第16話 ギルド編 その16 パティの事も聞きたい(中)
詳しく聞いてみると、公的機関御用達の専門業者を手配したそうで・・・
馬車よりは遅いらしいんですけど、その代わりに機関車という、馬の代わりになる物で荷車を引っ張って行くそうなんです。
しかも、専用の軌道を通るからほとんど渋滞が無い!
その引っ越し業者は長距離で複数の荷車等の大口案件の客のみ承るとの事。
親方の一行の荷車は計5台。 これだと馬は10頭必要になります。
ところが、機関車だといっぺんに荷車5台分引っ張って行けちゃうそうなんです。
すごいですよね。 ですから、馬さんは過重労働しなくて済むし・・・
これで経済は回るってもんです。
で、あたしがすごく心配していた、仲間をどう連れていくか?という問題。
親方が出した答えは・・・
なんと、檻に入れて輸送する! ・・・でした。
本当に驚いたのですが、話は最後まで聞け!と言われたので・・・
その通りにしました。
下手に隠そうとするから、かえってこじれてしまう。
あの国の入国審査は追及の度合いがハンパ無く厳しい・・・という話は充分すぎる
ほど我々に伝わっている。 そこで、こちらから先手を打つ事にした。
その先手ってヤツ、聞かせていただくと・・・
敢えて、事前にモンスターがいるという事を業者に伝えておく。
同様に、あの国の出入国管理局にもその旨通告し、配慮賜るようお願いする。
そして、手紙をくれたギルド長のバックにも・・・
嬢ちゃんの役目は、あいつらにしばらくの間おとなしくしてくれるよう説得する事。
ギルドに到着するまでの間、〝囚われの身〟を演じてくれ・・・と。
・・・なるほど、と思いました。
引っ越し業者さんの〝機関車〟は、どうやら二通りあって、燃料を燃やしてお湯を
沸騰させて・・・その蒸気で動かすタイプの物と、空気をギュウギュウに圧縮して、
そこから動力を取り出すタイプの物があるそうです。
( 蒸気機関車は、主にイギリスで使用された蒸気トラクターに酷似。
あるいはそのもの。)
( 圧縮空気機関車は、炭鉱等で使われた無火機関車とほぼ同じ。
あるいはそのもの。〝線路〟と車両連結の規格に合わせるため、台車に乗せるような
形の改造を施している。)
出発前、積み荷の再検査が行われました。
親方は・・・それはもう興味深々だったみたいで、運転士さんに機関車の構造とか、
規格が統一された専用軌道の事などを質問攻めにしていたようです。
あたしは・・・仲間たちのいる檻の荷車の中に入り浸りでしたね。
檻にはカーテンがかけられていました。
周りから好奇の目で見られないようにしてくれたのであろう事と・・・
それに、うっすらと魔法陣の模様が見えましたので、比較的快適に過ごせそうです。
後で感謝の意を伝えないと。
ブドーは、おかみさんが丹精込めて作ってくれた衣装を大変気にいったようです。
表情は・・・ぱっと見、分かりようがないんですが、衣装を見せてもらった時の
行動で、ああ、そうなんだなって。
それまで身に着けていた、小枝で出来た蓑を速攻で脱ぎ捨てて・・・
新しい衣装を着せてもらって、少しその辺をウロウロしたあと、
おかみさんに深々とお辞儀をしてましたからね。
コンタスは、もらった槍を手放そうとしませんでした。
先っぽに付いていた派手な形の刃先が金属の辺りからポッキリ折れてしまって、
単なる棍棒になってしまっても・・・
コンタスは、その〝木の槍〟の握った感触を確かめるように持っています。
もしかして、今後その武器で戦うつもりかしら?
ちょっと不安なんだけどなー。
ドレジャは・・・ いつもの通り、無表情です。
出会った時から、それは変わりません。
声は一度も聞いた事無いですが・・・
あ、それって、ブドーとコンタスもそうでしたね。
みんなあたしの事を心配して気にかけてくれている。
それは肌で感じるほどです。
あたしが丸腰だった事に気付いた時、すかさず小型の拳銃を手渡してくれたのは
ありがたかったんですけど・・・
その、なんて言うか・・・ ペッ!と吐き出すような渡し方って、どうなのよ?ww
まぁ、丸腰だったら最弱で間違いないあたしですが・・・
(使用可能な)拳銃さえ持っていれば、親方とおかみさん、引っ越し業者の方々の
安全は守れる。その自信はあります。
でも、まさか本当に撃たなければならなかった事態になってしまったなんて・・・
思っても見ませんでした。
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