよ!

ナーリ!ナーリ!……」


ハーナルさんは、ナーリさんを呼びながら、作業小屋に入って行った。

しばらくして。


「ユウナちゃん!お待たせ!これだよ。」


ハーナルさんとナーリさんが出てきた。

黒と白、茶とベージュ、緋色がバランス良く配色されたすごく可愛らしい防具を持って。

なにこれすごい!可愛いしかっこいい!


茶とベージュのは、胸当てかな?薄桃色のワンポイントの模様が入ってて、すごく可愛らしい!

黒緋色のショートパンツには、ベルトや小物入れも付いてるし、機能性もデザインもかっこいい!

ロングブーツに、アームレストや、レッグウォーマーみたいなのもあるし、白を基調にしたジャケットまである!


「わぁー……!!」


「はははっ!気に入ってくれたみたいだね!

どうだい?アタシらの仕事ぶりは?」


「すごく良いです!可愛いし、かっこいい!」


「そうだろそうだろー?これ……実は、ユウナちゃんの成長に合わせてサイズも変わるからね!ちゃんと手入れすりゃ、長く使えるよ!」


「えぇー?!そんな事あるの?!」


「はははっ!アタシの異能を使ったのさ!」


異能……!そんな事が出来るんだ……?!すごい!

私が感動に打ち震えていると、そこに、ダーインさんがやってきました。


「おいおい!ユウナちゃんよぉ!俺の腕はそんなもんじゃあねぇぞ?!

何で防具が先なんだよ?!」


「あ、ダーインさん!こんにちは!

武器、何が私に合ってるか分からないから……。

服か防具なら、防具が良いなって思って!」


「なんだい、ダーイン。アタシらの仕事にケチ付けようってかい?!」


「けっ……。見せてみろぃ。

……なんだよ。さすがに、良い仕事してんじゃねぇかよ。マーニシルク、アラクネーの糸、ヴィヨンの革に、ザラタンの甲羅、竜鱗まで使ってやがる。秘蔵の素材ばっかりじゃねぇか。」


「はははっ!そりゃ、こーんな可愛らしい娘を護る防具だよ?下手なモン使えるかい!!当たり前だろう?」


「ふん……。まぁ、そりゃそうだ。ごもっともだな。

いいさ。俺にも考えがある。

ユウナちゃん!武器の件は、俺に任してくんな!」


「えっ……?でも、私……何が欲しいか決まってないけど……」


「まぁまぁ。俺に任してくれたらいい!デザインも、その防具に合うようにしといてやらぁな!」


そう言って、ダーインさんは、腕をぐるぐると回しながら、鍛冶小屋に戻って行きました。


「はははっ!ダーインのヤツ、先を越されたのが余っ程悔しかったんだねぇ!

ユウナちゃん。これは期待出来るよ!

さ、付け方教えようか。ナーリ!」


「はい!ユウナちゃん、こっち入って。」


ナーリさんに連れられて、作業小屋の隣の家に案内されて……

「あらぁ、ユウナちゃん。結構ご立派なのねぇー。」

とか言われながら、装備の仕方を教えてもらいました。正直、それはちょっと恥ずかしかったかな……。


――


早朝。


まだ、日が登り始めて間もないミュルク村は、照明もないので、薄暗い。

月明かりが、照明代わり。

今日、私は、ナイと二人、狩り小屋に向かう。


「ウルさん!おはよう!」


「お、来たかい。おはよう。ちゃんと起きれたんだな?はっはっは!」


「そりゃそうだよー!私が行きたいって言ったんだからー!」


「はっはっは!そうかそうか!偉い偉い!

お?それがユウナちゃんの防具かい?……こりゃ凄いな……!」


「でしょー?良いでしょー?」


「おお、良い防具だ!まぁでも、今日は防具の性能を実感する事にならないようにな!」


「はーい!」


「お。ナイも来てたのか。」


「ナイは、ユウナを、守る。だから、行く。」


「そうかそうか。お前も、偉いヤツだな!はっはっは!

よし。じゃあ狩りのメンバーを紹介しよう。

入ってくれ。

えーと……この、一番若僧が、ソリンだ。」


「ちょ……ウルさん!若僧って!」


「ソリンさん。ユウナです!お世話になります!」


「ああ、噂は聞いてるよ。よろしくな!」


「ソリンは、ちょっと向こう見ずな所があるからな。

若僧でいいだろ!はっはっは!

ま、実際若いしな。30になったばっかりだったか?」


「ちっ……。まぁそうッスね。まだ30ッスよ。」


「というわけで、まだまだ新人みたいなもんだ、コイツは。」


30歳というと、ずいぶん大人な感じがするんだけれど、ソリンさんは、どう見ても少し歳上かな?ってくらいで……。エルフの年齢ってよく分からない。


「で、こっちの辛気臭いヤツがへーニルだ!コイツは中々の射手だぞ。」


「へーニルさん。ユウナです!お世話になります!」


「……へーニルだ。」


「な?辛気臭いだろ?あんまり喋らないんだよ。」


へーニルさんは寡黙な感じですが、優しげな目許をしていました。素っ気ない挨拶だったけれど、怖い印象や、悪い印象は受けませんでした。


「よし!じゃあ今日はこの面子で行くぞ!道すがら役割は説明するからな!」


こうして、私達はまだ暗い森へと向かいました。

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