第32話
薄暗い部屋の中心にぽっかりと黒い穴が空いていて、そこが入り口だった。
入り口を通り抜けると、曇天が空を覆いゴロゴロと雷が鳴っている。大地は乾燥してひび割れ、生えている木々は枯れているのか、痩せ細って葉もつけていない。
遠くの岩陰で黒いフードをかぶった人物が男を見ながらほくそ笑んでいた。
冷たい風が肌に当たる。
かずさ「なんて寂しい場所なの……」
信也「急ごう」
しばらく進んで行くと、男がいた。
男の顔半分は鳥の毛で覆われて、袖からでている手は爪が長く伸びた虎の手と化している。
男の立つ崖の先には真っ黒い泥の海が広がっている。
そこに水晶を投げ入れていた。
とぷっ!とぷっ!
煌めく光が闇に飲み込まれているみたいだった。
「もうやめようよ! なにしているのよ!」
男は振り向く。
「もうなにをしているのかわからないんだ、僕はだれなんだ、何が目的なのかもわからない、ただこれをやめちゃだめなことだけはわかるんだ、とめないでくれ」
「なにそれ! おかしいよ! そんなことをしてもおねえちゃんは喜ばないよ」
「おねえちゃんって誰のことだよ、僕の邪魔をするな!」
かずさは男の言葉を聞いて絶句する。
「頭が、頭が痛いんだアアア!」
男は頭をかかえながら呪文を唱え始める。
「我が絶対の下僕として、この領域に召喚せよ! 出でよ!」
黒い地面に黒紫の輪が無数に浮かび上がり、色々な動物を継(つ)ぎ接(は)ぎしたような不氣味な生物が這い出てきた。
大量のそれらは地面を見えなくするほどの数だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます