第33話

 耳慣れない鳴き声が耳をつんざく。

「うっ」

萌は耳に手を当てた。

 一匹の怪物が大きく唸り声を出して飛びかかってきた。

「わああ!」

 花と萌は腕を上げて、自分を守るようにした。

 硬くつむった目を薄く開けると、黒豹に馬の足、亀の甲羅、ウサギの尻尾をつけた怪物。は宙に止まったまま、身動き一つとれずにいる。

 魔法でできた戒めでがんじがらめにされているのだ。

 信也が二人の少女の前に立つ。

「大氣よ戒めの鎖となれ」

目には見えない魔法の鎖がうねりながら巻きついていて、この場にいる怪物たちを束縛した。もう何もできなくなっている。

「さーすがおじさん! やっるう」

萌が嬉々とした声で言った。

「おじさんは百人力なんだよ」

 信也は得意げに言う。

「畜生! 全て動けなくしただと……だがもうすぐ終わりだ!」

 男は懐から水晶をとりだす。

(あれは……)

 花はそれがポポンだと感じ取った。

(あの中にポポンがいる!)

 花は走り出した。

(わたしが助けるんだ!)

 動けなくなった怪物たちの間をすり抜けていく。

「花ちゃん! だめだよ!」

 花は聞く耳を持たず、萌も花を追いかけようと走り出した。

「あ、こら! まいちゃん、熊谷、ヘレル! 頼んだ!」

 と信也は声を張り上げる。

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