第4話 搭乗型ゴーレム開発命令
最近何故か地震が多い。
原因については国の魔法研究所等で調査中。
更に山の東側、砂漠に点在する国々とも連絡が途絶えているようだ。
どうにも何か嫌な予感がする。
しかし地方の中小領地、しかもそこの三男坊で公社長程度の身分の俺には情報は降りてこない。
まあ俺が何か関与出来るような話でもないだろう。
だからとりあえずは気にしない方針で。
そんな俺が気になっているのは勿論ゴーレムについてだ。
最近の地震等に伴い、鉱山施設の一部も被害が出ている。
坑道の一部が落盤したり、山肌の一部が崩れたり。
幸い坑道はほぼゴーレム化したので人的損害は無い。
人間がいる建物も安全な場所に移動済み。
ただそうなると土属性の魔法だけでは処理しきれない事も増えてくる。
たとえば大規模な崩落地点の発掘とか修復工事とか。
そういった作業にふさわしいものを思いついた。
だから例によって概念図を描いてダルトン君のところへ。
「やはりこういった場合は大型ゴーレムがあると便利だろう。それも人型だ。人型なら多様なケースに対応が可能だ。人の数倍の大きさがあれば、魔法以上に応用が利くだろう」
「大型で、かつ人型のゴーレムですか。このような物は工科学校でも聞いた事がありません。二足歩行の人型は概して不安定ですし」
「だが二足歩行だからこそ入れたり作業したり出来る場合も多いだろう。それに二本の腕が自由に使えるメリットは大きい。設計も視察・工事用の二足歩行型を参考すればそう困難では無いだろう」
ちなみにこの時持っていった概念図は、『宇宙の戦士』のパワードスーツと『ドルバック』のパワードアーマー・レコンの中間的なものである。
つまり人が着用したのに近い形だ。
大きさは4m強。
つまりはまあ、人が乗れる大きさである。
「確かにそうですけれどね。前例がないものについては工房も研究料金が高くなるんですよ」
「今の鉱山は絶好調だ。それに俺の取り分の収益をつぎ込めば問題無いだろう」
ゴーレム化が進んだうちの鉱山は人的被害が出ていない。
落盤場所も土属性魔法使いとゴーレムがいれば簡単に復活できる。
しかし他の鉱山はそうもいかない。
結果、鉄鉱石等の出荷量は大幅に減っている。
つまり現在、うちの鉄鉱山は丸儲け中という訳だ。
そして俺は儲けてもお金を使うようなものがない。
元々そこそこ病弱で、結婚するつもりはなかった。
だから今でも独身で、生活は家とここの事務所を往復するだけ。
あとはたまに調子が悪くなって医療魔法使いを呼ぶ程度だ。
大抵はマチルダの回復魔法で何とかなるのだけれども。
だから問題無い。
「とりあえず
「いいんですか、鉱山長」
「問題無い。実際に作って試さないとわからない事が多いからな。此処をゴーレム化したのだってそうだろう」
「まあそうですけれど……わかりました。仕様書を作って委託します」
ダルトン君はそれなりに優秀だ。
工科学校を出ているので技術的知識は豊富。
それだけではなく、こういった技術的な依頼を外部工房へ依頼するのもなかなか上手い。
強い姿勢で押しつけたり命令するのではない。
むしろ弱い姿勢で御願いする感じなのだが、それが上手いのだ。
他の人に頼ませるよりダルトン君に頼ませた方が工房も要望に応えてくれる。
その分ダルトン君が気疲れしたり、若いのに髪が後退したりなんて事もあるらしいけれど。
「ところで鉱山長、この頭部の透明部分と人が入れそうな空間はどういう意味ですか。しかも中から外が見えるようになっているようですけれど」
おっとダルトン君、気づいてしまったか。
まあ気づくと思ったけれども。
「いざという際、本来人が行けないような場所に行く必要がある事もあるだろう。また危険地帯から人を救出するなんて事もあるかもしれない。それにある程度以上の距離ではゴーレムを操作できなくなる。
だからこのゴーレムには人が乗る事が可能な場所を設けた。勿論ゴーレムだから無人で操縦する事も可能だ。しかし内部に乗れば、本来ゴーレムを操縦できないような遠方でも操縦が可能だ。また無人で運用して人を救出するなんて使い方もある」
勿論言い訳だ。
本心はロボットに乗って操縦したい、それだけである。
俺も一応ゴーレムを操縦出来る魔法は持っている。
これが出来ればついに巨大ロボット操縦が出来る訳だ。
「わかりました。ただ乗り心地はかなり悪いと思います。二足歩行は上下動も振動もかなり酷い筈です。
それなりの衝撃緩衝装置はつけますが、そこは覚悟して下さい」
そう言えばパトレイ●ーにもそんな話があったな。
イン●ラムに普通の人が乗ると吐くぞって。
まあいい、何事も経験だ。
作って乗ってから考えよう。
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