第15話 新人冒険者ダン

ーー 新人冒険者ダン side


新人冒険者となったダンは今日も冒険者ギルドの依頼を受けていた

「はいこの依頼の受付終了しました気をつけて行ってらっしゃい」

受付嬢の声を背に外に向かうダンは今日も一人である、

「ダンさんは単独での依頼を受け続けているけどもうそろそろパーティーに入るなどした方がいいんじゃないの」

隣の受付嬢が小さな声で聞いてきた

「大丈夫よ、Cランクまでは一人で大丈夫と領主様からの太鼓判だも」

と送り出した受付嬢は言い切る。


冒険者はクラスがS、A、B、C、D、E、Fまであり新米はFから始めり依頼を達成しながら更なる上を目指す、Dランクまで行けば一端の冒険者、Cランクならベテランと呼ばれる上位40%の成功者になる。


 ダンは現在Eランクの上位もうすぐDランクの昇格試験を受けることになっているDランクからは警護任務や野党討伐が必須の条件となる。シルバーは事前の訓練で孤児院の冒険者希望者については幼い頃から厳しい訓練を課していた、その訓練を乗り越えた者だけに冒険者の門を叩かせている。当然その実力はかなり高いのだが見た目が幼いため舐められることが多くそのたびに絡んだ冒険者が血祭りに遭っている。


 ダンの姿は14歳になったばかりであるが身長165cmの中肉で幼さの残る顔が女性冒険者の母性本能をくすぐるようでよく声かけや差し入れをもらっている姿を見かける。


 ダンの武器は、片手剣と槍をメインとし幾つかの魔法を使うと言われているが単独の狩が多いためその実態を知るものは少ない。


今日の獲物はオークとゴブリンの巣を確認と殲滅である。オークもゴブリンもその規模で上位種が存在する群れを作る魔物である。最近ゴブリンを従えたオークが見られるようになりオークの上位種が群れを纏めていると考えられているのだ。



 ダンは気配を消しながら森の奥に入っていく。この森は以前「魔の森」と呼ばれていた森で、シルバーが大半の魔素を吸収したのと上位の魔物を狩り尽くしたため恵みの森へと変わったのだが今でもそこそこの魔物は出没する。

 オーク1匹がゴブリン5匹を連れて狩りをするチームがいくつか見られることからどうやらオークにキングクラスの上位種が現れたようだ。


かなり森の深いところまで進むと集落らしきものが見えてきた。オークが200前後ゴブリンは500はいそうだかなりの群れだ、ダンは素早く身を翻すと街に急いだ。

 ギルドについたダンはギルマスに緊急の報告する、

「何!そこまで規模が大きいのか。」

ギルマスが冒険者に緊急の召集をかけると共に領主に報告に向かう。


報告を受けた領主を軍は冒険者と共に街の城壁の外に陣取る。オークの殲滅は領主シルバーといつ人かの選ばれた者たちが向かう。冒険者らに悲観した色は見えない他の街や国では災害級の事態だが此処では恵としか思えない。大きな群れや高位の魔物は討伐されると大いなる恵みをもたらせるのだ。


ダンはシルバーの補佐で今回殲滅のメンバーに入れてもらっている。緊張してはいるが力んではいないおおよそ10名ほどのメンバーが音もなく集落を取り囲んでいる。今回の初手はダンに任されている、ダンは魔力を高め氷魔法の上級魔法を詠唱し始める

「インフェルノ。」

集落を中心に凍てつく大地が出現する。そこにシルバーの重力魔法が重なる。

凍りつく大地や魔物が砕かれるように潰されていく様子は静かなる地獄と言える。およそ700もの数の魔物が声一つあげることすら叶わず魂を砕かれる。

見渡す限り不毛の大地になったその場所にシルバーをはじめとする討伐チームが姿を表す、すると一箇所から物音が。

 オークエンペラーが立ち上がった、キングのさらに上位のエンペラーがいたのだ流石に上位種今回の攻撃に耐え切ったようだが周りは10名の殺戮者、エンペラーは最も勝率の高そうなダンに狙いをつけ大剣で斬りかかる。

 流石にエンペラーの攻撃、巨体を風のように軽く素早く移動させるとダンの首を大剣でl刈る、ダンの姿がぶれるオークエンペラーがその事実に気づくのとエンペラーの首が落ちるのが同時だった。


「うん、よくやった」

シルバーがダンの一撃を褒める。

「ありがとうございます・・・」

と答えたところで意識がぶらっくあうとした、急激なレベル上昇に意識が暗転したのだ。


ダンが気づいたのは領主邸のベッドの上だった、

「ここは・・・どこだろう?」

と呟くとそばに控えていたと思われるメイドが

「シルバー様の客間ですよ」

と答えるとダンは頭を抱え

「マジかー」

と一言直ぐに

「もう起きて大丈夫ですよね」

と言いつつ身体を起こすと体の状態を確認し出す

「何か調子がすごくいい感じがするような」

と呟いたところにシルバーが現れ

「ダン、レベルが100ほど上がったからだろう。問題ないなら帰っていいぞ報酬は振り込んでおいたから孤児院にこれ持って帰れよ」

と荷物を一つ渡されて領主邸を後にした。



ーー 孤児院 side


 孤児院ではダンの帰りを待つ子供らが姉役のエリータと心配顔でいた、

「エリータ姉ちゃん、大丈夫だよダン兄ちゃんなら元気で帰ってくるよ」

悪ガキのような男の子が言い切る

「そうよね、でも森に行った人は皆帰って来てるのに・・・何かあったのかな」

心配そうな声のエリータに横にいた女子が

「大丈夫よ、王子様は決してお姫様を迎えに来るまでは死んだりしないんだから」

と言うとその隣子が

「それは不吉なフラグよ」

と追加で言い出すさらに心配になるエリータに世話焼きのシスターが

「みんないい加減にしなさい、シルバー様から少し遅くなると連絡があったのを教えてないのね」

と言う言葉に

「みんなー。騙したわね!」

子供たちを追いかけ始めるエリータそこにダンが荷物を抱えて帰ってきた。

「何騒いでいるんだ。」

と言うダンに真っ赤な顔のエリータが

「何でもない!それでどうだったの活躍できたの?」

と話を逸らすダンはニコリと笑って

「おお、バッチリだぜ。これはお土産だ。」

と荷物を手渡した。

中を覗くエリータはそれが収納カバンだと気付き

「みんな、部屋で確認すよ。」

と言いながら孤児院の奥に入って行った、幸せな声が響く孤児院はその日遅くまで明かりがついていた。



ーー ローカル辺境伯の街シンカー  side



 ここは冒険者ギルド内の食堂、多くの冒険者がグリーンアースの街の出来事を口にしていた

「おい聞いたか、オークエンペラーが出たそうだぜ。しかも小一時間で巣ごと殲滅したと聞いたぜ」

とあるパーティーが話すと他の冒険者が

「エンペラーを倒したのは新人冒険者だそうだぜ」

と言うと

「どうせバッチ持ちだろ、しかしエンペラーなら災害級か。」

と答えると皆も感慨深い表情で頷く、皆知っているのだあそこだけが異常であり普通なら国が無くなるほどの魔物だと言う事を。


その話を聞く二人の姿があった、赤髪のと青髪の獣人風の二人

「どうやら使徒だけじゃなくその手下たちもかなりの力を持っているようだな」

と赤髪が呟くと青髪も頷く

「戦力を揃えるか、謀略を謀るか。」

との言葉に赤髪は

「俺たちもグリーンアースに向かうとするか、その後だ考えるのは」

と言うと手にしたエールを飲み干した。


ローカル辺境伯の屋敷にて

執務室の重厚な机に座るこの屋敷の主人はオークエンペラーの討伐の報に唸っていた

「シルバー殿だけならまだしも14歳で討伐するとはあそこの孤児院は化け物養成所か」

前に立つ騎士隊の隊長に問うと

「確かに普通では考えられませんね、ただあの孤児院の訓練を見せてもらいましたがあの訓練を幼い頃からこなすことができるならあるいは可能かと」

と答えると

「そこまでの訓練ね、我が領内の騎士隊にも採用すべきでは?」

の問いに

「申し訳ありません、私を始め誰もがついていけません。」

と答えが返ってくるばかりだった。

「・・・うんー・・欲しいなうちに。」

と辺境伯は本音を漏らした。



ーー  魔族領 side



デルデニアは魔王城の執務室内で報告書を読んでいた、

「新たな邪神が使徒を差し向けたようだ、一人は倒したがまだ居そうだ。」

とあるな、何人か探りに向かわす必要があるだろうと思いながら

「誰か行く者はおらんか?」

とそこに控える新たな四天王に声かけすると

「それでは私が」

と狼男の男が声を上げると

「我も行くぞ」

と吸血鬼の始祖であるメリクリーンが声を上げた

「よし二人に下命する、魔族の力を見せてやれ」

と送り出した。


もう一人の新たな四天王である熊男のベアードが狼男のウルフに

「シルバー殿に会ったら挨拶をしておけよ」

と一言声をかける

「分かっているさ、魔王様の名を汚すことはせんさ。」

と答えて部屋を出た。



ーー キグナス王国 side


シルバー辺境伯領内のオークエンペラー討伐報告を受けた国王は

「シルバー辺境伯はこれからどうすると思う」

と宰相に尋ねる

「私には分かりかねますがただ暫くは辺境伯としての責務を果たすのだろうと思いますが」

との答えに

「そうであるな・・・。」

と一言言うとオークエンペラーの魔石を箱にしまい

「宝物庫へ」

と言いつけ席を外した。



ーー シルバー  side


シルバーは悩んでいた、それは自分の魔力量が更に上がり亜神クラスから若い神クラスに至ったからである。

 オーク殲滅作戦の時も重力魔法はオークやゴブリンが逃げないようにするための軽い魔法のつもりだったのにオークエンペラー以外は全て死に絶えていたことに恐怖すら感じていたのだった。

「俺はこの世界を自由に謳歌すると決めたのに・・・これではスリルさえ味わえないではないか。」

と呟くと新しく覚えた魔法「亜空間魔法」を発動し姿を消した。


シルバーの作り出した亜空間は現代の地球のような生活環境を実現するための空間である、違うのはエネルギーがガソリンや電気等でなく魔素や魔力である事くらい。


現代地球の月ほどの大きさの惑星を作り上げていた海や大地に山や空などを作り新たな動植物を含む豊かな大地に豊かな海を実現させ後はここで生活するものをどうするかと考えていた。

 自分用の屋敷は既に完成させていた、街並みを作り無人の街であるがそれなりの数の住宅や商店に公共機関をすでに備えたこの街はいつでも稼働できる準備が済んでいた。


「天地創造」それすらも可能としているシルバーは既に神の域に達しているのだ、彼の寿命は彼の認識と隔絶している、彼は1000年程度と考えていたが本当の彼の寿命はというか既に老化自体停止しておりまさに不老不死の状態であった。


 もう少し魔力が高まれば亜空間の存在を現世に表すことが可能になりそうだと感じていた、

「そうだ海の生き物がまだ少なかった収集に行かねば。」

と言いながらシルバーは海へ向かう。


 その姿を見ていたガーリックは全く勝てそうな感じがなかった

「邪神様には悪いがあれは俺たちが挑むには大きすぎる。存在が邪神様と何ら変わらん」

そう愚痴るとこれからの事を考え出した、すると側にいたヌーディクが

「ここから離れた国を荒らした方がマシだろ、あいつはこの国の貴族だ国交のない国を中心に邪神様の意向を具現させようではないか。」

と提案してきた、それを聞いたガーリックは

「そうだな、なぜアイツを敵に回そうという事になったのやら、その手で行こう。」

と同調しその日のうちにキグナス王国を後にするのであった。



ーー 亜空間 side


シルバーはスクナとカクナを連れて亜空間に行くことにした、

「シルバー兄様ここはどこなのですか?」

カクナが聞く

「ここは俺が作った別に存在する世界だ、ただ住人はまだいないがな。」

と答えるシルバーにスクナが

「お兄様の世界ですか、あそこに見える街は?」

と亜空間の中の街をめざとく見つけてスクナが聞くのを

「あそこが目的の街だ、ここにどんな人を連れてこようかと考えてもらおうかと思ってな。」

と答えるシルバーとスクナ、カクナの3人は真っ直ぐに舗装されたアスファルトの道路を歩きながらシルバーの説明を聞きながら街を目指した。


街の中央に大きなロータリーがあり中央に噴水がみずをふきあげていた、

「とても綺麗な噴水ですね」

スクナが言うと

「姉様あそこにお菓子屋さんのような店が見えますよ」

とカクナが嬉しそうに言うそれに対してシルバーは

「残念だがまだ作り手がいない素泊まりするだけしかできないのが現状だ。」

と答えると

「えー、いつ出来るようになるんですか?」

と聞いてくる

「それを今から考えてもらうんだよ、ここに住むためにはあと何が必要かと言う事を」

とシルバーが問題を提示するとスクナが

「分かったわ、少し街中を見て考えるね。」

と言いつつ街並みや住宅を覗き出した。

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