第14話 ギルド編 その 14 (補足完)真実を話す親方

俺はてっきり、パティの報奨の件で細かい打ち合わせでもあるかと思っていたんだ。

でも、そうじゃなかった。

今回の件について、村長と村役場は新聞社に連絡を入れたらしい。


石弓猟師会代表の言い分はこうだ。

今回の戦果には大変感謝しているが、新聞の記者にはどう説明すればいいのかを協議

している。 しかし、具体的な対応策が思い浮かばない。

もし、いいアイデアがあれば同席して、記者に詳しく説明してあげてほしい。


・・・と、まあ、こんな調子で何も考えていないのが分かった。


で、役場連中のしていた話なんだけどよ・・・

あの時、俺はもっと真剣に聞くべきだったんだ。

恥ずかしい話、全くのうろ覚えなんだが・・・大体こんな感じの内容だ。


どうやらパティさんは、この村で猟師会どころか戦士ギルドにも登録されてないよう

ですが・・・ その点を記者から追及されたら、どう返答しますか?

それに、例の武器のこともあれこれ聞いてくるのは間違いないと思います。

討伐に協力してくれたとは言え、モンスターの件も避けて通れないでしょうし・・・


・・・とまあ、こんな感じの事を言ってたような気がする。

当時は・・・ああ、面倒なことに巻き込まれてしまいそうだと憂鬱になったな。

俺がそこで踏み止まって冷静に対処していれば・・・

あんな新聞記事にはならなかった。


俺は役場の連中に、こう口走ってしまったんだ。

適当にあしらって、サッサと帰ってもらえ。 ・・・とな。


と、言うのも・・・

以前からあの新聞社の記事には憤りを感じていた、という事が主な理由だ。

とにかく・・・観光のついでに、なんだろう。

記者がチラ見しただけの上っ面な取材。そのテキトーすぎる主観的な記事。

関係者の話・・・って、いったい誰の事なんだ?

俺だけでなく、村の衆の誰もが言った覚えの無い言葉。

それが活字になっていたんだ。

抗議文を何度かその新聞社に送ったんだが、返答の手紙なんか来たためしが無い。

当の新聞にも関連する記事どころか、釈明文すら掲載されて無かったな。


バブーンの群れとモーシン討伐の件で取材に訪れた例の新聞記者だが、片付けと解体作業を見て大層驚いていたらしい。

俺は、取材対象がパティと仲間モンスターに及んでしまう事を恐れていたが・・・

どうやら役場の連中は俺が言った通り、テキトーーに焼肉接待とかしてやって早々にお帰りしていただいたようだ。

やはり、あいつらも面倒事はまっぴらごめんだったみたいだな。

まあ、身に沁みついたテキトー体質が部分的に功を奏したのかもしれん。

で、あの場合仕方なかったとは言え、役場の体質も垣間見えた気がしたよ。

ああ、もう何だかな・・・

俺はこの場所で、こんな感じの奴らとオツキアイしていかなきゃならんのか・・・

そんな思いが自分の中でいっぱいいっぱいになった時、

ここいらが潮時かな、と思ったんだ。


ここ(ミミちゃんギルド)から俺あてに届いた手紙あったろ?

アレ・・・当初は断ろうと決めてたんだ。

けど、考えが変わった。 

決定打になったのは・・・例の新聞記事だ。


【デイリー・ウォーターゲート】

ついに倒された、稀代の怪物!!!

〝突進する岩山〟という異名でも呼ばれたイノシシ型モンスター!!

ついに倒してくれた! 石弓猟師会、超大手柄だーーっ!!

すごいぞ!! 取り巻きのバブーンの群れも倒されていた!!


・・・と、まあ見出しはこんな感じだ。

当時の新聞をまだ持っているけどよ・・・

一切載って無かったぜ。 最大の功労者の事なんかな!


あの時は、もうこんな所に居たくねえ!って思いで溢れかえっていたから・・・

まあ、乱筆乱文になっちまったが・・・おめえ(バック)の申し出文にあった、

【アリ・ブガルー氏逝去による次代生産ギルド長交代就任のお願い】。

その申し出を受け、了承する旨の返答文を郵送する事にしたよ。

もちろん、かかぁとパティには前もって言っておいた。


俺はこの村を出ようと思う。 ・・・とな。


で、二人とも同意してくれた時・・・何か、心が救われた気がしたぜ。


あと、気が進まなかったんだが、役場に顔を出さなきゃならなかった。

転出届ってヤツだ。

それをしないで夜逃げみたいな事をすると捜索対象になっちまう。

でも、正式な手続きを踏めば、晴れて引っ越しができる。

正当な理由と証拠書類もあったしな。


そんでもって、現在に至る・・・って訳だ。





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