第2話 全面ゴーレム化宣言

『鉱山用ゴーレムの開発は成功した。新たなる局面を迎えた鉱山の運命は!』※


 そう、マンブルズ鉄鉱山第3鉱区、通称サイド3(そう呼ぶのは俺だけ)にて半年間実施したゴーレムによる採掘試験は成功した。


 最大の問題であるコストもむしろ下がる事が判明した。

 これは、

  ○ 人が入らないので坑道を最小限の広さで作れる

  ○ 風属性魔法使いによる換気処理も必要ない

  ○ 坑道内に人が立ち入らないので人員管理も簡単

  ○ 土属性魔法使いによって採掘速度も速くなる

等のメリットによるものだ。


 ただし個人的には不満点もある。

 採掘用ゴーレムは検討の結果、4脚歩行の犬型となった。

  ○ 泥や急斜面でも対応できる

  ○ 背の高さが低く坑道を大きく作る必要が無い

  ○ 鉱石や土の運搬には全長が長い方が収納スペースを大きく取れる

等の理由によるものだ。


 個人的には、ロボットはやはり人型であってほしい。

 それも遠隔操縦タイプではなく操縦者が乗り込むタイプがいい。

 あと、出来れば空を飛べたら最高だ。

 変形・分離・合体出来ればパーフェクト!


 しかし鉱山運営の為にはそんな趣味的な事も言っていられない。

 まずは鉱山用ゴーレムを多く運用する事。

 これにより技術を向上させる事が重要だ。


 なおせめてもの抵抗で鉱山用新型ゴーレムをゾイドのケーニッヒウルフのように改造しようとしてみた。

 しかし障害物にひっかかりやすくなる上泥も入り込みやすくなるという意見で却下された。

 ロマンと実用はなかなか両立しないものである。


 更に鉱山全体のゴーレム化の為に公社内外との話し合い、調整、根回しその他を行う事2ヶ月。

 始めた頃は春だったのにもう冬になってしまった。

 何せ土属性魔法使いを探すところからはじめたのだ。

 それでも1年経たずにここまで進める事が出来た。

 

 そしてついに朝の幹部会議で僕は宣言した。


「……以上の試用結果から、今後の採掘作業は人力から徐々にゴーレムの使用によるものへと移す事にする」


 当然、反論が出てくる。


「それでは今までの鉱夫はどうするのでしょうか。また風属性魔法使いや水属性魔法使いは雇い止めですか」


「ゴーレムに移行すると言っても、土属性魔法使いをそれだけ採用するのは困難です」 


 これらの意見が出る事は想定済みだ。

 というか、実はこの反対意見を言ったレイモンド採掘部長やレナス庶務部長には既に話を通してある。

 つまりはやらせだ。


「一度に全ての鉱区をゴーレム化する訳ではない。まずはサイド3、いや第3鉱区、そして第7鉱区をゴーレム化する予定だ。これら鉱区は人間が採掘するには危険が多いとされている。しかしゴーレムなら問題ないだろう。


 また土属性魔法使いは各都市の中等学校以上に採用応募依頼を出して集める予定だ。当鉱山においても新たに魔法教育を行う養成機関を設立する予定だ。養成にかかる期間は半年間。ある程度の適性がある者ならこの期間でゴーレムを操作が可能になるそうだ。教員の目処もついている」


 これで土属性魔法使いの件については解決だ。

 鉱夫については今後採用せず、また現在の鉱夫は再教養や配置転換をする予定。


「水属性魔法使いや風属性魔法使いはどうなるのでしょうか」


 はいはいレナス庶務部長。

 事前指示通りのツッコミありがとう。

 それでは回答しよう。


「ゴーレム化によって採掘量が現在よりさらに増える事が予想される。その為、新たに大型選鉱施設を造る予定だ。

 この選鉱施設は質量選鉱と浮遊選鉱を併用して現在より更に品位の高い成分を選鉱するつもりだ。ゴーレム化が進む事によって余った水属性魔法使いと風属性魔法使いはここに投入する事となる」


 さて、これでマンブルズ鉄鉱山はゴーレム化に向けて本格的に動き出した訳だ。

 これでゴーレム技術も更に進む事だろう。

 そうすればやがて合体・変形する搭乗型ゴーレムも作れるようになるかもしれない。


 勿論すぐに変形や合体は無理だろう。

 最初は変形なしの小型機からだ。

 

 せっかくゴーレム技術があるのに搭乗型ロボットが存在しないこの世界。

 しかしそれもまもなく変わる。


 さしあたっては最初の搭乗型ロボット、どんなのがいいかな。

 ボトムズのスコープドッグか、ドルバックのパワードアーマーか。

 宇宙の戦士のパワードスーツなんてのもいいかもしれない。


 ゴーレム技術の発展に期待だ。  


※ これはバンダイの『ガンダムのプラモデル』TVCMのオマージュ。

  オリジナルは、『Zガンダムの開発は成功した。新たなる局面を迎えた地球の運命は。機動戦士Zガンダムシリーズ、バンダイのプラモデル』。

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