第26話 魔法石編 その3 アレが足りない出土品

「じっちゃん!! なんでこんなとこにいるんだよ!?」


「聞きてえのはこっちだ!! なんで、おめえらがここにいる!?」


「あああ・・・ 二人とも落ち着いてー!」


呆然と両者を見比べているパティ。


そんなパティの様子を見て、少し冷静さを取り戻す親方。


「おめえらの件は後回しだ。 しばらくそこで待ってろ。」


「親方、お孫さんだったんですか。」


「ああ。 ・・・仕事の話をしようか。」



荷車に積まれたままになっている鉄の粒の数々。


「さてと、選別始めるぞ。」

「親方、もしかしたら怪しいモノ・・・紛れ込んでいた気がします。」

「それを見つけ出してくれ。 俺は詳しい形なんか分からんからな。」

「分かりました。」


もう一つの荷車を持ち出して来た親方。その中に、いわゆる〝ルツボ〟があった。


「錆コインと歪な粒、針金なんかは・・・そのルツボにぶち込んでおけ。」

「分かりました。」


カツンカツンと工房内に響く、変にリズミカルな選別の音。

親方とパティ、共にそれぞれの入れるべき所へ放り込んでいる。


選別作業が半ばに差し掛かろうとした時。


「ありました。」  


パティが手にしていたのは、紛れもなく未使用の実弾だった。


「やはりあったのか。」


その汚れた未使用実弾をまじまじと見つめるパティ。


「親方・・・ これ、半分に割って中の火薬の成分を調べたいんですけど・・・」


「なにぃ⁉ そういう構造なのか?」


パティは、このタイプの銃弾が発射される仕組みと構造を改めて親方に教えた。

自分がなぜこんな事をスラスラと話せるのか、訳が分からないまま。


「・・・すいません、偉そうな事言っちゃって・・・」


「いや、よく教えてくれた。 これは俺が知ってなければいけない事だ。」


選別の結果、いわゆる「怪しいモノ」が6点ほど見つかった。


1,未使用の銃弾が三つ。 ギルマスのバックから提供してもらった〝出土品〟の物   

と口径が似通っている。 あるいは全く同形かもしれない。


2,明らかに長さと口径が大きい銃弾が一つ。 パティが「ハリー」と呼ぶ大型拳銃の口径と同じかどうかは、計測してみないと分からない。


3,〝出土品〟の物と同型と思われる拳銃。 銀メッキが施された形跡があった。


4,魔導書を縦に並べた大きさ(B5×2)の箱。  

ずっしりと重く、テープのようなものでグルグル巻きに覆われている。

一番「怪しいモノ」はこれかもしれない。


「おめえら、ギルマスのバックを呼んでこい。 新たな出土品が出た、と言えばすぐ

来るはずだ。」


「う・・・わかった!」



テーブルの上に置かれた、新たな〝出土品〟を興味深そうに見るギルマスのバック。


「・・・まだこんなに埋もれてたとは・・・」


「バック・・・ グネルという男の情報、まだ入ってねえか?」


「まだですね。入り次第、真っ先にお知らせしますよ。」


「それにしても・・・ 〝火薬〟か。 確かに理屈は合っているな。」

親方は言葉を続けた。

「悔しいが、細かすぎて俺には作れねえ。火薬のレシピもサッパリ分からんし。」


「おやおや・・・らしくないですねぇ、(武器防具)生産ギルドの長ともあろう人がそんな弱音を吐くなんて。」


「別に弱音じゃねえさ。 ダメなもんはダメ、なんだよ。」


「親方、その箱・・・開けちゃっていいですか?」


「そうだった! サッサと開けちまおうか。」


パティが工具類の入った袋から取り出したのは、折り畳み式のナイフ。

何て書いてあるか読めない文字の方を上と判断したのか、箱をひっくり返した状態に

すると、箱の輪郭にそってナイフを注意深く突き入れていく。

グルグル巻きのセロハンテープが経年劣化による硬化したためだろうか、パリパリと

音を立てて割れていった。

平たい箱を開けてみると・・・


「・・・・・・」


短い筒状の物体が、合計30個。

パティはそれを初めて見るはずなのだが・・・


何故か、おおよその見当は付いていたようだった。













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