第13話 ギルド編 その13 真実を話す親方(補足2)
村の衆が大挙して押し寄せ、見たこともない光景に大騒ぎとなったが、俺の役目は
村人総出でモンスターの死体の山を片付けてもらうよう頼むこと。
あと、コンタスとブドーを見て驚き警戒する村人たちに事情を説明したり、自警団に
石弓猟師会の面々を呼んで来るよう伝えた。
ついでに村役場や村長も連れてくるよう頼んだ。
どうせ面倒くさがって腰が重いだろうから特に期待はしていなかったが・・・ 結局は来てたみたいだ。
ようやく、かかぁが俺の所へ来てパティを診てもらう事になった。
どうやら両肩を亜脱臼しているらしい。 全く、とんでもねぇ武器だな・・・
そんなパティが体を張って強敵を倒してくれた。感謝してもしきれないってもんだ。
かかぁは診療所のスタッフも連れてきてくれたみたいで、早速運んでもらう。
パティは運び出される前に武器をコンタスに全部預けていた。
そこらへんは用心深い。仲間モンスターに全幅の信頼をおいているんだろう。
優先すべきは猿どもの死体処理。 放置された場合、異臭がひどくなるだけでなく、
星の数ほど虫が湧く。そうなってからでは対策費用が余計にかかってしまうそうだ。
病気にかかってしまう原因も初めから排除しておく必要がある。まあ、当然だよな。
初めは死体処理を嫌がっていた村人たちだったが・・・
家族を殺された恨み、あるいはモンスターとは言え・・・死んでしまった者に対する憐れみ・・・ 結局は、みんな文句ひとつ言わずにやってくれてたなあ・・・
そう言えば、興味深い! とか言ってたモンスター研究の学者さんもいたっけ。
とりわけ、パティの仲間モンスターも初めて見るらしく、不思議そうに見ていたな。
普段、ろくに人が寄り付かない武器庫前の袋小路は、さながら祭りのような人だかりだった。 まあ・・・実際、祝勝会みたいなもんだろう。
祭りとくれば、欠かす事はできない(?)キャンプファイヤー的な焚き火。
それでモンスターを火葬しましょう!という意見が村人たちから発生した。
で、急遽作る事になった、焼け落ちる前提で組み上げられた木の櫓(やぐら)。
その下に、空気を取り入れて燃焼効率を上げるためのカマド。
単に石を積み上げただけの物だがな。
その上に鉄の鎖を網状に配置し、枯れ草と木炭を適度に敷き詰める。
これで準備は万端。あと、どういった手順で〝火葬〟しようか?との事で・・・
話し合いになった。メンバーは石弓猟師会の代表、自警団隊長、役場代表、村長。
そして、当事者的立場の俺。
ただ、グダグダ長話みたいな協議は御免被りたいので、いきなり決定案になりそうな
意見をぶちかましてみた。 そしたらよ・・・
異議なし!で、あっさりと決まっちまった。 こいつら、丸投げしやがったな。
まあ、いい。 その提案というのが・・・
1、〝火葬〟は戦士型2体のみとする。
2、 数多くある〝偵察型〟は全て海へ廃棄処分。
3、 モーシンの後処理は食肉業者と役場に任せる。
それぞれの理由を尋ねられたんだが・・・
共通している事は、例え短い期間であっても放置してはならない。
それを踏まえてだぞと、連中に釘を刺しておいた。
1、は燃焼効率を測る意味合いもある。
ただでさえ戦士型2体は燃えにくそうなのに、即席の櫓程度の火力ではいつまで
たっても煙ばかり出てきれいに燃えてくれなさそうだ。・・・という俺の懸念に
対し、〝点火魔法〟と高熱魔法石があるから・・・何とかなります!だと。
両方とも長い詠唱が必要だから、あまり実戦向きではない。
敵がいない、こういった状況なら大いに役立つだろう。
てなわけで、役場と学者さんがたに丸投げ返ししてやった。
実際に燃えている様は・・・何となくおぞましい感じがした。
それに熱すぎて、とてもじゃないが近くで見られなかったしな。
2、偵察型は全部で42体だった。そんな数、手っ取り早く処理するにはどうすれば
いいのか? 土の中に埋めるには大人数の労力が必要だし、土壌汚染の恐れもある。
そのせいで作物栽培ができなければ、そんなのは農業ではなく・・・廃業だ。
しかし、この場所は海がすぐ目と鼻の先・・・
昔、地引き網漁をやっていた名残りで・・・砂浜は枕木が敷いてあったはず。
だったら、荷車は普通に通せるじゃないか!
早速手配したのは言うまでもない。
海へ捨てるという理由がもうひとつ。
ある噂の真相を確かめてみたい・・・ そう思ったからだ。
それは砂浜の海岸で起きる現象、【離岸流】。
あそこの砂浜は、大ぶりで質の良い二枚貝が結構たくさん取れる事で有名だけどよ、
禁漁区でもあるんだ。 何故なら、ものすごく危険だから。
その良質の二枚貝が取れる場所と離岸流の発生する場所は、ピタリと一致する。
で、そのお宝の二枚貝を狙って、密漁者がやって来る訳だ。
犠牲者は大抵そいつらで間違いない。
地元民は知っているんだよ。どんだけ恐ろしいかをな。
あそこの【離岸流】は足元掬われて、あっという間に沖へ流されて帰って来れない
・・・という現象だけでは済まないんだ。
過去に、その対策のつもりだったのか胴体に命綱を括り付けて二枚貝を取ろうとしたヤツがいたらしいんだけどな・・・
その砂浜を自警団がパトロールしていたら、ロープが海の方へ真っすぐに伸びていた
のを発見したわけだ。見たら、先っぽがスパッと切られたような切り口でな。
普通、密漁者の奴らはこんな分かりやすい証拠を残すはず無いだろ?
こりゃあ何かあったな、と思う方が自然だよな。
で、何かあったという証拠なんだが・・・やっぱりあったんだよ。
自警団によると・・・
ロープが見つかった場所からだいぶ離れた海岸で、漂流物が発見されたそうなんだ。
かろうじて原形を保っていたがボロボロの衣服。
バラバラにはなっていなかったが、肉体が皆無の白骨。その状態が確認できたのも、
茶色がかった透明なスライムにでも飲み込まれてしまったような有様だったから。
そして、決定打になったのは・・・
腰の部分にあった、かつての胴回り分の太さに結わえ付けたであろうロープの輪。
これを機に立て看板が設置されたんだが、未だに犠牲者は後を絶たないとか。
てぇ事は・・・〝ヤツ〟はあの海域に潜んでいる可能性が高い。
けど、誰も見た事が無いらしいんだ。 もちろん俺も。
そこで、突如としてできた42体の遺骸を供物として捧げてみようという企画だ。
話を聞くところによると、どうやら全部運び出せたようなんだが・・・
その後どうなったかは、まだ詳しく聞いてない。
要は問題なく廃棄処分できればいいだけの事なんだからな。
3、あのデカブツのモーシンの解体作業は思いのほかスムーズに進んだようだ。
一応、各々の取り分は話し合いの結果、次の通り。
役場・・・ 毛皮、骨、爪。 おそらくは装備や 武器の材料にするんだろう。
肉屋・・・ 皮下脂肪と食用に適した肉の部位全て。 焼肉屋も繫盛しそうだ。
漁師・・・ 食用に適さない内臓全て。 どうやら釣り餌の材料にするらしい。
祝勝会の最中・・・石弓猟師会の代表が話がありますと、俺に言ってきたんだ。
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