インタビューウィズ人間兵器

---では、聞き取りを始めます。よろしいですか?

 えぇ、かまいませんよ。何なりと。


---まず初めに、お名前をお願いします。

 わたくしはツギハギ。おじい様に造られた人間兵器です。


---兵器ですか。

 そうです。兵器として敵軍を効率的に処理できるようにいろいろな魔術兵装を刻み込まれましたわ。


---今もそういった能力はお持ちなんですか?

 いいえ。不思議なことにこの世界に来てからは兵装が一切起動できないんですの。


---力が使えないことについてどう思いますか?

 わたくしは兵器です。いえ、兵器でした。今は違います。まるで普通のヒトのよう。


---残念ですか?

 いいえ、ちっとも。そうね、今だったら話してもいいかしら。だって、もう叱られることはないんだもの。


---それはどういう意味ですか?

 わたくしね、本当のことを言うと、人殺しが好きではなかったの。こんなことを言うとおじい様はわたくしをひどく叱りつけたものでした。だからね、戦場に出た日の夜はいつも自分の部屋でこっそり泣いていました。


---確かに、そういった記述もありますね。

 わたくしはヒトに憧れておりました。そしてそれ以上に兵器としての自分が大嫌いでしたの。だから、兵器としてではなくヒトとしていられる。そのことがとても嬉しいのです。


---では、あなたにとってこの世界に来たことは。

 祝福だと思っています。初めてこの施設に来た日に受けた説明によれば、この世界に来るのはヒトだけなのでしょう?つまり、この世界はわたくしをヒトとして認め、受け入れてくれました。あぁ、これ以上の喜びはありませんわ。


---ありがとうございました。これで今日の聞き取りを終わります。まだ外は暑いので、気を付けてお帰りください。

 ありがとう。そちらもお仕事がんばってください。それでは失礼いたします。

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