第4話 誉め言葉
誉め言葉は難しい。
わたしは腹立たしい人に対して「頭おかしい」を使う、誉め言葉じゃない。
あなたはこの人はすごい人だと思った時に「頭おかしい」を使う、誉め言葉。
「でね、ずっとこれをやり続けてるんだって! すごいよね、頭おかしいね!」
まただ。あなたからのメッセージに違和感を覚える。
わたしはニュース記事を張り付けて送る。
「これを読んで本当に腹立たしさしかなかったよ。吐き気がして狂ってんなと思った。私はこういう時に使うのよ、頭おかしい」
「ええええええ?」
「全然褒めてないよね? わかる?」
「使い方間違ってんね」
「いやいやほんとに。あなたが誉め言葉にしているのにまだ慣れないわ」
「どちらかというと
狂ってる
も誉め言葉だけどなあ」
「ほてめない
あ、褒めてない」
「腹立たしくて吐き気がする、は褒めてないね。
ほてめない、がどうやったら出てくるの?? 笑っちゃったじゃないか」
「狂ってんな
頭おかしい
も褒めてないのよ私たちは。
褒めてるのはあなたくらいなの」
「ほてめない
は褒めてないな」
「んもう。なんで予測変換が出ないのかなあ、と思いながら送りました。違う! ってなったね」
「こないだのもだよ。気をつけないと」
「ん? ああ。歌を歌うアプリで個性的に歌ってる人に微笑ましいという意味でね喜ぶと思って笑っちゃうと言ったら…… てやつね」
「うん」
「個性的にわざと歌ってるんじゃなくて下手なだけだった模様……」
「いや、だからね、そういうとこだよ……」
「絶対わざとだと思ったんだよ。笑わせにかかってる人だって……」
「そんなわけないでしょう」
「まさか傷つけるとは思わなかった」
「人に聞かせたいアプリなんでしょう?」
「面白い感じで歌う人も結構いるのよ」
「それと同列に取り扱ったって、めちゃくちゃ傷つくねえ」
「最後の最後にポソッと言ったのよ。最後まで聞くんだって思ったね」
「いや、まあ…… そうねえ」
「ま、これを糧に練習しろ
としか思わないね。
お前はクズだ
とか
下手くそ! 俺のとこに来るんじゃねえ
とか負け犬の遠吠え的なやつとかで
わたしも傷ついたわ」
「あれ? 投げたナイフが返ってきた話かと思ってた。傷つけて申し訳ないって話じゃなかった……」
「ん? 投げてないよ。
オリジナリティに溢れてるね。うふふ
ってつもりよ、こっちは」
「いや、まって傷つけてるよ、きっと、それ」
「勝手にディスられた! くそが!! ってなってんのよ、キモイ」
「ええ? そうなの? そうだったのこの話??」
「今までオリジナリティに溢れてるね。ウフフ
って意味だったらたいていの人はその意図を汲んで「笑ってくれてありがとう」って言われてきたもの。まさか傷つけるとは思いもしなかったし悪態つかれるなんてさらにへこむ」
「うん? うん」
「うぅ…… 何にも言えない…… これは私が傷ついた話だよ。 ほんとあいつ頭おかしい」
「相手がどんな風に捉えるかなんてわかんないんだから、言葉には気をつけないとね。
ああ、なるほど。そういう時に使うのか。頭おかしい」
いつもの中の少し変わった日
いつものように
わたしはあなたのことが好き。
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