第2話 冒険者試験

試験開始時間が来ると北の門が開き意気揚々と皆が地図を広げてダンジョンへと向かう。その際に気付いたが皆同じ方角を目指すものだとばかり思っていたのだがそれぞれの道に別れて歩き始めている。

人によって試験を受けるダンジョンが違うのか?と横目で他人の地図を盗み見るとどうやらその様らしくシグの持っている地図とは別のマップを持っていた。

まぁ、だからといって自分はソロでクリアするつもりなのでひとつのダンジョンに大所帯で行くことが無いのは良いのだがここで今更ながら不安も出てくる。もしかしてパーティーではないと攻略が難しいのだろうか?近接戦闘と少しの魔法なら心得はあるがシーフのような罠の解除だったりは出来ない。

道すがら自分と同じダンジョンへ向かって居る者に声をかけてパーティーに入れてもらうか?とも思ったが一人で向かっているものも見受けられた為ソロで行こうと歩き初めた直後、聞き覚えのある声に呼びかけられる。


「あなた、もしかしてパーティーも組まずにソロで行こうと思っているの?呆れたものね。いくら街から近いダンジョンで雑魚モンスターばかりだからと油断していたら命は無いわよ?」


と、ルーなんたらの娘が話しかけてきた。正直苦手な人なのでそこまで絡んで欲しくは無いのだが一応心配?してくれて居るのだから返事しないわけにもいかない。


「ご忠告ありがとうございます。あなたはパーティーに参加出来たみたいですね。エルフの方と戦士と魔術師ですか、バランスの良いパーティーで羨ましい、良ければ入れて頂けますか?」


と、情報を引き出してソロでまた行動しようかななんてちょっとずるい考えで聞いてみると


「あなた、説明をちゃんと聞いていましたの?それぞれのダンジョンに置いてある冒険者プレートは4つだけなのに5人で行ったら誰がプレートを譲るの?それとも善意で手伝ってくれるのかしら?」


と、説明会に遅れてしまった為端折って受付嬢に聞いたのでその情報は初耳だった。ありがとうルーなんたらさん


「冗談ですよ、僕も冒険者になりたくて来ましたので、では先を越されぬように急ぎます!」


もっと話して情報を引き出しても良かったがこれ以上関わるのは面倒なので何か言ってた気がするが無視してダンジョンまで走って行くことにした。




ダンジョンの前に着くと入口は古びた遺跡のつくりになっており、苔やひびが目立つ。周りには小川が流れており少し落ち着く雰囲気が漂っている。


「これがダンジョンか、なんか昔近くに似たような遺跡があって探検してたのを思い出すなぁ」


などと考えながら入口から入ろうと前方を見ると既に先客が居るようで2人組が入って行くのが見えた。少し後をつけながらピンチの所を助ける!なんて妄想をしていた間に2人組みの姿が見えない。

後を追う為に追いかけようと思った矢先にうしろの方から声を掛けられる。振り返ると


「ハァハァ、ま、待ち、待ちなさいよ、、、あんた足早すぎ、、、ハァ」


と先程のルーなんたらさんのパーティーが走って追いかけて来たのだ、関わりたくないので放っておいて欲しいのだが、何故走って来たのだろうか?


「ぼ、冒険者になるのは私達なんだからあんたは引っ込んでなさい!」


といきなり怒られてしまった。別に悪い事は何もしてないのだが、歳が多分近い事もあり対抗心でも燃やされて居るのだろうか?そっちは4人でこっちはソロだと言うのに面倒だなぁ


「お嬢ちゃん、足に自信があるからって囲まれて戦闘になれば逃げれるとは限らねぇぜ、それに冒険者はそんな日々を過ごすことになるんだ、悪い事は言わねぇから帰んな」

「そうですよ、多少戦えたとしてもソロでは無理です。そこのおじさんが言うようにお家に帰りなさい」


ルーなんたらさんのパーティーの戦士の人とエルフの方に帰るように言われてしまった。帰るつもりなんか全く無いけど心配してくれてるのは分かるのでどうしたものか…


「では、あなた達が入った後僕も入りますよ。4人パーティーがクリアできなきゃ1人は辛いと僕も分かりますのでその時は諦めて帰りますそれと僕はこう見えてもーーー」

「あんたどうせ私たちが入った後戦闘で疲れた所を横から盗み取るんでしょ!」


と、ルーなんたらさんに言われてしまった。このお嬢様本当に面倒だなぁ…


「でもさっき2人組が先に入っていくのを見ましたよ?急がないとあの人達に取られて残り2つを高額な値段で売りつけられるなんて事も…」


と話している最中にルーなんたらパーティーは顔を驚かせ慌ててダンジョンに入って行った。


シグも早く入りたい気持ちはあるが鉢合わせるのは面倒なので少し時間をあけて入ることにしたのだった。

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