第20話 ギルド編 その20 荒ぶる川の話 3

「えっ、マジで!?」 と、その人は橋の向こう側を確認しに行きました。

つられて見に行く人も。


「うわわわ・・・ でかいのが5体、こっちに向ってる!」

「急げーーッ!!! 負傷者を早く安全な所ーー!!!」

それを聞いて、援軍に来た皆さんがざわつき、大わらわです。


あたしの近くにいた人が話しかけてきました。

「お嬢ちゃん・・・怖くないのかい?」


「そりゃ怖いですよ。あたし、剣術も魔法もダメな弱っちい人間ですから・・・

この武器を使うしかないんです。」


「へえ・・・ 石弓のグリップみたいなんだけどねえ。」


あたしに話しかけてきた人は、援軍に加わったハンターの仲間のようです。

そんな話しかける暇があったら負傷者の救助を手伝えよ、と言いたかったんですが

・・・

そんな暇もありませんでした。


ザバーッと、水しぶきの音がすると・・・

橋の欄干をつかむ毛むくじゃらの大きな手が見えました。

そして、次から次へと猿型モンスターが。 その数5体。

大きさはバブーンの戦士型より二回りほど大きかったような・・・

それよりも気になっていたのは、目の前の猿型モンスターです。

そいつはネックレスのような首飾りを身に着けているのですが・・・

どう見ても、人間の頭蓋骨を繋ぎ合わせた物にしか見えませんでした。


手下が全滅したのを理解したのか、5体の猿型モンスターは一斉に怒号です。

ついでに、目の前にいるあたしたちの事を敵と認識したようで・・・

歯を剝き出し、すごい形相で威嚇の叫び声をあたしたちに浴びせているんで

しょうが・・・ 正直言って、やかましいだけでした。

放っておくと人間社会に深刻なダメージを引き起こす恐れもあるため・・・

黙ってもらうことにしました。 永遠に。


一番やかましかったリーダー格の顔に、4連発ほど叩き込みました。

威力が少し落ちる弾丸を使用したせいなんでしょうか?

4発とも貫通には至らなかったのですが、倒すことが出来ました。


大太鼓を一回打ち鳴らしたような音の直後に、木の枝をへし折るような音。

腹に一発、頭に一発でしょうか?

ブドーも初見のモンスターだったので、念入りに対処したようです。


コンタスは使い慣れない武器だからなんでしょうか、少し苦戦していました。

パキン!!パキン!!という音がしたので、何かと思ったら・・・

どうやらロングソードが2本とも折れてしまったようです。

猿型モンスターは・・・ 頭と胴体が別々の所にありましたが。


残りの2体は、それぞれ2発で仕留める事ができました。

と、言う事は・・・

やはり、弾倉は空になっていました。 何かあるといけないので・・・

今のうちに補充です。  とは言え、残りはあと8発。

先っぽが変にテカテカしている、この弾丸だけ。


周りにいたハンターの皆さんが一斉に歓声を上げました。


「あんた、すごいコだったんだねえ!! 見直しちゃったよ!!」

先ほどの怒りんぼ魔術師さんです。


「ケガ人は・・・大丈夫ですか?」


「全員、無事に収容できたよ! あんたのおかげでね!」


「まだです。 石弓隊の増援をお願いします。」


「え、何言ってんだい?? あんた・・・」


「橋の向こう側、川岸の方を見てください。」


「え・・・ えええっっッ!!??」


炭みたいに真っ黒で巨大な物体が、川岸の土手を上がろうとしていました。

なぜか、異様に静かだったのは覚えています。

あの〝モーシン〟が二足歩行で移動していたとするなら・・・なんて、

そんなの見た事ないですけど、大きさ的にはそれくらいでしたね。


土手を上がった怪物は・・・

最初、橋ではなく村と共同墓地がある南方面へ行こうとしました。

そして、あたしたちのいる方を振り向いた時にその正体が判明したんです。


そのボッサボサに伸びすぎた体毛で分からなかったのですが・・・

やはり、川猿のボス的存在で間違いないようでした。


「バカ騒ぎやめーーーッ!!! 戦闘準備だよぉーーっ!!!」


あの魔術師さんの鶴の一声で、即席の宴会は企画段階で中止となりました。


川猿の大ボスも、どうやら状況を理解したようです。













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