第8話 ギルド編 その8 保管庫にあった物
「あんた! パティちゃんが腹ごしらえするまで待ってやんなよ!」
「それもそうだ、待ってやるとするか。」
パティの前に出されたのは、具が少し足りないクリームシチュー。
20cmほどの、ソテーされた魚の切り身。
〝オフ〟と呼ばれる、スープやシチューに浸して食べる専用のパン。
「とりあえず・・・こんなのしか出せないけど、勘弁しとくれよ。」
「とんでもないです! ありがたく頂戴します。」
「もう・・・パティちゃんったら、いちいち大人なんだから!」
「全く・・・どんな育ち方してんだよ。」(笑)
そのころ、ギルマスのバックはギルド地下の保管庫に立ち入ろうとしていた。
鍵を開けて保管庫に入ると、自動的に点灯する魔法灯篭。
部屋中央のテーブルに、少し大きめの砂時計。 中の砂が落ち始めている。
〝制限時間内に用件を済ませてください〟と、浮かび上がる光文字。
「さあて・・・急がなくっちゃ。」
パティは「ごちそうさまでした。」と言って手を合わせる仕草をしたあと、思い出したようにグーグゥの方を見た。
「おっ、どうした?」
「おかみさんから言われたんですけど・・・ グーグゥさんの事、〝親方〟と呼んで
いいですかっ!?」
「・・・そうか。仕事付き合いの連中が俺のことをそう呼んでたんだけどよ・・・」
「いいじゃないの、あんた!!」
「そうだな、俺も嬢ちゃんの事は名前で呼ぶ。これからは、お互い仕事や商売の取引をする間柄になる訳だ。まぁ、よろしく頼むぜ。」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
パティが頭を下げた時、ドアをノックする音。
「ティッカーです、入りますよ。」
ギルマスのバックは、保管庫から持ち出したアイテム3点をテーブルの上に置いた。
1.黄色く色あせているが、ほぼ透明な袋に入っている銀色のビーズ。
厚紙の二つ折りで簡単な封がしてある。 何語か解らない文字と、
何やら小動物らしいイラスト。
2. 石弓の矢尻にしては先が尖ってなく、むしろ丸みを帯びた奇妙な形状の物体。
計六つとも金属製らしく、筒型をしている形といい、後部に穴が無い事から
見ても弓矢の矢を構成する物とは思えない。
3.石弓の矢を発射させる引き金とグリップが一体化した部品のようだが、それらの
関連する他の部品は未だ発見されていない。
以上の文は、いずれも研究者か鑑定士によって添えられた説明文だが・・・
パティの見解は実に明快だった。
1.スリングショット用の弾丸。
2. 拳銃用の弾丸。
3.拳銃そのもの。
だが、パティは自分の見解を話すことはしなかった。
それらの用途は分かっていても、どう説明したらいいか分からないから。
大事なのは、これからどうすべきか?なのだ。
「パティさん、使えそうな物はありましたかな?」
「間違いなく使える物ばかりですが、入念に手入れをしないとダメです。」
「そうでしたか・・・ やはり、すぐにという訳にはいかないんですね。」
「そうだ、おふたりに見てもらいたい物があるんです。」
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