第9話 マリーカ先生の青空授業:生活基礎②


マリーカさんの案内で、東の次は村の南側に向かいます。


東では、鍛冶師のダーインさんと、防具職人のハーナルさんと挨拶しました。

歓迎……してくれてるみたいで、何か作ってくれるって言ってました!親切な二人です!

せっかくなので、いつか冒険をする時のための装備を、今度お願いしようかな?


……冒険の装備って、なんだかカッコいい響き!

どんなのが良いかなぁー?


やっぱりエルフだから、弓?

でも、騎士さんみたいな剣とかもカッコいいよねー!

魔法が使えたら、ロッドみたいなのが良かったけど……。使えないんじゃあね……。仕方ないもんね。

マリーカさんが使ってるのは、ナイフだよね。

うーん。迷うなぁー。

でも、刃物ってカッコいいけど、使うとなると、ちょっと怖いかも……。どうしよ?


「ユウナ。どうした?」


装備であれこれ悩んでいたら、ナイが心配そうにしていました。


「あっ。ううん。なんでもないよ!

さっきのお話、何が良いかなぁって考えてただけだよ?」


「そうか。ユウナは、ナイが、まもる。

すきなの、もらう、といい。」


「ありがとうね!」


ナイも、私に優しくしてくれる。だから、ついついなでなでしちゃうんだけど……、しっぽを振ったりはしないんだよね。嬉しそうではあるのだけど。


それより、何だか少しづつだけれど、ナイの言葉が上手になってきたような……?


「ユウナ様。ご覧下さい。」


考え事をしている間に、村の南側に着いていたようでした。


「あ!はー……い……!」


マリーカさんの声に、そちらへ顔を向けると……


「わぁぁー……!!」


そこには、一面に拡がるお花畑が!

綺麗に整えられたお花畑は満開で、白に赤に黄色に青に紫にと、色とりどりに咲き乱れています。


「すごい……綺麗……!」


思わず驚きの声を上げた私を見て、マリーカさんが一瞬、柔らかく微笑みました。

笑顔が素敵過ぎて、何だか……ちょっと照れます。


「この畑は、調味料になる花や、食料になる花を育てています。

お風呂で使うものもありますが、大体は食用ですね。」


これには、なんだか納得しました。マリーカさんの作ってくれる料理は、やたら良い香りがするのです。

それこそ、花の様な香りが。材料が食用花なら、そうなっても不思議はないですね……。


それにそれに!マリーカさんって、美人でスタイルが良いだけじゃなくて!すごくすごく良い匂いがするの!きっと、花を食べてるからなんだ。


あっ!ていうことは……?

私も、良い匂いになれるのかな?!だったらいいなぁー!


畑を通り過ぎて、道なりに進むと、ログハウスではなく、小屋があった。それほど大きくない小屋が、二つ並んでいる。


「こちらの小屋ですが、食用卵を産む鳥の飼育小屋です。

今は残念ながら、中はお見せ出来ませんが……

何れ機会もあるかも知れません。

あちらの柵の方に参りましょうか。」


「はーい!」


南側のエリアは、北や東よりも結構広いんだけれど、民家の数はあんまり変わらないみたいで、隣から隣までに、わりと距離があった。


柵の辺りに近づくと、

「キュアーッキュアーッ」

と、何かの鳴き声が聞こえてくる。


その柵の中は、南向きに拡がる長方形で、とても広々としていた。学校のグラウンドくらいありそうかな……?


その広場で元気に走り回っていたのは、見た事の無い大きな鳥さんでした。


「わぁー!大っきい鳥さん!」


「ルクという鳥です。乗り物としても、荷運びにも、エルフの生活には欠かせない存在ですね。主に旅人が使いますが、農作に利用する事もあります。

血統により、色が違いますが、得意な事や性質が若干違いますね。

では、西側に参りましょうか。」


「えっ!もう行っちゃうの?」


「ルクが気に入りましたか?」


「うん!カッコいい!」


「そうですか……。では、もう少し御覧になられますか。」


マリーカさんは、優しくそう言ってくれました。


前世では、あまり出掛ける事が出来ない身体だったけれど、車椅子で連れて行ってもらった、動物園を思い出して、少し懐かしい気持ちになりました。


――


「村の西側は、住人が居る時期は限られます。

旅人は、基本的に他の村へと交易に出掛けている事が多いのです。

他の村からの旅人が来ていれば、宿泊用の小屋に泊まっている事もありますが。」


旅人とは、つまり行商人みたいな事で、各村の特産品などを交換しに行ったりしているみたいです。

旅人の役割じゃない普通のエルフは、あんまり旅をしたり冒険をしたりはしないみたいです。


「このミュルク村の代表的な品は、主に狩人達の造る燻製と、ハーナル達の造る革製品や毛皮ですね。

ご興味があるようでしたら、旅人が居る頃にまたお話いたしましょうか。」


興味……興味かぁー。旅……に、興味はあるけれど、そういう商隊みたいな事じゃなくて。もっと、冒険!みたいな事がしてみたいなぁ。

でも、そういう事しようと思ったら、しっかり準備とかしないとダメなんだよね。


マリーカさんは、色々教えてくれるし、お世話もしてくれてるけれど……。私も、いつかは独り立ちしないとダメだよね。前世では、結局……何も出来ないまま終わっちゃったから、今度こそ、勉強も運動も頑張って、独り立ちしたいな。


「さ、もうお昼ですから、そろそろ戻りましょうか。」


お家に戻って、お昼ご飯を食べた後は、少しお昼寝の時間でした。幼児みたいだなぁと、少し思ったのですが、強い身体作りには必要なのかも?

大きく見えても、私まだ新生児なんだし、焦らずに頑張ってみようと思います。

それにしても、私が寝付くまでトントンしてくれてるマリーカさん……なんだか女神みたいです。

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