第20話 亜空間という無双の場所

ガルガット王国の敗戦と邪神の先兵を片付けた俺はキグナス国王に戦のあらましを語りしばらくは問題ないだろうと結んだ。

国王も

「そうか、わかった」

と言う返事のみで報告を終えると俺はさっさと自領に飛んで帰った。


今回のことで他国もそう簡単には戦争には出られないだろう、俺もしばらくは前線に立つのをやめて亜空間の内政に力を注ごう、と思いグリーンアースの街の代官を任命し必要な時に連絡をとスマホ型魔道具を渡し亜空間に引き込んだ。


亜空間の都市は着実に発展していってた、なんとビルディングの建設が行われているではないか!

コンクリートやローマンコンクリートの製造方法と日本式建築様式をいくつか教えただけでここまで創り上げるなんてファンタジーなんだよ。


この世界は俺が自由に山や川海を配置したり移動できるので

「ここにこんな川を、ここにこんな入江をと言われればその通りに作り替えられるため簡単に港や河川工事が可能なのだ。水力発電に風力発電所太陽熱を使った道具を便利に使い快適な生活空間を整えていきだした。


「まるで現代日本じゃないか」

思わず声が出た、異世界に転生して初めて感動に打ち震えている。


そばにスクナが現れ

「お兄様どうですこの街は」

と自慢気味に話しかけたいつもの癖でお兄様のようだ、

「いいよいいよ、すごくいい。ありがとう。」

俺はお礼しか言えなかった。


現在亜空間の状況は、

 ・人口1万人クラスの街が3つ

 ・はじめの町が2つ

 ・上下水道完備、一部オール電化

 ・街中や街道沿いには街灯が設置され夜でも明るい

 ・学校や病院が併設された教会が街に一つ以上ある

で今の異世界では夢のような世の中である、たまに住民が

「やっぱり俺死んだのかな」

なんて話をするのがおなじみである。


ーー キグナス王国王城内


難しい顔をする宰相に騎士団長、

「侯爵様が未だにシルバー辺境伯の排除を画策しているようだ。これ以上は抑えることも出来ぬシルバー殿が知るところになれば潰されるのは侯爵殿困ったものだ。」

と宰相が呟くと騎士団長も

「我が騎士団も何人かの隊長が同じように夢を見ているようで困っております、彼の方の力をその目で見ればそのような世迷言言えるはずないのに」

そうかと思いついた宰相が

「騎士団と共に魔の森の遠征に向かわせるか特にそのような考えのものを班編成させて力を見せつけてもらおう」

と言い出した

「それは良いことです直ぐに話をまとめます」

騎士団長も乗り気になり部屋を飛び出した、残った宰相は

「人の枠を越えすぎると誰も信じたくなるのは当然かもしれないが侯爵殿やその他の高位貴族がそうであったら問題だよな」

誰に話すことなく呟いた。


ーー 魔の森の攻略前編


魔の森の攻略の話を受けて俺はある計画を立てた、

・反シルバー派の騎士団の者達に魔物をけし掛ける

・ある程度死にかけてから助けるように魔物を圧倒的力で殲滅する

これで俺に対する認識が変わるだろう。

それでもわかりそうもない奴はもう一度魔物を送り込んで殺すしかなかろう、そして俺をよく思っていない貴族の領地にも魔物をこっそり送り込んでやろう。


当日になり俺の同行する騎士団の隊長が挨拶に来たが確かに反抗的な様子が見える。これから魔の森に入るのにこれで良いのかと頭を抱えるほどだ。

対象の隊長は2名、60人の編成で5泊6日での遠征予定だ。俺は何も口を出さず後ろからついてゆく。


前日までに魔物をある程度捕まえて別空間に押し込めて眠らせている。浅い場所では常々俺達が討伐しているため魔物の脅威は無いそのためかかなり舐めた感覚で進軍しているようだ。

「何がシルバー様様だ、この程度の魔物恐ることもない俺たちの力を辺境伯に見せつけろ」

と檄を飛ばしているようだ。


2日目の夜営の時に魔物を10匹ほど近くに出して目覚めさせるAランククラスだ。適当に見張りをしていた兵士が食い殺されて初めて気付いたようだ。

「急襲!魔物の群れだ直ぐに体制を取れ!」

と慌てて隊長の一人が叫ぶ。

俺はテント内で周りの様子を魔法で確認する、兵士の怪我については即死でなければ怪我を癒して別の空間で眠ってもらいながら兵士の動きを確認するが

「ダメだな、全く訓練されていないこんな状態だからこそ俺の力を認めることも出来ないのだろう」

そう思いながら様子を探ると一人の隊長が魔物に取り囲まれたようだ味方の兵は10人余り次々に手傷を受け戦線を離脱(転移)してゆく、もう命の危険を覚悟したのか泣きながら兵士を盾にしている

「こいつダメだな」

と思いながら手足の一つでも失うのを待って助けに向かうと丁度足を噛みちぎられたようだ、

「隊長殿大丈夫ですか?助けにきました」

と言うと地獄に仏のような顔で

「助けてください」

と泣いて縋ってきたそこで魔物を一方的に切り捨てて足の怪我を癒し(完全には治さない)他の兵に守らせながら安全安知に誘導する、もう一人の隊長はと言うとこいつはまだダメだ、一人森の外へ逃げ出している。

 馬鹿じゃないかと思う、一人でこの深さから逃げれると考えること自体愚かだ、そのまま魔法で様子を見ているとゴブリンの群れに出会した、その時共に逃げていたたった一人の部下を残しまた自分のみで逃げた。


俺は残された部下を命からがらの状態で助け安全地帯まで連れて行き話を聞く

「隊長の姿が見えないが知らないか?それと何故あんな場所にいたんだ」

とするとその兵士はなきながら

「申し訳ありません、隊長と二人逃げていました。隊長は私も見捨てて逃げましたので今どこにいるか明かりません。」

この話を記録し本人の怪我を少し治して転移で騎士団長の待機する部屋に連れてゆきひき渡した。


今現在その隊長が魔物の襲われ瀕死であるのは気付いていたが捨てておくことにした。


朝になり被害の全貌が見えてきた。60人中怪我のないものは0人、俺が助けて怪我を癒したものは40人そのまま様子を見ていたもの20人、魔物に殺されたもの18人だ2名は後方不明とした。

頑張っていたもの20人の怪我は完全に癒して現場復帰、40人の中から勇敢なものは完全復帰しそれ以外使えそうもないものは移転で騎士団長の元に送った。

あの隊長は当然片足で送ったよ。


残りは40人ほどその兵士を連れて行軍を再開しながら魔物を狩ってゆく

「流石シルバー辺境伯だ、かすり傷さえ負うことなく魔物を討伐してゆく」

興奮気味の兵士らに戦い方をレクチャーしながら兵士としての力を底上げしてゆく帰る頃には一端の兵士に仕上がった皆俺を羨望の目で見ている問題なかろう。


ーー 魔の森の後編


今回魔の森の遠征中に敵対勢力の貴族領に若いドラゴンをけしかけておいた。

はぐれのドラゴンがたまに現れることはあるのでそれほど珍しいことではないが今回は数が多かった。

しかも反対勢力以外にもちらほら出たそれは遠征から帰った頃に起こるそこで俺の出番。

協力的な領主の元に移転で向かうとドラゴンを切り捨てる、素材などは復興用にと残してゆけばまた人気が上がる。

その反面反対派の領地は俺が魔の森にいる間に暴れたため俺は知らないふりしていた。


ドラゴンの災悪は予想以上で、復興にどれほどかかるか予想もできないほどの被害が出ていた当然自分達の派閥の長に頼み込むがその頼みに綱さえ力も金も無くなっている。

求心力は当然急落、ドラゴンの素材で被害以上に羽振りが良くなった領主が羨ましく俺に対する反感などどこ吹く風で

「もしもの時はシルバー辺境伯殿よろしくお願いします」

と連日の俺詣だ、少しばかり森で討伐した魔物のの素材を提供してやると半分ほどの補填ができると感謝感激の様子で帰っていった。


困ったのは侯爵、どうしたものかと考えているようだが既に孤立無縁、しかも俺と王城で出会った際に

「困ったことはありませんか」

と声かけたが

「お前に心配されるほど朽ちてはない」

と捨て台詞で立ち去ったのでもう一度ドラゴンを2匹置いていくと、侯爵領は壊滅的な損害を受けた様子で国王に泣きついてきたようだ。

すると国王が

「何故、シルバー辺境伯に助けを願わんだった。あの者ならここまで被害が出ることなく討伐していただろうに、お前は何を見ているんだ。そのようなことでは侯爵とは言えん格下げの上息子に当主を譲れ」

とまで言われ廃人のような姿で自領に帰っていった。


俺は侯爵領に国王の命という理由で向かい復興の手助けと怪我人の治療を行なった。

幸い怪我人は少なく援助物資があれば数年でなんとかなりそうだったので侯爵領を預かる。当主代理の息子にドラゴン2体の素材を手渡しその場をさったが完全にシルバー派になったなあれは。


王国内の反対派がほぼ壊滅解散したところでそれに乗っかる形で旨い汁を啜っていた商人らを今度は潰しにかかる。

俺の転移を使い旨味のある商売をただ同然にし俺に友好的だった商人らの販売を促進させたのだ。出入りしていた領主らが落ち目なところに商売もうまくいかなくなった商人らは急速に力を落とし消えていった。


商人らの間にもシルバー辺境伯の意に沿わぬ商売は自分の首を絞めるとの噂が周り、あくどい商売は業を潜めたが景気自体はとても良くなり皆儲けに笑顔が溢れていた。


今回のドラゴン騒ぎでも多くの家を失ったものが難民となっていたがそのほとんどを俺の亜空間に誘い新しい生活をさせている。


亜空間で生産される商品類はこの世界のものと比べると遥かに精密で美しく美味しいものがほとんどで、商売人は是非外の世界に持ち出したいと言うものが多くで始めた。

当然だろうと思うがそれは新たな亀裂を作る可能性もあるそこで技術を習得した者で外の世界に出たいものを募り、グリーンアースで試しに製品を作り販売することにした。当然高級品扱いになるが生産量が外ではかなり低いのでそこまではなかろうと考えていた。


ーー 亜空間製品の席巻


ある日隣のローカル辺境伯邸に用件があって立ち寄ると

「シルバー殿この布はグリーンアース産というのは本当か」

と最近で始めた亜空間で生産していた生地を持ってきて見せた

「確かにこれは最近我が領で生産させている布地ですねそれが何か」

と聞くと

「シルバー辺境伯公認の職人が織った布地につき1mで金貨1枚と言われておるのじゃ」

とのこと確かに高品位な製品だから安く売るのはダメと言っていたのだが

「この製品は生産量が少なく高品位のため高いのですよ。何か入り用であれば特別にご用意しますが」

と言うと

「それは真か、妻が欲しがっておりドレスをアツあえてやろうと考えたが数が揃わぬ」

と言うので

「それならば問題ありません継母ではありませんか私が用意してお持ちしますので」

と言いつつローカル辺境伯邸を後にした。


すると間もなく王城からもあの生地が欲しいとの催促がで始めた。そこでまとまった量を王城で販売するので日時と場所を決めてくれと返すと直ぐに日時が決まり大賑わいの販売であった。


収益金は王国内の教会の孤児院やスラムの人の炊き出しにと配り歩いたその際大きく宣伝しながら行ったためちょろまかすことも出来なかったと思う。

これより先、またもやグリーンアースに移住する難民が増えたのは当然なのか。


ここまで来ると独立も視野に入れるべきか。


その後も亜空間で覚えた製品を作り続ける職人達、跳ぶように売れるが俺は買い占めを禁じていた。

高級品であることは知れ渡っている数も少ないだからこそ注意しなければ職人達の命さえ危うい。

職人達には買収しようとするものや脅しをかける者がいれば直ぐに通報するように命じている、彼らも家族の安全を脅かすことは本意ではない大きな建物を作り専用の工場を作って出入りを厳格にして安全を図った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る