第13話 謁見・交渉


「よく来たなシグ、それで?入団するって事でいいのか」


豪華な部屋に通され、中に入ると椅子に座って背を向けたままのレオスは聞いてきた。それはそうなのだがこちらも頼みがあるので伝えねばと口を開こうとしたら、シグの後ろの扉が開いたのでそちらを見ると、リンが中に入ってきてシグの首根っこを掴みながら


「入団おめでとう、早速試合しよ?」

「ちょ、ちょっと待ってください、まだ話し合いの最中で」

「すぐ終わる?」

「あ、頼みを受けて貰えるかで入団するかしないか変わりますので何とも…」

「レオス、良いよね?」

「人がいる前では団長って呼べって、、、それで?頼みってのはなんだ?」


リンに離してもらい(ちょっと不機嫌)、レオスの方を見るとレオスがゆっくりと椅子をこちらに向けて目を合わせる。


「今日中に王様に会いに行ってペットを飼いたいです!ついでに僕の仲間を2名入団させてください」

「待て、仲間2名の入団は良いとして王への謁見とペットに何の関係があるんだ?王への謁見なら出来ん事は無いが、派閥は遊びじゃないからペットは許可出来んな…」

「すいません。入団はまた別の機会に」

「…待って」


入団を諦めて帰ろうとしたシグ首根っこを再びリンが引っ張り首が絞まって咽るシグにリンは謝りながら質問をした


「昨日モンスターか狼かわかんないものをペットしたがる冒険者がいるってギルドで聞いたんだけど」

「あ、多分それ僕の事です。サーシャは結局神獣?って珍しい生き物だったみたいなので王に許可取らないと行けないって研究者に言われて」

「それは本当ですか?」


メイザーに質問されてはいと答えると


「神獣に懐かれる人間…君は本当に面白いねシグ君、団長、私からも彼の入団とペットの許可を許してあげてください。」

「神獣なんて珍しいもんどうやって見つけて来たんだよお前、、、まぁ、そんな貴重なもん飼い慣らしいてるって知ったら周りの国々から観光客が来て街の繁栄に繋がるな。うちの知名度もさらに上がるし、良いかもしれんな」

「え?それじゃあ!!」

「あぁ、今から王に会いに行くとするか。」


メイザーとリンのおかげで王への謁見の機会を手にしたシグは、レオスに門で待っている様に言われて外へと向かう。

すると後ろをさも当然のようについてくるメイザーとリン。2人はこっちに用事でもあるのかと思ったが


「神獣とは何度か戦闘しましたがまさか飼うことになるとは…これからまた賑やかになりますね」

「…楽しみ」


どうやら2人もついて来るようだ。まぁ、別に構わないんだが。


暫く門の前で2人とお喋りしながら待っていると、レオスはフルプレート装備で全身を固めて出てきた。

戦争でもするつもりなのかと思ったが、どうやらそれが正装であるらしい。


王城の門について審査などがあると思ったが、レオスの顔を見た門兵はすんなりと通してくれ、城の中へと入ることが出来た。金クラスはお城に顔パスで入れるのかと、少し憧れた。


天井が高く広々とした内装に辺りをジロジロ見ていたらクスッとメイザーに笑われてリンには可愛いと言われて頬を膨らませて怒ったら頬をつつきながらまた可愛いとリンに言われてしまった。男なので可愛いはやめて欲しい、、、


「王は今公爵様方との対談中ですので、暫くの間あちらの部屋で待って貰えますか?」

「構わんよ、急に来たのは我々の方だからな」


王のいる部屋に立っていた見張りに言われて指をさされた部屋で待つことになった。宿の部屋の倍以上広い空間に落ち着けずソワソワしていると


「なんだかリンの言うことを理解できる気がしますね。」

「でしょ?」

「あんなにも威勢の良かった男が今は馴れない環境でこうも落ち着きがないのは、見ていて面白いな」

「僕はどうせ田舎者ですよ〜」


拗ねたシグを3人がながら待っていると、扉がノックされて王の間へと案内された


王の間に入るとまず最初にシグは警戒態勢をとった。奥の方から発せられるあまりにも異様な威圧感と殺気に対し自然と身体が反応したのだ。


「王よ、相変わらず他者を試すのに殺気を飛ばさないでください、彼が驚いています」

「驚くというよりも好戦的な顔をしているがの?」

「シグ君、王はああやって相手を試す悪い癖があるんだ、だから構えなくて大丈夫だよ」


それにしても師匠を思い出す程の殺気にびっくりして冷や汗をかいてしまった。よく見るとメイザーやリンもほんのりと汗を出している。


「さて、急に来たのは良いがひとつ質問をさせてくれるかの?」

「王様、僕からひとつ、言伝を預かっておりますのでどうか聞いて頂けないでしょうか?」


シグの発言にレオス達は驚きシグの方を向く。何を話す気なのかと思ったが


「§◆*≫ㅌ∀◆✕」


全く何を言ってるから分からない未知の言語で話し始めた。悪ふざけを止めようとレオス達はシグを取り抑えようとするが


「まて、レオス、リン、メイザーよ。少し主らは席を外してはくれまいか?お前達も席を外せ」


側近までもを退出させようとする王に驚いたが機嫌を損ねると暴れ出すので、渋々皆が部屋を出て行き、王とシグの2人になる。


「シグとやら、どこでその言葉を覚えたのだ?」

「師匠にアインにあったらまずはそれを伝えろと」

「だいたい絞れてはおるが師の名は?」

「すいません、師匠は師匠としか教えてくれませんでした。なんでも名前が嫌いらしくて」

「くくく、それだけで誰かわかったので良いぞ、全くあのババァめ、生きていたうえに弟子まで取っていたとは驚いたぞ」

「それと僕の事は…」

「あぁ、大丈夫だ。わしも半分獣人の血が流れておるからな、お主は気付いたかもしれんがあまり人に知られておらんので口外しないようにな」

「分かりました!所で今日はお願いがあって来たんですけど」

「申してみよ、無茶な話で無ければ大体のことは叶えてやる」

「でしたらーーー」


レオス達が追い出されて先程の部屋で待機していると、シグが入って来た。


「さっきの言語はなんだ?それから誰かに言伝を頼まれたなんて聞いて無かったぞ」

「王様に口止めされたので言えません!それよりサーシャをペットにする許可がおりたので早速連れてきて良いですか?」

「王と親密な知人が居るとはね…君は見ていて飽きないな」

「…可愛い」


呆れ顔のレオスに宝石を詰め込んだようにキラキラと輝く瞳でシグは連れてくる許可を取っている、この辺は幼さを感じる。レオスが許可を出すとすぐにシグは駆け出して行き、神獣を見たがっていたメイザーとシグを気に入っているリンはシグの後を追った。

少し寛いで帰ろうとソファーに腰掛けていると部屋に王が入って来て慌てて立ち上がる


「よい、今は人がおらぬのでな」

「はい、ですが王よ、彼は何者ですか?あんな言語聞いたこともありませんし、何よりシグとは何を話ていたのですか?うちの派閥に入る以上事情を把握しておきたいのですが」

「詮索するな、と言いたいが口の硬いお主には話ておこう。奴はーーー」


王の話を聞いていたレオスは顔が険しくなっていき、一人で考える時間が欲しくて王城を出るのであった……

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