第30話 魔法石編 その7 実射 1

パティは自らが〝星形〟と呼ぶ拳銃を手に取った。


「古い銃弾は全部使わないと。」


剝き出しで出土した5発の銃弾は、いわゆる「不発弾」の可能性があり、

自分が率先して確かめなければならない。


「始めます!」


パティの声が会場に響き渡った。

同時に観客が静まり返る。


標的は10mほど離れた場所に立てかけてある木製の盾。


「星形」のグリップは握った感じが、どうにもしっくりこない。

少し幅広く、角張っている形状。                        

握れなくはないが、やはり細身で丸みを帯びた方が好みだった。

なので、パティはグリップ感がイマイチな拳銃は両手で包み込むようにして

握る事を心掛けている。


そして、射撃前にする必要な所作をわざとゆっくりやって見せた。


「お兄ちゃん、ちゃんと見てるっ⁉」

「黙ってろ!!」


パティを注視する、エムとケイティ。


銃を構えるパティ。

見る人によっては腰が座っているとか、へっぴり腰に見える構え方。


パンッ!


音は少し迫力に欠けるものだったが、手に伝わる反動はそれなりにあった。

続けて4発撃って見たが・・・ 思いの外、使い勝手は悪くない。

そして、命中率も悪くなかった。

前日の整備である程度分かっていたとは言え、ちゃんと精度は保たれていたようだ。

加えて、剝き出しで出土した銃弾が全て使えたのは大きな収穫と言えた。

やはり普段使っている魔法のひまし油に漬け込んだのが功を奏したのだろうか?


「あ、そうだ。」


ふと、事前に知らされていたルールを思い出したパティ。

排出された薬莢五つを全て拾い上げた後、サッと手を挙げた。


この部門の終了を知らせる合図。


破損した木製の盾は回収され、色々と調べられる事となった。

その状態を見た親方は開口一番、


「こんなもんか。」


その一言にギョッとしたのはギルマスのバックだけだった。


「ちょっと待ってください! これでも充分な威力ですよ!?」


木製の盾は角型の普及品。

破損状況だが、所々合板の接着部分にそって割れているのが確認できた。


「確かに、この盾の出来は悪くない。 だからこうやって原形を保っている訳だ。」


「・・・?」


「俺が言いたいのはだな、パティの普段使いのヤツ(拳銃)だったら・・・」

いったん間を置く親方。


「コッパミジン、だ。」


その一言に無言で頷く3人の神官たち。


「次、始めます!」    パティの声が会場に響く。


トイレ休憩に行っていたエムがその声に気付き、慌てて持ち場に戻ると・・・


「出番です!」


パティがエムに手渡そうとしていたのは・・・


「いきなりこれかよ!!」


エムの目の前にあるのは、パティがその名を〝ハリー〟と呼ぶ大型拳銃だった。


受け取る前に、手のひらの汗を自分が着ている服で拭うエム。


「手順をもう一度おさらいしてください。」


「う、わかった!」


まずロックを外し、6発装填できる銃創のうち1発が装填されているか確認する。

                 ↓

弾丸が装填されている位置を銃口の位置に合わせ、元に戻す。

                 ↓

安全装置を解除し、撃鉄を起こして射撃準備完了。


「ちょっと待っててください。」

「!?」

「パティちゃん、どうしたの?」

「ティッカーさんに許可もらってきますので・・・」


何やらギルマスのバックと親方とで話をしているパティ。















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