第10話 世界の歴史と私の精力がヤバみな件


お昼寝から醒めると、普通にお勉強の時間でした。……座学というんですかね?教科書は無いのだけど。

先生はもちろんマリーカさんです。


「ユウナ様は、希望の樹の力で既にご存知かも知れませんが、この世界は、アルヴヘイムといいます。

アルヴヘイムは、大きく3つの国に分かれています。」


3つしかないんだ?何だか少ない感じなんだね。


「先ずは、アルヴ国。この国ですね。この国は、ヴァルコイネン家が治めています。

アルヴ国の民は、エルフでもアルヴ種が中心で、村単位で生活をしています。

村と村は、互いに旅人が行き来して、交流を持っていますね。」


アルヴ種……。お父さんは、フォルセ・アルヴ・ヴァルコイネンだっけ?アルヴ種のヴァルコイネン家って感じの名前なのかなぁ?私は、もうヴァルコイネン家は名乗れないみたいだけれど。そういえば、マリーカさんや、ダーインさんや、ハーナルさんは、苗字みたいなのは無いのかな?村長さんは、ヴィズ・ミュルクって名乗ってたけど……。


「次にスヴァルト国。スヴァルト種というエルフの住まう国です。国境は、この辺りから程近く、天災時には、アルヴとも共闘する事もあります。

ですが、普段の国交自体は現在濃くはありません。

考え方が違う部分があるので、余計な争いを生まない為ですね。

スヴァルトは、アルヴよりも好戦的で、剣や槍などを使って戦います。そして、言法セイズは使いません。」


「天災で、共闘……?天災と戦うの?」


「天災とは、竜種の襲来や、化物の襲来などですね。特に竜種は、空から飛来してきますので、その様に呼ばれていますね。放っておくと、破壊の限りを尽くすので、戦って追い返します。」


竜種って、あの竜……だよね?いるんだ……、竜。しかも、やっぱり強いんだ?


「前回の天災は……確か150年ほど前でしたでしょうか……?英雄ユーナリオン様がご活躍されました。

ユウナ様のお名前は、ユーナリオン様に肖って付けられたのですよ。」


そうなんだ……。そういえば、私、前世って、悠名ゆうなって名前だった気がする。だから、全く違和感が無かったんだけれど、偶然同じ名前だったのかな?それとも、あの気持ちの悪い神様がそうしてくれたのかな?分からないけれど、同じなら分かりやすくて良かったかな!


「最後に、フェアランドです。フェアランドは、妖精フェアリー達の住まう国です。

と、言っても、フェアリーだけでなく、沢山の種族がいると言われています。例えば、ドワーフや、ノーム、ニンフなどですね。

ただ、フェアランドは孤島ですので、交流はありません。」


妖精フェアリー!すごい!見てみたいなぁー!会えるかなぁ?でも、交流はないんだね……。


「あれ?でも、ダーインさんってドワーフに弟子入りしてたとか……」


「ああ、それはですね、フェアランドの住人は、稀にこちらの大陸にやって来る事があるのですよ。

そんな時に偶々交流を持てる事はありますね。

ダーインは、幸運だったのでしょう。

フェアランドの住人も、異能のような力を持つ種がいます。そして、エルフの様に寿命の長い種もいます。自由な気性を持つ者が、旅に出るのは不思議な事ではありませんね。」


自由……自由かぁ。そんな風に出来たら、カッコいいよね。

私は、寿命は短いみたいだけれど、だからこそ、頑張って生きなきゃだよね。


「アルヴヘイムの、主な国と種族についてはこんな所ですが、またお聞きになりたい事があれば、ご質問下さい。」


「はい!」


「では、アルヴヘイムの成り立ちについて、ですが……。

現神については、覚えておいでですか?」


「はい。神族ですよね?」


「そうですね。現在神族を名乗っている者達は、我々の祖先を滅ぼした者達です。

アルヴヘイムに住まう者達も、元を辿れば、強大な力を持った神族でした。

現神の……最高神が、自分達の勢力以外の神族や強大な力を持つ種の、その殆どを滅ぼしたのですが、我々の祖先は、早い段階で恭順の意を示しました。

結果的に、神族としての力は奪われ、別種にはなりましたが、アルヴヘイムも、その住人も、生命だけは残りました。」


「えっ……?なんで、その最高神?は、自分達以外を滅ぼそうとなんてしたんですか?」


「……それは、伝わっておりませんが……

言法は、我々の祖先の創り出した技法といわれておりますが、現神達には扱えないようです。

その辺りが関係あるのかも知れませんね。

それに、我々が奪われたものの中には、文字があります。我々は、文字を使う事が許されていません。

それは、言法を文字で示しておくと、同じ効果を発揮出来たからだと言い伝えられています。

何にせよ、本当の所は、最高神のみぞ知るという事でしょうね。」


何だか、神様って、やっぱり酷い感じなのかなって、思ってしまうような話でした。あの気持ちの悪い神様は、その最高神だったのかな?


「では、言法についてですが……。

この世界には、ある力が満ちています。神族は、神力と呼んでいますが、我々は単純に力と呼んだり、精霊の力、略して精力と呼んだりしています。

言法は、世界に満ちた力に語り掛け、事象を発現させるのですが、それには、自身の精力を世界の精力と循環させる必要があります。

ユウナ様の場合、精力の循環が上手く出来ないようで、言法を発動させる事が出来ない様なのです。」


えぇ〜!……精力って、なんかヤダー!


「ですので、お料理の件ですが……。この家のコンロは、言法で作動します。なので、ユウナ様に料理をお教えするのは構わないのですが、火を扱え無いかと思いますので……。それと、お風呂もです。お風呂も、言法で沸かしています。お手伝い下さるお気持ちは、大変嬉しいのですが……。」


マリーカさんは、すごく言いにくそうに、いつもと違って歯切れの悪い感じで、絞り出す様に教えてくれた。

そっかー。火が、使えないんだね。

うーん……?

ライターみたいなのがあれば、野外なら料理出来るかなぁ?


「大丈夫です!出来そうな所だけでも教えて下さい!」


「そうですか……。そうですね。もちろんです。

では、早速、御夕飯の支度をお手伝い頂けますか?」


「はい!」


そうしてこの日から、お昼と夜の料理のお手伝いをする事になったのでした。

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