第3話 いちご2粒

 いつもの帰り道。


 いつものように歩いていたら道端にいちごが2粒落ちている。


 あなたに伝えたくなるわたし。



「あのね、道を歩いてたらね、いちごが2粒落ちてたの」


「なんだって!? 大丈夫?」


「え? なにが?」


「それはいちご王国への扉を開く鍵。拾っちゃうと扉が現れるやつ!!」


「何を言ってるの?」


「だから!! いちご王国だよ!! わたしはキムチが落ちてて危うくキムチ王国に連れていかれるところだったんだよ!!」


「待って、落ち着いて。キムチ王国??」


「そうだよお! 気をつけないと…… あれ? もしかするとそれ…… 二つっていうことはあれじゃない? 動いてない時計に羊の図柄がある大時計のやつじゃない? 目の所にいちごを差し込んで……」


「それ私動き出した時計に挟まれて死ぬやつじゃん!!」


「おお! そこは気が付いたか!! すごいね!」


「で、なに? いちご2粒がなんで道に転がってんのか話そうと思ったら時計に挟まれて死ぬ話になってんの?? 悪役じゃん! それ!」


「いや、まあそれは流れ的に…… それより、わたしの趣味は知ってるよね?」


「え、なに? どれ?」


「落とし物を拾ったらガードレールとかに見えるように置いておくやつ」


「ああ、うん。そうね、やさしさのやつね」


「うん。そう考えるといちごも落とした人が困ってたらいけないからガードレールかどっかに置いておいてあげるといいね」


「う…… うん? そうなの?」


「落とした人に気づきやすくしてあげるといいよ、落とした人もきっと困ってるよ」




 いつものように変なこと言ってる。


 いつものように笑いあう。


 いつものように


 わたしはあなたのことが好き。

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