あなたが元気になれば：読む人によって面白さとか優しさとか強さとか正義感とかを少し感じて、あなたが元気になればわたしも元気でいられます。

第17話 だし巻き玉子とギンギラギン

　久しぶりにあなたに対して、どうしても許せない事がある。

「おい」

「あら？　いつもとなんか感じが違いますね」

「ええ、そうなりますよね。どういうことです？」

「何がでしょう？　あ、あれですか、熱が出た後にはみかんゼリーって言ってるのに買ってきてくれないってやつですか？」

「なに言ってんの？　そんな事を言ったことはないですし、別に食べたくないですよ。驚くね、初めて知りましたよ、わたしみかんゼリー食べたかったんだ」

「熱があるからね、仕方ない」

「いや、待って。違う、そんな話じゃないよ。わたしは怒ってるんですよ」

「まさかとは思いましたがやはりそうですか。で、何に？」

「こないだ、あなたはだし巻き玉子の話をしてましたね」

「ええ、はい。食べたいよね、一人で」

「うん、そうだろうよ、そうなんだろうよ。だが、ちょっと待って欲しい。あなたはいつもなんでも半分こって自分で言って実践してるよね？」

「ん？　そうかな？」

「そうだよ、回転ずしも２貫を半分こ」

「そりゃあそうだよ、２個も食べたくないじゃん、一個でいいもの」

「ん？　まって。それは食べたくないからなの？」

「違うよ、おいしいものは半分こって、誰かが言ってました」

「何ちょっと遺留捜……ドラマみたいに言ってんの。いつも私がお腹いっぱいで食べられないって言っても半分こだからって言ってるよね？　身体の大きさが違うんだから半分こはフェアじゃないと言ってるのに半分こが当たり前になってるよね？」

「そりゃあそうだよ。だけどね、もう食べられないって言ってるって言うけど食べるじゃん」

「ん？　食べる？」

「食べるよね、いつも」

「う、うん。あったら食べるよね？」

「じゃあいったい何を怒ってるんです？」

「さあ？　なんだっけ？」

「だし巻き玉子がどうとか言ってましたけど」

「ああ、それよ。なんでわたしが悪者みたいになってんの？」

「なってないよ？　おいしいだし巻き玉子は独り占めしたくなりますね、そうですね、よ？」

「そうかなあ？」

「そうだよ、でもさ、ちゃんと半分こしたじゃん」

「まあそうだけどさ、なんか納得がいかない。なんかやっぱりわたしは我慢するタイプで負けず嫌いなんだと思う」

「またそんなギンギラギンにさりげなくみたいなこと言って」

「え？　言ってないよ？」

「我慢するタイプとか負けず嫌いとか、全然具体的じゃないよ、何と比較してるのかもわかんない。それ、わたしはギンギラギンでさりげないって言ってるのと同じじゃん」

「うん、わかんない」

　いつものように変なこと言ってる。

　いつものように笑いあう。

　いつものように

　わたしはあなたのことが好き。