第15.5話 蛇足ですけれど背景その他説明回
温かい。
暖房というのとは違うし、ベッドに寝ているとしても布団の感触が無い。
何だろう、そう思って目を開けようとした時。
『まだ目を開けないで下さい。ここは治療槽の中です。現在、臓器の不良部分を排除し再生しています。この治療行程はあと20時間続行予定です』
どうやらとんでもない高度治療をしているようだ。
そしてこの声というかメッセージが聞こえているという事は。
『アイリス、この状態で指示・連絡・命令は可能か?』
『可能です。必要なら映像イメージも転送出来ます』
何というか、とんでもない科学技術だ。
でもまあ、これである程度懸案事項を解決出来る。
本当は何故英語や日本語が使えるのか、ここは日本があった世界の未来なのか、確認をしたいところだ。
しかしその前に片付けなければならない事がある。
『アイリス、監禁した連中が乗り込んだ経緯を教えてくれ』
『了解。記録データを転送します』
情報は言葉ではなく出来事一切を含む記憶、という形でやってきた。
だから瞬時に俺は状況を理解する。
およそ3年前、地震で境界山脈の一部が崩壊。
境界山脈の地中に埋もれていた第3次星系移住船団所属の揚陸艦『デュカリオン』の一部が地上に出現。
付近の洞窟を根城にしていた盗賊団が発見し乗り込んだ。
『デュカリオン』は移住者の惑星上陸用で、上陸後、何らかの故障(俺には理解不能)で放棄された状態。
また移住者が出入りしていた事から、乗降口にロックはかかっていない状態だったらしい。
だから盗賊団はあっさり中へ侵入し、それまで拠点としていた洞窟より遙かに快適な『デュカリオン』を根城に決定。
そして試行錯誤した結果、搭載された連絡艇の『アイリス』を動かす事に成功した。
以降盗賊団は『アイリス』を使い、境界山脈に近い集落や街、都市国家等を襲撃。
レーザー攻撃で防衛隊や軍、住民をほぼ全滅させ、財産や食料等を奪うなんて事を繰り返した。
結果、近隣の集落や街、小国家はほぼ壊滅。
襲う場所が無くなったので、境界山脈を越えてフェリーデへ攻めてきた、というのが今回の侵攻のようだ。
そして盗賊団の残りがまだ『デュカリオン』にいるようだ。
さらって奴隷として使っている女子供達とともに。
ならその連中を捕縛し、捕まっている人々を助けなければならない。
盗賊団の連中は捕縛というか、始末するというのが正しいか。
フェリーデの国法では殺人・強盗を行った盗賊団は死罪だ。
僕が直接手を下す必要は無い。
この
二度と人里に出て来る事が出来ないような、そんな奥地に。
捕まっている人の救助は、少し面倒な事になるかもしれない。
何せもといた街や集落は軒並み焼き払われている。
女子供だけで放り出す訳にもいかないだろう。
ただ『デュカリオン』はそれなりの食料生産能力が残っているようだ。
なら上手く使えば自活出来るようになるかもしれない。
それには『デュカリオン』の機能を操作可能な人間が必要だけれども。
つまり俺が行ってあれこれしないと駄目な訳だ。
これは当分、シックルードに帰るのは無理だな。
さて、それでは確認だ。
『アイリス、デュカリオンにいる人間を、個別に確認した上で、ここにいた連中と同様、監禁する事は可能か?』
『デュカリオンに帰投し、デュカリオンに回線を繋げた上で、デュカリオンに直接、命令する必要があります』
『俺の権限でそれは可能か?』
『可能です。
つまり俺は『デュカリオン』に対しても、この『アイリス』に対してと同じ事が出来る訳だ。
そしてそれを阻める権限を持つ人間はいないと。
『わかった。それではアイリス、デュカリオンに帰投してくれ。なお帰投後、外部からアイリスに侵入されないよう、非常用を含む全ての出入口はロックしたままにしてくれ』
『了解。帰投まで凡そ10分』
速いな、そう思ってそしてすぐに気づく。
この『アイリス』だって大気圏脱出能力がある。
たかが数十キロ、その程度の時間でいけて当然だ。
盗賊を捕縛し、捕まっていた連中にしっかり住めるような部屋を開放し、食料を与える。
まずはそこまでやって、それから先を考えよう。
『デュカリオン』やこの『アイリス』、更に『デュカリオン』に搭載されている他の超科学的な乗り物、道具の始末とかも含めて。
何せこの『デュカリオン』には、二足歩行型の作業用パワードスーツなんてのも搭載されているらしい。
これは是非試してみなければなるまい。
ただし俺の身体は細長い治療槽の中に入った状態だ。
確認したところ開腹手術をして内臓丸出し状態。
だからパワードスーツを試すのはまだまだ先の事になる。
まあ治療はほぼ確実に成功するらしいから心配はいらないけれども。
やるべき事をやって楽しみに待つことにしよう。
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