第3話
続いての説明は世界情勢についてだ。とはいえコレは簡単に、つまむ程度の説明になる。
基本的には人間対魔物というのが通例。魔なる者とは道を違えるというのが一般常識。魔王軍は野良の魔物をスカウトしたりして少しずつ領土を広げていっているという訳だ。
人間軍の方は協力はしているものの、派閥争いやら宗教争いやらで一丸となれない状況が続いていた。魔物と戦ってはいるものの、本格的には攻め入れない。攻めたとしても返り討ちにあうのが関の山なのだが。
永く続く膠着状態の末、魔王を崇拝する組織から勇者の末裔を見つけたと報告が入る。つまりはソコが冒頭。俺の居る現在地の少し前という事になる。
勇者を始末した俺は悠々自適に会議に参加し、実質的な六魔天のリーダーへと昇格する。勇者が生きていると発覚するまでの短い間なのだが。
「集ったか……」
ヴァイスと共に会議室へやって来る。中央に六角形の禍々しいテーブルが置かれた広々とした部屋だ。その背後には玉座。今は封印され、実体化する事が出来ない魔王が腰を据えている。
他の席には当然六魔天、幹部連中が座っていた。俺の報告を今か今かと待ち望んでいる様子だ。
俺にとっては既存のキャラだが、こうもバックボーンを把握しているキャラが登場すると目まぐるしい。
一人一人、簡単に説明しよう。
まずは【
【
【
【
「席に着け、始めるぞ」
ついでにコイツも説明し直しておこう。
【
「んで? 勇者を始末したって話はホントなのかよ」
大柄で逆立てた赤髪の男。コレが先も説明したレッドだ。名前と髪の毛、連動しているから非常に覚えやすいと思う。
「ああ、始末したよ。コレで俺達も安泰ってワケ」
「そんな……」
俯きポツリと零すのはアズール。水の様に透き通った髪を持ち、嗜虐心をそそられる表情をしている。そんな事を会議で言ってしまってアンタの立場は大丈夫なのかと不安にならざるを得ない。
「これで我等も勢力を伸ばせるというもの。まあ、それも貴様がしくじっていなければの話だがな……?」
ニヒルな笑みでこちらを見下してくるのはベルデ。このゲーム最強の中ボスの名を冠した女。ベルデを倒して得られるソウルは作中屈指のぶっ壊れソウルというやつである。
「不安なら自分で確かめたらどうだよ」
「いやなに、我は仲間を信じているからな。流石の貴様でも、若い女子一人葬る事を失敗などせんと信じているさ」
俺が走っていたタイムアタックでは幾度となくお世話になったベルデのソウル。初見プレイの時にだって本当にお世話になった。彼女には感謝してもしたりない。幾ら煽られても、皮肉を言われても、ベルデからなら何を言われたって動じない自信があるぞ。
「へッ、言ってろ」
「……随分と丸くなったな。気味が悪い……」
「後は雑魚掃除するだけなんだぜ? 末永く、仲良くしようや」
「……ゴォ」
俺に賛同してくれるのはダンク。心優しい彼は言語を話せず、鳴き声と身振りでしか感情を発露できない。
「ホラ、ダンクも仲良くしてくれて嬉しいってさ」
「ふん……」
「はあ、折角勇者とやらと一戦交えたかったのによぉ……シケたコトすんなよなぁ……」
「おいおい、こっちは魔王様様の命令で動いてんだぜ? ちっとは言葉に気いつけろ」
「勇者の亡骸は……確認したのですか……?」
「村ごと焼いたさ。狭え村だ、余裕で包囲出来たさ」
まあ、主人公は村の地下通路を通って生き延びているのだが。
「なんて……酷い……」
「どうするよ、魔王様。例の宿敵は消えたぜ?」
俺の言葉によって今まで聞きに徹していた魔王――――グリザイア=デュフォーは黒い影のまま不気味な声を響かせる。
「人間共を一掃し、我にソウルを献上しろ。今までと、何ら変わらん」
「魔王様の仰せのままに」
「
「チッ」
「……」
「ふん……」
「ゴォ」
各々が各々の反応で不満を見せ付けてくれる。いいや、ゴーレムのダンクだけは別に不満は無さそうだな。それどころか少し嬉しそうまであるぞ。
「そんじゃあ俺からの最初の命令だ。各々、今まで通り勝手にやんな」
「なに……貴様、正気か?」
「は? 何か不満でもあんのかよ?」
「勇者無き人間共に臆しているのか? 一気に一掃し、魔王様復活のタイミングを早めるべきだ」
口を出したのは忠誠心ボディを持つヴァイス。魔王様大好きっぷりを遺憾なく発揮している。
「勇者が死んだって言っても成長してない勇者だぞ? 人間の勢力はこれっぽっちもダメージなんざ受けてねえ。今まで通り、コツコツやってりゃ百、勝てんだ。意見出すならもうちょいマトモこと喋りな」
「……チッ」
俺はいまゲーム内では映らない部分をプレイしているのだ。こんな所でネロが全員に命令した事など知る訳が無いだろう。
だからこその現状維持。俺が上手く動ける様に、コイツ等には少しの間黙っていてもらおう。
「ほら、解散だ解散! 俺様を称えながら各自部屋を出て行きな!」
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