第12話 銀狼

太陽の暖かい光を浴びてシグが目を覚ますと、サーシャがこちらを見ていた。腹が減ったのかな?と思い起き上がると、顔をぺろぺろ舐められる。甘えたかったのかな?可愛い奴め!なんて考えてたらサーシャはピクリと耳を立てると茂みの方へ走り出した。急にどうしたんだ?と思いサーシャが走った方に向かうと、サーシャがグルルを咥えて戻ってきた。

サーシャが咥えて来た肉を切り分けて半分は焼いてもう半分はサーシャに与える。この暮らしなら野宿でも問題無いなぁなんて思うがクエストを受けなければならないので早く申請が通って欲しい所である。


エリナとレイが来たのは日が真上に登った頃で、何やら知らない人間が数名後ろからついて来ている。


「そちらの方たちは?」

「そのでかい狼を見て安全か確認しに来たのよ。流石にその大きさのモンスターを街に入れて良いかどうか実際に見てみないと判断出来ないらしくてね。」

「こんにちは、シグ・マグナ君だね?私はモンスター研究科のツツイと申します。珍しい狼だかモンスターだか分からん生き物を飼いたいと言う冒険者がいるから調査して欲しいと頼まれてね。」


モンスターと狼に違いはあるのか?とか考えていたが考えるのは面倒なので早速調べて貰う事に、するとサーシャが唸りながら警戒するので頭を撫でて落ち着かせる。シグが傍にいる間は安全だと分かると研究者達が何やらよく分からない機械を取り出してサーシャの体にぺたぺたと貼り付けて機械本体を見ている


「驚いた、魔力はあるが魔力核が無い。神獣が生きているのを見るのは初めてだ。研究させて欲しいね」

「神獣?ってなんですか?あと、モンスターと動物の違いってなんなんですか?」

「君、神獣はともかく動物とモンスターの違いが分からないと本当に言ってるのかね?子供でも知っている事なんだが…まぁいいだろ、1から説明しよう」


そう言ってツツイは(研究者的に)簡単に説明してくれた内容は


・モンスターはその身に魔力核という魔力の源を結晶化したものを体内に宿し、魔力を食らって強くなる。但し魔力は魔力核に魔力を貯めるのに食らうのであって餌は主に肉を食べる。(草食や雑食の種もいる)

・同じ種のモンスター同士は共食いなどをする事は無いが別種のモンスター同士では争いあうことが稀にある。

・人間以外の動物は体に魔力を宿していない。

・例外も存在していて、体に魔力を宿す動物を神獣と呼び、人や動物、モンスターにも分け隔てなく接しているなんて記録も残っている


説明を受けて何となく理解はしたが難しい事は聞き流して飼えるのかどうかを聞く。


「飼うことは…どうだろうか。流石に神獣を手懐けて街に連れて来るなんて例は聞いたことが無いので何とも言えんが…」

「噛まない様にちゃんと躾します!」

「躾の話じゃなくて国が許してくれるかどうかの話なんだよね、大きなコネがあって直接アインスベル王に許可を貰ったらすぐなんだろうけど、普通に申請したら何週間掛かるか、、」


その話を聞いてシグはひとつ心辺りがあるにはあるのだが…ん〜どうしようかなぁ〜

悩んだ末に決心したシグは


「レイさん、エリナ、今日1日サーシャを預かってくれないかな?ちょっと街に行って王様に頼んでくる」

「は?すぐに会えるワケないでしょ!どうやってーー」

「大丈夫です、多分会えると思うので待っていて欲しいんですが。」

「分かりました。急に矢を撃ってしまったお詫びに預かっておきますね。でもシグさんが居なくて大丈夫でしょうか?」

「大丈夫ですよ、昨日寝る前に2人の話しながら大切な人達だって教えましたから」

「狼に伝わるワケ無いじゃない!」

「た、たたた、大切な人なんて!シグさんもそんな風に思って…///」


何をレイが慌てているのかは分からないがサーシャの頭を撫でて出掛けてくる事を伝えるとその場に座りリラックスし始めた


「…人の言葉が分かるのか?神獣は賢い動物だと言う記録は見たのだが、実際にその賢さを見せられると驚かされる。」


ツツイが何かブツブツ言っていたが、サーシャに余計なちょっかい出して噛まれないように注意してシグは街へと走り出した。


北の門を抜けて北西にあるというその場所へ向かった。目的の場所は何やら物凄くでかい屋敷で、赤く塗られた翼の模様がが屋敷の塀に描かれてあったのですぐにわかった。


「止まれ、ここが【赤の翼】の本拠地であると分からぬワケではあるまいな?」

「あ、はい知ってます。僕の名前はシグ・マグナって言うんですけど、ここに来たらすぐ入団させてくれるって言われて来ました。レオスさんに取り合って貰えますか?」

「そんなわけ無いだろう!」

「いえ、本当なんですけど…」


と、説明しても中に話にも行ってくれないので何度も説得していると


「ん?シグ君じゃないか、どうしたいんだい」

「あ、どうもこんにちは!えっと、、」

「あぁ、あの時名前を言ってなかったね、改めまして私はメイザー、見ての通り魔法使いだ」


あの時談話室にいたフードを被った男性が挨拶をしてくれた。金髪で瞳の色は紅茶のような色をしたイケメンで、挨拶をしてくれた。


「メイザー様、お知り合いですか?」

「この間団長に喧嘩を売った男の話をジルがしただろう?まさにその彼だよ」

「こいつ男なんですか!いや、でも、、、」

「大丈夫だ、何かあっても責任は私が取るので通してあげなさい」


メイザーに言われて門兵が門を開いてくれる。やっと交渉ができると安心して中に入ると、メイザーがレオスの所まで案内してくれる。


何とか交渉を成立させるため、気合いを入れてシグは屋敷の中へと入って行くのだった。

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