第16話 しゅくしょう
あなたは他人にとても気をつかう。
そんなに気を使わなくてもいいと思うけど
「常に他者に気を使いますからね。それが普通ですよ」
「いや気を使いすぎだと思う。そのくらい気をつかうならわたしにも使ってほしい」
「え? 使ってますよ?」
「どのあたり? ごめん、全然使われてる感がなかった」
「それはそうだよ、気を使ってるって気を使ってる相手に思わせたら負けじゃん」
「負けかどうかはわかんないけど、まあそうね。あ、そうだ仕事でね」
「え? いいの? まあいいけど」
「……でね、書類にパンチを開けなければだからさ、縮小コピーを頼んだのだのよ。左側を空白にしなきゃいけないのに右側を空白にしちゃってね、なんでそんなことになるんだろう?」
「うん」
「すくしょうがうまくできないの」
「そう」
「なんですくしょうができないんだろうかと思ったわけ」
「あのね、やり方ちゃんと教えてあげた? スクショはね、電源ボタンと音量ボタン同時押しだよ」
「え? わたし、スクショうって言ってるよね?」
「ええ、とても新しいですね。ですからスクショはね、電源ボタンと……」
「もう! わかった。なんで縮小をスクショうって言っちゃってるんだろう。一回目で自覚があったわ」
「本当にすごいね。縮小でスクショうとかなかなか思いつかないよ」
「あのね、わざとじゃないの。本気で言ってるの。笑わないでくれる?」
「スクショの縮小。言いにくいね」
「スクショのしゅくしょう。確かに言いにくい」
「言いにくいと言えばこないだも面白い事を言ってましたね」
「はて? なんでしょう?」
「鉄人と達人って」
「ええ、私は達人だけどあなたは鉄人だと思ったから」
「それよ。あのね達人と鉄人は別物だからね」
「ん? 達人、鉄人、名人の順でランクアップでしょう?」
「残念、達人と名人はその通りなんだけど鉄人は衣笠か28号しかいないでしょう?」
「わかんないけど、ええ、まああなたがそうおっしゃるならそうなんでしょう」
「鉄人って不死身の人って意味だよ」
「マジで? 知らなかった」
「そうなの。だからね、わたしを鉄人って言うのはねお前はゾンビって言ってるのと同じなの!」
いつものように変なこと言ってる。
いつものように笑いあう。
いつものように
わたしはあなたのことが好き。
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今年最後の投稿となります。
皆様、良いお年をお迎えください。
8月終わりに投稿し始め、多くの方にコメントを頂いて、こちらの作品はとても幸せだなと思っています。
また新しい年もおかしな「あなたとわたし」二人の会話をお楽しみいただければ幸いです。
2022.12.29 UD
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