第14話
善は急げだ。早速ライズの元へ向かうとしよう。この装備を渡さなければ、今日一日の努力が無駄になる。
別に俺が嫌われるのは構わない。この装備さえ渡せるのならばどうでも良い事だ。
他の仲間達に鉢合わせしない為、夜更け頃にライズの泊まっている宿屋へと訪れる。この部屋に彼女が寝泊まりしているのはリサーチ済みだ。後は窓を叩き、部屋に招いてもらうだけで良い。なんなら装備を投げ入れるだけでも構わない。
コンコン。軽く響いた窓の音をカーテン越しに聞きつけたライズはカーテンを開く。
「ど、どうも……」
「……」
まるでゴミを見るかの様な瞳。あんな健気な子にこんな視線を向けられては心が挫けそうになるな。
「入れて貰っても……?」
「何しに来たの……?」
一応窓を開けてくれた所を見るに、話しは聞いてくれそうだ。だが、動く気配が無い。このまま窓枠にぶら下がったまま話せと言うのかこの子は。
「まず、謝らなくちゃだよな。本当にごめん。一人で行かせるべきじゃ無かった」
「それだけ?」
「それだけって……まあ、俺の事は嫌いでも構わない。この装備さえ――――」
背中に背負った装備を見せようと片手を離した瞬間、その手を引かれて部屋の中へと放り込まれる。
「うわぁっ!?」
「ルドガーってさ……何者なの? 私が勇者って事を知ってたから近付いて来たんでしょ……?」
「ラ、ライズさん……目が怖いですよ……? 落ち着いて……ね?」
「質問に答えて。どうして、私に近付いたのか」
馬乗りにされ両手を掴まれる。無理矢理抜け出しても良いのだが、今の状況でライズから主導権を奪ってはいけない様な気がする。
「会った時に言ったろ? 旅をしていて――――」
「――――遠くの方から火事が見えたから。偶々、あの広い森で私を見つけたんだよね?」
「そ、そう、偶々ね。本当に運が良かったよ……」
怖い、何よりも目が怖い。ハイライトが消えて瞳孔が開きっぱなしじゃないか。俺はここで殺されてしまうのか?
「あんなに良い装備を渡して、また会おうって? それでここでも装備を渡して……偶然?」
「身を案じてだよ! ほら、俺が付いて行けないからその代わりさ! 俺には不要な物だったからね!」
「都合が良すぎるんじゃないかな……? ルドガーが会いたい時には都合よく現れて……私が側に居て欲しい時には居てくれないなんて……」
「い、居て欲しい時っていうのは……」
何だろう、凄く嫌な予感がする。
「こうやってさ、手を握って貰わないと……眠れなくなっちゃったんだよ? これも全部、全部全部全部……ルドガーのせいだよね?」
――――犯される。
汗ばんだライズの手が俺の手に絡み付いてくる。息を荒く吐き出し、薄気味悪く唇を歪ませた。
「ま、待て待て、落ち着け! ほら、こういうのはもっと関係を深めてだな――――」
「もう――――絶対離さない」
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