第3話 普通の少年(1)

『普通─────特に変わっていないこと。ごくありふれたものであること。それがあたりまえであること。また、そのさま。』


『普通─────「普通に面白い」のように、称賛するほどではないが、期待以上の結果だったという意味合いで、肯定的な表現と組み合わせて用いられる。』


そう、普通というのは簡単そうに見えて実は手に入れるのがとても難しい、僕達学生が目指すべき目標でもあるのだ。

────────────────────────────


僕の名前は『燃代ねんだい じゅん』。この春、都内の普通の進学校である神園高校かみぞのこうこうに無事通うことになった。初めての高校生活が初まるわけだが、別に心躍ることはないし、不安と緊張感に飲み込まれるなんてこともない。ただ今まで通り、ずっと1人で、目立たない普通の学校生活を送ろうと思う。


なんせ僕は大人数でいるのが好きではない。友達同士わいわい騒ぐというのも苦手だし、コミュニケーションを取るのも苦手だ。


勉強も運動も何事も普通でいいんだよ。もし頭が良かったら勉強教えてだの次のテスト勝負なだの目立ってしまう。まぁ悪かったら悪いで補習とかめんどくさいし。

運動だってもし完璧に出来たら色んな部活から入部してくれと入部するまで言われ続けるだろうし、足が速かったら体育祭とかでリレーの選手に選ばれてしまう。まぁ運動神経悪かったら悪いで体育の成績下がるの嫌だし。


てか本当は頭も良くて運動できるんだよな〜みたいに言っちゃったけどそんなことないからね。


まぁ結局は普通が1番ってこと。大きなトラブルにも巻き込まれない、平穏な高校生活をたのしんで、平穏に終わってくれれば………


「────代くん?燃代くん?」

「あ、はい!」


おっと、どうやら先生に呼ばれていたらしい。ホームルーム中なのをすっかり忘れてた。つい声を大きく出して返事しちゃったよ。クラスのみんなはこちらを振り向いたり、隠れて本を読んでたりスマホをいじってたりしている。少し目立ってしまったけど今だけの事だ。気にしない気にしない…


「あの…あと燃代くんだけですよ…委員会決まってないの…」


20代前半くらいの若い女の先生もとい僕のクラスの担任の先生が少し緊張しながら僕に言ってくる。きっと、新任の教師なのだろう。

それより委員会かぁ…目立たないかつ面倒くさくないのであればなんでもいいですよ先生。


「あの…あと残ってるのは…学級委員…」


僕「………。」 先生「………💦」


僕の体感時間でいうと3分くらいかな?しばらく沈黙の女神がイタズラしたのかってくらい沈黙が流れたね。どうやら僕の高校生活は1話目にして普通ではなくなったようだ。なんか今日はさらに嫌なことが起きそうだからすぐ帰ろう……



──────────あれ?これ3話目?











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る