屋台の間から聞こえた会話
「この世界ってさぁ、メシなんでも美味いよな」
「薄墨もそう思います。見たことないような料理がいっぱいでこっちに来れて良かったです」
「だな。仲間たちにも食わせてやりてぇなぁ。何か方法ねぇかなぁ」
「薄墨はそういう仲間みたいなのいなかったんですよね。その点だけはジャンクさんがうらやましいです」
「そこだけかよ。もっと他にもあるだろぉ、アタシのウィークポイント」
「もしかして、チャームポイントのこと言ってます?」
「うん?うんうんうん?今アタシそう言わなかった?」
「薄墨にはウィークポイントって聞こえたですけど」
「そうだっけか。まぁいいや。そろそろ行こうぜ。あっちの屋台も気になるし」
「気になると言えば、薄墨も気になってることあるんですけど」
「んあ?何?」
「ジャンクさん、本当に世界を救ったんですか?」
「そだよ。アタシ一人の力じゃないけどね」
「それなのに、どうして稀人になったんです?」
「薄墨ちゃん、それ聞いちゃう?アタシに聞くより作品読んだ方がよく分かるんじゃない?」
「薄墨はジャンクさんから直接聞きたいです」
「うーん。薄墨ちゃんは世界を救うってどういうことだと思う?」
「え?それはまぁ、世界をなんとかしちゃおうっていう悪い奴をやっつけて……」
「そうだね。普通はそれでめでたしめでたしってところだよね。でもアタシの世界はそこで終わらなかった」
「どういうことですか?」
「一度世界を救ったアタシたちはそれから何度も戦いの場に駆り出された。みんな期待のまなざしでさ、言うんだよ。我らをお助けくださいって。それがだんだん辛くなってきてさ。ある日仲間の一人に言っちゃったんだ。『この世界って救う意味あったのかな』って」
「それは……」
「そしたら裏切り者扱いされてさ。あとは転げ落ちるだけ。断罪されて名前さえも奪われて、それで今のアタシは
「恨んだりしてないんですか?」
「全然。悔いはあるけど、仲間もあの世界の人たちも少しも恨んでないよ。でもまぁ、次があるなら、今度は間違えたくないよね」
「そう、そうですよね。薄墨もそう思います」
「はい!アタシの話はこれで終わり!次あれ食べようあれ、たこ焼き!」
「待ってくださいよ。急に走らないでくださいー」
この地に生きる稀人たち 石野二番 @ishino2nd
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