第18話 結婚という名の墓場

歴史は動いた。

10万もの敵兵を一兵の被害なく殲滅したこの戦いは周辺王国の肝を冷やすには十分過ぎるほどだった。

今回進行して来たガルガット王国及びセラーヌ王国は追撃の恐怖に新たに兵を集め王都の守りを固め始めたが相手の攻撃手段がわからずどう守るのか不安と疑心が王都を震え上がらせていた。


ここはセラーヌ王国王都の中心地、広めの広場があり軍隊の進行の場合王城からここを通って各目的の門に向かうのが通常で王都民はそれをこの広場から見送るのだ。

その広場の真ん中に幻のような一人の若者が現れた、男は魔法を使い王都全体に聞こえる声で

「我はキグナス王国のシルバー辺境伯。今回セラーヌ王国の兵が6万もの兵を我が国に差し向けたこれは戦争以外の何者でもない。よって今回俺一人が報復にきた。我が力を知るが良い」

と言い放つと広場一杯に溢れんばかりの魔物の姿、しかも魔の森の最奥に居るような高位の魔物ばかりだそれを見ながらさらに男は

「これはお前らの管理する魔の森の魔物だ人の領地に侵害する前に自国の魔物を片付けよ」

と言うとまた幻のように姿を消した。


 同じことがガルガット王国王都でも起こった、僅かばかりの兵を連れて帰還した第二王女は王都の変わり果てた姿を目にして

「王よこの惨状はいかがしましたか?」

と問うと

「お前の浅はかな行動とそれを黙認したワシの傲慢がもたらした結果じゃ」

と言うと奥に引き込み姿を見せなくなった。


第二王女はことのあらましを聞き

「10万もの兵士を一晩で殺すことのできる男が報復をしないと誰が考えるか、この程度で本当によかった。」

と不幸中の幸いだと思ったが他のものはそう思わない、再度大挙して攻めこめと言うものが続出したそこで第二王女は

「一晩で10万の兵を葬り、一瞬で万の魔物を召喚できるような相手にどうのような手段でしかけると言うのかしかも相手は移転魔法でどこにでも現れることが可能のようだ。こちらの軍の大将の領地を殲滅して回ることも可能だと思うがどう防ぐのじゃ」

と声を上げていた高位貴族にその手段を聞けば誰一人として答えることができなかった。

今回の被害は兵士4万、王都の住民兵士合わせて1万、合計5万を失い相手は一人の損害もないのだこれ以上の深入りは国を傾ける早々に和解に転じる必要があった、直ちに宰相を通じてキルギス王国に和解の使者を立てた。


一方セラーヌ王国はそうではなかった、大国であるプライドが歯止めが効かず再度兵20万を準備し攻め込む様子を見せ始めた。

それを聞きつけたシルバーは

「馬鹿につける薬はないか」

と呟くと最右翼の貴族を調べ上げその領地に魔法で

・田畑を焼き尽くし

・川を氾濫させ

・街に岩の雨を降し

壊滅的被害を与え続けた、すると4つほどの領地に被害を与えたところで泣きを入れてきた、

「セラーヌ王国国王からの和解の信書が届いたしばし待て」

と国王からの連絡を受け報復を一時中止していると毒物を持って我が領土に撒こうとしている集団を発見、全員を捕縛し取り調べたところセラーヌ王国の手の者と判明。

その者達を連れてセラーヌ王都に移転し王城の前で再度

「セラーヌ王国の貴族とはバカばかりか、この者達は貴族の指示で我が国の領土及び領民に毒を撒き散らかそうとした者同じことをし返してやろう、今日よりセラーヌ国の民は水を飲むときは用心せよ。」

と言いながら男達の半分をその場に残し幻のように消えた。


困ったのはセラーヌ王国の宰相、国王が信書で和解を申し込んでいる最中、その最中に毒を撒こうとした貴族がいたでは裏切りでしかないしかも皆捕まえられている。

速やかに残された男達を取り調べると相手の言う通り、これではいつ毒を盛られても文句は言えぬ。

宰相は国王に報告するとともに直ちにキルギス王国に再度謝罪と和睦の信書を送り主犯格の公爵の首を添えた。


全面降伏に近い状況でこの後セラーヌ王国の衰退は目に見えるほど酷かった。


このような状況を聞き知ったガルガット王国は第二王女の事後の判断が正しかったことを実感した、以後ガルガット王国もキルギス王国に手を出すことは無かった。


両王国にとってキルギス王国は鬼門であった。



キルギス王国にとってシルバー辺境伯の取り扱いが難しくなってきた。今回のことでシルバー辺境伯単独で大国相手で戦争しても勝てるほどの個としての部位があることが判明したためだ。

大国2つが全面降伏に近い状態で和解を求めて来ており、キルギス王国としては迷惑料程度の金銭で和解しているが今後の通商条約など大きなアドバンテージが予想されるためその功績は計り知れない。

 中央の高位貴族の中にはこれ以上シルバー辺境伯が力をつけることに不安を感じるものが多く、独立すらするのではないかと噂している。


ここに来てシルバーは考え始めた。俺はひっそりと悔いのない人生を送りたいと思っていたはず、なのに今では貴族になって・・領地と領民がいて・・・守るものが増えてきた。

亜空間と言う自分だけの世界がある・・。

「そうだ隠居しよう」

シルバーは辺境伯領を誰かに譲って自分は亜空間に引きこもれば良いんだと考え、それを実行するための努力をすることになった。


ーー 結婚か養子縁組か


シルバーはスクナとカクナを目の前にして、

「俺、隠居することにした。誰かいい後継はいないか?」

と言い出した、するとスクナが

「とうとうそんなことを言い出しましたね。分かりました辺境伯領を継がせる人材について検討しましょう。」

と言いながら

「先ず、シルバーお兄様が結婚する又は養子を取ることになると思いますが現在の状況を考えると相続をめぐって揉めることを予防する必要から正当な跡取りが必要だと考えます。子供が出来れば後はその補佐をする者がいればいいわけです、幸い孤児院出身の信頼できる人材が山ほどいますので早く結婚して跡取りを作りましょう。」

とニコニコしながら提案した。


「確かにこの領地は今では王都に引けを取らないほど発展している、隙を見せれば利益を得ようとする貴族がいる事は間違いないな。」

少し考えて

「しかし結婚と言っても良い相手がいるのか?ここを狙っている貴族の娘などでは安心できないし・・・。」

と考え込むとカクナが

「お兄様、本当にわからないのですか?私たちはお兄様からの求婚をずっと待っているのですよ、私たちでは務まりませんか?」

と予想外にことを言い出した。

「ええ、お前達が・・・俺の妻に!」

思わず声が出たが、確かに二人とは血のつながりはない信頼もできる。何度結婚話を持ちかけても見向きもしなかったが・・・俺でいいのか?

「本当に俺でいいのか?」

と問うとシルバーに

「「お兄様でないと嫌です」」

二人の声が揃う。

「………」

「わかった、腹を決めたよ。よろしくな。」

とシルバーは言うと二人の前に片膝を突き手を差し出しながら

「我が妻となってくれ、スクナ、カクナ」

と言った、それに対して二人は嬉し涙を流しながら

「「末永くよろしくお願いします」」

と答えたのであった。


ーー W結婚決めたらもう2人飛んできた


 スクナ、カクナの二人との結婚を決めその準備に入り出したところで来客が訪れた。

  ローカル辺境伯の長女ジーノ=ローカル

  一神教の聖女候補シスター セレナ

の二人だ、二人ともスクナ達の友人であったことからお祝いを言いにきたと思っていました。


「いやー。遠いところすぐに来ていただきありがとう。二人に会って話をしてゆくといいよ。」

とスクナ達の所に案内しようとしたら、

「私たちの要件は貴方、シルバー様にあります。ここに座って下さい。」

とすごい剣幕で言うのでそれに応じると

「私たちもスクナ達と同じです、娶って頂きます。」

と言い出した

「えー。それはどういうこと?」

の質問に二人は

「シルバー様男にございますよね、腹を括って下さい。」

とこちらの反論ができる隙もなくいつの間にか二人も花嫁になっていた。

「どうしてこうなった」

「人生の墓場が4つもあって良いのか。」

「……」

しばらくシルバーの独り言が聞こえていたそうだ。



ーー スクナ、カクナ side


「お姉ちゃん、やっとだね」

カクナが嬉しそうに言う

「そうね、でもここまで待ったんだから遅いくらいだよ、2人でお兄ちゃんを支えるよ」

スクナも右手を握りしめて誓うように言った。


「ああ、忘れてた、彼女らにも連絡しなきゃね」

スクナはどこかに手紙を出す準備をし始めた。


ーー ジーノ、セリナ side


「危なかったわね、もう少し遅ければ・・・。」

とジーノが言うとセリナが

「いいえ、神の導きがあるので大丈夫でしたわ」

と答えた。

すると何かを思い出したように

「えっと、他に忘れている方はいなかったですわよね」

「多分・・・。」



ーー 新居は亜空間に


4人を連れて亜空間に入る。以前連れて行ったスクナ姉妹は別としてジーノとセリナは驚きを通り越して言葉が出ない感じ、その後ここまで載せる名をするとセリナが

「やはり私の見立て通り、使徒様でしたねただこの上から考えると既に神に至っている感じすらしますね」

と言い出した、しかも誰も反論するどころか大きく頷いていた。


俺としては4人が安全に暮らせる場所を提供したいと考えての行動だった、

「ここなら安全だし自然も優しいだろ」

と言う俺に

「確かにでも、知り合いや民がいないわ」

とジーノが領主族的言葉を言うと

「そうね、こんな素晴らしい世界に私だけまたはごく僅かな人たちでは勿体無いですわね。

せめて孤児や働けなくなった人たちの安息の場所みたいなので良いのかもしれませんわね」

とセリナが言うと「そうね」などの同意する声が聞こえていた。


俺はここをどうするか真剣に考えることにした。新しい領地として民を受け入れて管理するのかそれともごく僅かなものだけで隠れるように過ごすのかを。


「ああ、そういえばここに入植した職人達はどうしてるんだ?」

すっかり忘れていたが以前ここに数百人の職人を連れてきてその一部が住み着いていたはず。慌てて街中に彼らの姿を探すと、そこには既に動き始めた街があった。

 飾りのような店が並んでいた商店街に所々職人又はその家族が商売を始めていたのだ、

「これじゃもう普通に街だな」

そう口にしたシルバーは4人を街に連れてきて

「ここを安全で幸せな街にするぞ、みんな協力してくれ」

と宣言したのだった。


そこから入植者の選別と現世界との出入りについてルール作りが早急に行われ始めた。

何故なら安全に暮らせて今までの世界と交易できるのであれば誰もが入植したいと考える。

今の所税金や公役さえない。幼い子供や体の不自由な人なども渇望してきた、でも全てを受け入れるわけにはいけない何故なら管理者が被るからだ。亜空間は俺の管理、現世はイシルダー神の管理。

 そこで俺は当面は俺の領民と孤児などの手を差し伸べるべき存在を中心に入植させることにした。


セレナを通じて各国の孤児で入植を望むまたはさせた方が良い環境のものをリストアップさせて、先ず我がシルバー辺境伯領に受けいれその後様子を見ることにした。するとさすが一神教というか生きるのに厳しい世界というか孤児の数が予想以上だった。


ーー  新しい街づくり


職業訓練所の開設、以前も同じようなものを作り孤児を教育していたが今回はその数が数十倍、教師役は今まで育てた孤児らは率先して手を上げてくれたのでその施設や宿泊場所を用意することが早急に必要となった。

人が集まれば新しい事業が起これば需要が生まれそれに人が集まる、秘密裏に人を集めていたが耳ざとい商人たちはすぐに嗅ぎつけた。

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