第12話 猫っぽい?

 あなたはとても猫っぽい。

 あなたはいつも気まぐれで、気に入らない時はそっぽを向くくせに、いつも変なことを言ってわたしを笑わせる。


「あっぶなっ! 予約しないといけないの忘れてて予約が通り過ぎちゃうところだったよ」


「が? 通り過ぎる?」


「うん。あれ? お昼とか忘れてると通り過ぎちゃうでしょう?」


「えーっと? お昼が?」


「そうだよお! 危なかったね、予約が通り過ぎちゃうところだった」


「まあ良くないけどいいですけども。本当にあなたは猫っぽいよね。あなたはトラ猫っぽい。わたしは何っぽい?」


「わかりません。トラ猫っぽいもわかりません」


「猫っぽいか犬っぽいかだよ?」


「それがわかりません。『ぽい』がなんなのかがわからないよね」


「『ぽさ』の事ではないですかね?」


「金魚すくいのポイはほんとは金魚ポイって言うんだって! 金魚っぽさはないのにね!」


「ああ、はい。わかんなくなってきましたね。金魚っぽいかどうかはね聞いてないの、わかる? まああなたは両方あるもんな」


「『ぽさ』はないと思うんだけどなあ。『ぽい』かなあ?」


「一般的にはね、人懐っこくて誠実で裏切らない印象があるのが犬系、気まぐれで自由に行動する、どこかに行ってしまったりふいに甘えて戻ってくる印象の猫系」


「うーん、『ぽい』が『系』になってるけど、まあ、そんなもんみんなどっちもあるんじゃない?」


「わたしは気まぐれではないな」


「自己申告でいいのならわたしも気まぐれではないな」


「なんと!? あのね、わたし気まぐれじゃないでしょう? 地に足がついている。ずっとルーティンで生きてる退屈な人生よ、アメリカ行きたい」


「わたしと一緒だね」


「アメリカに行きたいの?」


「クイズに勝ち抜いたわけでもないのにアメリカには行けない」


「なに言ってんの?」


「こないだの拙者とかドロンとかには負けたくないのでね! 昭和を出してみました」


「昭和ですな」


「どっさり勝たないとアメリカには行けないよ。『問題 あ……』くらいの所で答えられないとね!」


 いつものように変なこと言ってる。


 いつものように笑いあう。


 いつものように


 わたしはあなたのことが好き。

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