第10話 いざ初クエストへ

レオスとの試合が終わったあと、特に寄り道もせず宿屋に戻りおかみさんにレイとエリナは起きているか確認を取ると、2人はまだ降りてきてないとのことだったので、1時間ほど散歩してくると伝えた。


散歩と言っても3人分の宿代を払った後なので1度ギルドに行きまたお金を降ろして貰う。ギルドとは朝からこんなにも賑わっているんだなぁと横目で見ながらギルドを出る。

それから南通りで朝早くからやってる串肉屋や饅頭屋なんかで食べ歩きしながら時間を潰して宿に戻ると、朝食を食べている2人に声をかける。


「おはようございます、早速ご飯を食べたらクエストを見に行きませんか?」

「おかえりなさいシグさん。それとおはようございます、駆け出しですから日々の労働で資金を集めなきゃいけませんもんね。行きましょう!」

「今日はどんなクエスト受けるの?やっぱりモンスター狩り?」

「まだ僕たちの受けられるクエストを見てないのでなんとも言えませんね」


今日の予定を話しながら2人の食事が終わるのを待ち、シグ達はギルドに向かった。

ギルドの受付に話を聞くと、どうやら左の掲示板に貼ってある中からクエストを選んで(受けられるクラスの色で○がしてある)受付で受注するらしい。なのでシグ達はクエストを見に行く


「みて、連合国と帝国の国境付近にハードウルフの群れが居たらしいわよ!これにしない?」

「よく見てください、クエストの横に赤い○がしてあるのでランクが青以下の僕達では受けることができませんよ」

「私たちが受けられるのは最高でも黒でしたよね?黒クラスのクエストが随分少ないので今日は薬草採取にしますか?」


見てみると黒クラスの貼ってある筈の掲示板だけやたらと少ない。

朝ギルドが賑わっていたのは同じ白クラスの人達が黒クラスのクエストをライバル達に取られないように朝早くから居んだな、納得した。

だが納得している場合じゃない。黒クラスに残ってあるのは僅か2枚で、片方は北の門付近に最近現れるゴブリンの偵察兵の尾行及び巣の特定(殲滅した場合追加報酬)。もう片方はバナナキ森林でのグルル狩りノルマ5匹(狩った数にて追加報酬)と書かれていた。


「バナナキ森林とはどこに有るんでしょうか?」

「この前近くまで行ったでしょ?試験で私たちが入ったダンジョンへ行く林道の先にあるわよ、あんた1度西の方にある図書館でこの街の事調べた方が良いんじゃない?」

「確かに、何も知らないとクエストを受ける時にどこに迎えばいいか分からないと不便ですね」

「ならこっちのゴブリンの巣を見つけて潰しに行きませんか?」


シグが提案すると、2人はなんだか嫌そうな顔をしている。


「女性がいるのに何でそっちなのよ!それに巣穴見つけるだけでいいのによりにもよって潰しに行く?失敗した時のこと考えてよ!馬鹿!!」

「あのシグさん、出来れば私も森に慣れてるのでグルル狩りの方が…」


2人はゴブリンに負けた後の事を考えて怯えているらしい。あぁ、そう言えばゴブリンって雄しか居ないから別種族の雌を捕まえて子供を…この前人間に同じようなことをされていた(未遂)2人に対して配慮が足りなかったかもしれない。


「あぁ、すいません配慮が足りませんでしたね。では僕がゴブリンを潰してくるので2人はグルルの方をーーー」

「「パーティーの意味ないです!!」」


と2人が抗議してくるが、今向こうの道を通ると【赤の翼】に見つかるかもしれない。そうしたら昨日の嘘や今朝1人で出かけた事がバレてしまう恐れがある。だが2人は絶対について行くがゴブリンは受け入れない。その強い意思に負けてグルル狩りに決まった。頼むから会わないでくれと願いながら。


クエストを受けて北の門に移動して門番にプレートのチェックをしてもらってから外に出る。

試験場だったダンジョンを横切り、その後ろに行こうとした時、ダンジョンの入口から気配がしてシグは駆け足でダンジョンの裏手へ回る。急にシグが走り出したもんだから2人も走り出してシグについて行く。するとシグが


「2人とも!早めに行って多めに数を狩りましょう!一体ぐらいならその場で捌いて焼けば節約にもなりますし!!」

「ちょ、ちょっといきなり走り出さないでよ!」

「少し待ってくださいシグさん〜」

と後ろを着いてきている少し振り返ると2人と少し距離があった。やってしまったと思い2人の方へ戻ろうとすると


「…入団する気になった?」


と声を掛けられ咄嗟に居合の構えを取りながら飛び退いた。

先程まで自分が立っていた後ろに緋色の瞳と緋色の長い髪が良く似合う女性、リンがそこに立っているのを確認して、シグの心臓が破れんばかりに鳴り始めた。


「リンさん、ちょ、調査はどうしたんですか?」

「終わった。出てきたらシグの声が聞こえたから追い掛けて来た」


追いかけるも何も追い越して背後まで取られたんですが?それも林道の一本道で。

リンと話している最中にまた後ろから2つの殺気がするのを感じ、振り返ると後ろにドラゴンでも従えてるかのような錯覚をさせるエリナとレイがゆっくり歩いてくる。


「あんた、道で女をナンパする趣味があったのね?私達を置いて駆け足で行くほどその女に夢中になっちゃったわけ?サイテー」

「女性2人もいるのにその2人を無視してナンパなんて、私達に魅力は全く無かったですか?別に私は怒ってませんけどねぇ〜」


顔が物凄く怖い。言い訳を考える事も出来ないぐらい萎縮してしまったシグを見て、リンがシグの頭を撫で始めたので、3人は驚いてリンの方を見る。


「何に怯えているのか分からないけどそんなに怖いならうちにおいで?」

「て、天使、、、様?」

「あんたがナンパなんかしてるからでしょうが!」

「狡…じゃなくてその人男性ですよ!そんなにベタベタとくっつかないでください!」


ナンパもしてなければ頭を撫でられてるだけなのでベタベタとくっついてるワケではない。これから2人に嘘ついた事とか朝黙って出掛けてた事を話さなければいけないこともそうだが、その後確実に怒られるだろうと思い、憂鬱になりながら話し始めた。

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