第15話 特別試験


朝目覚めたシグは真っ先にギルドへと向かった。

昨日メイザーが言っていた特別試験を受ける為に向かったのだが


「特別試験は受ける階級の1つ上のクラスの方3名の承諾と階級事にお金が掛かるのですがどのクラスを希望されますか?」

「えと、緑クラスを受けようと思ったんですが」

「ではこちらの紙に銀クラス以上の方の署名を貰って金貨20枚をお持ち下さい。その後にギルドからのクエストを達成しましたら晴れて昇格です」

「そんなにお金が無いので緑クラスのモンスターを数体討伐するだけじゃ駄目ですか?」

「緑クラスになると国からお金が支給されるようになるのでお金を払って頂か無いと行けません。実力があるからと特別試験を皆に受けさせてたら国が赤字ですので、すいませんが、、、」

「いえ、大丈夫ですよ。ありがとうございました。」


前もってメイザーに話を聞けば良かったと思い仕方なくギルドに戻って紙に署名を貰おうとリンやメイザー達を探した。そういえばジルはどこにいるのだろうか?


ギルド内を探し回ったが見当たらない。前にレオスのいた所に行けばレオスからは貰えると考え、執務室と書かれた部屋を訪れる。扉を開けて中を確認するとリンやメイザーもいて最初からここに来れば良かったと思いながら


「特別試験の署名をしてください!それから半月程出掛けてきます!」

「扉ぐらいノックして入れ、それから署名は良いが半月もどこに行くんだ?」

「おはようシグ君。朝から元気だね」

「…どこ行くの?」

「特別試験を受けるお金が無いので強そうなモンスターを狩ってお金稼いできます!」


署名すればすぐにでもすっ飛んで行きそうなシグを見て頭を抱えるレオス。


「あのな、団に入って間も無いのに勝手な行動を許すと思うか?入団したらまず他の奴らとパーティーを組めるように訓練をしてーーー」

「署名終わりました。それからお金なら出世払いで返してくれるなら出してあげますよ?」

「…私も出してあげる」

「良いんですか!?」

「まてお前ら人の話を」

「良いではありませんか団長、白から緑に昇格した天才剣士って名前で売ればまたうちの知名度も上がりますよ。これ以上あげても意味あるか分かりませんがね」

「実力があるなら早く適正のクラスになった方が良い」

「…お前らシグを甘やかし過ぎだろ。まぁいいや、そんなことより今は奴隷商の件だが…」


リンとメイザーにお金を借りてギルドへ向かう。その際にメイザーが手首に呪文をかけてきたのでなんなのか聞くと、裏切り者の手が吹っ飛ぶおまじないらしい…緑クラスになったらモンスターで大金集めなきゃなぁ〜。


ギルドで手続きを終わらせてまた屋敷へと戻る。

どうやら特別試験にはサンドアイスという芋虫型のモンスターを3体討伐(目玉の納品)でクエストクリアらしいが、街から馬で3日程掛かるらしいのでサーシャを連れて行くことにした。

馬小屋に着くとサーシャとエリナが戯れていたので声をかけた


「エリナさん、出かけるのでサーシャを連れていきます。」

「あんたまた1人で出かけるの?」

「特別試験ですので」

「場所どうせ知らないんでしょ?案内してあげる」

「緑クラスの魔物なので…」

「案内するだけで戦わないわよ、早く行こう」


そう言ってサーシャに跨るエリナ。旅の準備が何故か終わっているらしく荷物を藁の山の上から取り上げる。昨日特別試験の話を聞いてたから一人で行くと予想していたのだろうか…


シグは流石に準備してなかったので1度街で買い物をしてから東の門を抜ける。道中街の人の視線が凄かったが、こんなにでかい狼が歩いてたら無理もないか。


門を出てサーシャに走るように言うと、先日程ではないがやはり馬よりも早く、風が心地よい。

何度か休憩を挟みながら、日が沈む前に近くのモンスターを狩ってサーシャに与え、干し肉を食べる。それだけじゃ栄養が偏る!なんていいながら木の枝を集めて魔法で火を付けて鞄から取り出した野菜やフルーツを焼いてシグに渡すエリナ。

エリナに小言や説教を受けると昔村で共に育った姉弟子を思い出して逆らえ事もできず、貰ったものを口にする。

食事が終わった後他愛もない会話で時間を潰してから、夜はまだ肌寒いので2人でサーシャに寄り添って横になる。するとエリナが


「あのさシグ。今回も一人で行くつもりだったようだけど、私やレイってそんなに邪魔かな?」

「急にどうしたんですか?」

「シグは強いじゃない?それに比べて私やレイもおまけであの【赤の翼】に入れて貰えただけだし、もしかしたらシグは私達の事邪魔なのかなって」

「邪魔だと思ってたら2人の加入を条件で入団なんかしてませんし、なんなら僕にとってはこの街でずっと一緒にいてくれる2人を家族みたいに思ってますよ」

「か、家族ってそんな……まだそんなに日も経って無いし気が早いって言うかその……」


少し顔を赤く染めて慌て始めるエリナ。何を慌てているかは分からないがとりあえず明日も朝早くから動きたい事を伝えて寝る事にした…のだが、エリナがシグの胸に顔を埋めて、こちらを見上げる。


「えっと、どうしたんですか?流石に近すぎですよ、もうちょっと離れてください」

「…○き…」


何か小さな声で呟いたが聞き取れず、聞き返すと「もういい!バカ!」と言って反対を向いてしまう。そんな光景を見ていたサーシャは呆れたように主人を見ながら眠りについた。当の本人はわけもわからないままモヤモヤとした気持ちで寝るのであった。

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