第11話 グルル狩り
どれ程時間が経っただろうか。昨日の嘘や勝手に朝出かけた事について怒るのに既に2時間程経過していた。リンは派閥の皆と合流すると言って説教が始まる前にはこの場から居なくなっており、道沿いに正座されているシグは早く終わって欲しいと願いながら黙って怒られていた。
「だいたい、なんでダンジョンに異変があったのに私達に教えてくれなかったのよ!ま、まぁ気づかなかった私達も悪いんだけどそれでも仲間に嘘や隠し事する必要はあったの?だいたいあの【赤の翼】に喧嘩売るとか馬鹿でしょ?世間のこと知らなすぎよあんたもうちょっとーーー」
「あの綺麗な女性と随分親しげでしたね?まさかお付き合いしているワケでは無いですよね?それと嘘ついた罰として明日は1日買い物に付き合って貰いますよ!2人で出かけるのでーーー」
2人が説教を終えたのはそれから30分程。計2時間半の説教から解放されてシグは安堵しながら立ち上がってグルル狩りに向かった。
「ここがバナナキ森林ですか。随分と甘い香りがしますね?何の匂いなんです?」
「ここにはバーナの果実が1年中実っていますからね。シグさんはバーナを食べたことは?」
「いえ、僕の村にはそのような果物は無かったですね」
「ほんとにあんたド田舎から来たのね。バーナって言うのは黄色くて長い実で、その身を食べにグルル達がこの辺には多く棲息しているのよ。ほらあれ」
エリナが指を向けた背の高い木の枝に確かに黄色い実がぶら下がっている。
だがしかし、
「良い?このバーナの実は簡単に取れる事で有名でね、こうやって蹴ると」
説明しながらエリナがバーナの木を蹴るとバーナは簡単に落ちて来た。それをキャッチして皮を剥き、シグに渡してきたので、シグは1口食べてみる
「凄い甘くて美味しいですね。これはグルルが棲み付いているのも分かります」
「まぁ、この辺はあまり実がなってないからもう少し奥に行きましょう?」
少し奥まで行くとすぐにシグ達は街にいる犬ぐらいの大きさのグルルの群れを見つけて、茂みにエリナとレイが隠れた為、それに習ってシグも隠れた。数は5匹とクエストのノルマ分いるが、しかしシグだけ首を傾げながらどこか納得してない顔をしている。そんなシグの様子に気付いた2人は
「なにかおかしいところでもあるの?」
「シグさんはグルルを見るのは初めてですか?」
と質問すると
「アインスベルでは幼体のうちに連れ帰って家畜にでもするんですか?」
「え?何言ってんのよ、モンスターを家畜に出来るわけ無いじゃない」
「えっと、どう見ても成体に見えますけど…」
「ん?僕の村の近辺にいたグルルはもっと大きかったんですが…」
「そんなのいるわけ無いじゃない。あれより大きい個体がいたらギルドで緊急クエスト扱いよ」
どうやらシグが見ていたのはグルルではないらしい。師匠がグルルだと言っていたあれはなんだったのか?住む環境によって個体差があるのか?なんて考えていると群れの一匹がこちらに気づいたのかグァグァと鳴きだした。
鳴き声がグルルゥだと思っていたのにこれまた驚かされたシグはどれぐらいの強さなのか確かめたくて一気に襲いかかって一太刀を1番手前にいた2匹に放った。
避ける素振りも見せずに2匹は呆気なく地面に倒れた。他の3匹はその様子を見てすぐに背を見せて逃げ出す。1匹が後ろから飛んできた矢転ぶのを見てから残り2匹もシグが仕留める。その後茂みから2人が出てきて
「あんた本当にすばしっこいのね、罠も仕掛けずグルルに足で追いつけるなんて驚いたわ」
「剣の速さもお見事でした」
2人に褒められて悪い気はしないのだが…あまりにも簡単に終わってしまったためにシグは物足りなさを感じる。
その後追加で十数匹程狩って一箇所に集めると、ギルドの職員に回収依頼をしてくると言いエリナとレイが1度ギルドに戻ってる間、シグは1人残って見張りをしていた。
すると、茂みの方からガサガサと音がして振り向くと、1匹の狼がこちらを見ている事に気が付いた。体格はグルルよりも一回り程大きく、銀色の体毛が輝く2尾の狼はとても綺麗でシグと同じ青い瞳をしていた。よく見ると足に怪我をしているようで、フラフラしている。
「…食べるかい?」
言葉が伝わるとは思わなかったが、村にいた犬を思い出してついグルルの脚を切って放り投げる。
臭いを嗅いで安全か確かめた後に狼は食べ始めた。
食べ終わると狼が近付いてきてシグの周りを鼻を鳴らしながらグルグル周り始める。懐かれたのか顔に頬ずりしてくるので頭を撫で、それから簡単な治癒魔法で足の怪我を癒した。
暫く狼と遊んでいると2人とギルド職員が来て何を思ったのかレイが弓を放って来たので素で掴んで止める。
「レイさん、急に弓を撃つなんて危ないじゃないですか。ほら、サーシャが警戒して怯えてるじゃなですか。よしよし」
「どう見てもモンスターに喰われそうに見えたんだけど、てか名前まで付けて、あんたそれ飼う気?」
「すいません。てっきり襲われてるのかと思って…シグさんにはモンスターテイマーの才能があったんですね。」
「そのモンスターはペットなんですか?街の役場で登録して無いと街に入れることはできませんよ?」
ギルド職員が衝撃的な事(当たり前)を言い始めたのでシグは何とかならないか
それから夜ご飯の為にグルルを狩って食事をとり、サーシャに寄り添って眠るのであった。
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