第14話 邪神と神の関係

ーー 邪神と神の関係


邪神とは何か、この世は幾つもの世界が交わりながら干渉したりして発展と衰退を繰り返している。それぞれの世界を管理するのがその世界の神という存在で交わる際によその世界の神が勢力を広げようと干渉するその時の神を邪神という。先日邪神の魔の手からこの世界を守り邪神を退けたシルバーであったがまた別の世界が交わればまた別の邪神がその手を伸ばしてくるだろう。

 神と邪神の関係はおわりがないのである。


そしてまた別の世界が交わろうとしていたその世界の神は獣の姿をしている、そして獣人王国にその魔の手を伸ばし始めた。


この世界の神イシルダーは、

「また厄介な神に目を付けられたわ、今度は彼でも苦労しそうね。」

と微笑んだ。



ーー オスマン獣人王国  side


イシルダー世界の南西海に面する国の一つにオスマン獣人王国が存在する。最も魔族領に近い国だ、獣人は力が全てという考え方と獣人のみが信じる神が存在した。

 獣人がイシルダー神以外を信じるわけはその歴史にあった。その見た目から獣人は昔から差別と迫害を受けていたのだ。

 その歴史を変えたのが初代獣人王オルゲイトとその友人と呼ばれていた黒目銀髪の人族レインの存在がなくてはならない。


オルゲイトは生まれながらにして強い獣人であり獣人の受ける差別や迫害に怒りに身を焦がしていた。そんな時差別をしない人種には珍しい黒目銀髪の人族が現れた、そしてその力も飛び抜けていた初めてオルゲイトは戦いで敗北を知ったのだ。それでもその人族はオルゲイトを友として接してきた。


 オルゲイトは友人レインと共に蜂起し獣人族の安住の地を得て初の獣人国王となるが国が安定するまで長く苦しい戦いが続いた。

 そしてレインは獣人の社会的地位を上げるため獣人の教育や道徳に尽力し獣人から

「獣人のこころの父」と呼ばれる存在となっていった。


建国から300年、今では獣人国は世界のどの国に足を運んでもその国民が差別や迫害を受けることが無くなったがそれは全てオルゲイトとレインの尽力と言えるだろう。

そのため獣人の多くはいシルダー神と別にレイン像を拝むのである。


 この獣人族の世界に新たな邪神が獣の姿を纏った3人の使徒を送り込んだ、

 ・赤髪の獅子 ガーリック

 ・青髪の蛇  ヌーディク

 ・黒髪の狼  アローン

彼らは邪神の作り出した分身とも言える存在で戦闘力が極めて高く残酷だった。


 獣人王国に現れた3人は次々に裏社会の獣人をまとめ上げあっという間に裏社会を牛耳った、そして現国王の政治に不満を言い始めた。

「国王は人族に馴れ合っている。今こそ初代獣王の意志を継ぎ獣王国を世界に広げようではないか」

「俺は神の神託を受けた、俺の後に続き世界を獣人のものに」

と口々に叫びながら反国王、反人族を合言葉に勢力を広げていったが、彼らが予想していたほどは影響を与えられなかったそれはレイン信仰の影響だった。


「おい、このままでは邪神様の思いを果たせない。レインという人族の信仰を壊す必要がある。同じ髪と目の色を持つシルバーというキグナス王国の人族を我々で倒し獣人族に新たな伝説をもたらそうではないか。」

3人はそう結論付けるとキグナス王国に攻撃の手を向け始めたのだった。



その頃現獣人国王のローゲイトが側近を集め会議をしていた。

「裏社会に異変があるとはどう言うことだ」

国王がそお言いただすと騎士の姿の獣人が

「はい、今まで裏社会を纏めていた獣人らがどこから来たかわからない赤、青、黒髪の獣人と思われる男らに潰され、そのまま組織を乗っ取られたようにございます。」

と報告するとさらに別の獣人が

「それだけではありません。初代獣人王様の盟友レイン様を信じる者を迫害しているようです。」

と報告したそれを聞いたローゲイト国王は

「そいつらが何者か早急に調査報告せよ。俺は他国の王に情報を流しておく。」

とその日の会議は終了したが王は何か不吉な影がこの国を覆っている気がしてならなかった。



ーー キグナス王国 side


キグナス王の元にその情報が持たされたのはわずか3日後のことであった。

「獣人王国内において不穏な存在が確認された、新たなる災悪になる恐れありか」

キグナス国王はその知らせを聞きながら呟いた、そして宰相に

「シルバー辺境伯に知らせておけ。」

と下命した。



ここはシルバー辺境伯の屋敷内にある執務室、難しい顔をして手紙を読むスクナとカクナの姉妹、

「スクナお姉様この国王の情報はどうお考えますか?」

とカクナが聞くとスクナは

「シルバーお兄様には関係がありそうですね、直ちに連絡をして領内でも警戒を高めておきましょう。」

そ言うと関係機関に連絡を取り始めたそんなスクナを見ながらカクナは

「やっぱりお姉ちゃんは頼りになるね。」

と呟いていた。


それから3ヶ月後

ここはローカル辺境伯の街シンカー、今では珍しくもない獣人の中に雰囲気の違う3人組が現れた。

「国を跨ぐ移動にこれほど手間を食うとは、何か手はなかったのか?ヌーディク。」

赤髪のガーリックが青髪の蛇顔の男に声をかけると

「冒険者になりある程度のランクになれば移動が自由で身分も保障されると先日耳にした、今からでもそれを手に入れて作戦を練り直そうではないか。」

と答えると黒髪の狼が

「そんな生ぬるい事は必要ない直ぐにでも俺が攻め込んでやる、文句ないだろう。」

と2人を睨みつけた、ここまでの旅でアローンは我慢に我慢を強いられていたのだった、それを残りの2人からキグナス王国に着くまではと言われ我慢していたのだ、これ以上の我慢はできないと知りつつガーリックは聞く

「本当に一人でやるのか?」

と言うと当然と言うように

「見ていろ。」

と言いながらアローンは姿を消した。

そんなアローンを見送りながらガーリックは小さく

「邪神の加護のあらんことを。」

と祈った。



 その後残された二人は計画通り冒険者ギルドに訪れ登録後幾つかの依頼をこなしながら情報を集めるのだった。



二人と別れたアローンは、グリーンアースの街を目指していた。


今では恵みの森と化した東部台森林の外周を歩くアローンの目の前に自然の要害かと思われるようなはるか彼方まで続く城壁が現れた。

「これがグリーンアースの街の城壁か確かに立派であるな。」

と呟きながら森から襲ってきたオーク6匹を瞬殺した。


「弱い、こんな魔物を相手にしているこの世界の人族など警戒するほどもない」

と確信し門をくぐるのであった。


 その頃シルバーと言うと魔族領の開発の手伝いや自領内の新たな特産品開発に大忙しであったが。スクナからの情報を受け3人の獣人の情報集めも疎かにしていなかった。それは邪神と神の争いの本質を知れ得ていたからだ。

「どうせまた厄介な邪神が干渉するんだろうな、めんどくさい。」

そう独り言を言うシルバーに笑顔はなかった。


「ん!何か来たな。一人・・力は・・魔王クラスか。」

シルバーの目が鋭く光る

「おい、俺は今から野暮用ができた後は頼むぞ。」

と近くの男に言い残すとシルバーの姿がかき消えた。



アローンは門を潜ったところで門兵に呼び止められていた、

「おいお前、身分証を見せんか!」

恫喝めいた言葉にアローンは怒りのまま門兵を殴り殺した。


けたたましい警告音が響き出すこここに来てアローンは自分の行動が誤っていたことに気づいたが後戻りする気は無かった。

「ここの領主を呼べ!」

アローンは兵士らを殴り殺しながら叫んだ。


するとどこからか若い男が現れ、アローンの頭を無造作に掴むと大森林の中心部へ投げ捨てた。


あまりのことに固まっていたアローンが自分に対する暴力に気づいたのは森の中心部に落下した時だった。

「誰だ!」

アローンが叫ぶと目の前に先ほど見かけた若い男が姿をお現した。

「どこの馬鹿神の手下だ。」

その若者がアローンに問う

「邪神様の事を馬鹿神と・・・お前がこの世界の使徒か。」

そう理解したアローンは直ぐに戦闘体制に入ろうとしたが突然自分の目線が下がったことに不信を抱いた。足元を見ると自分の足が腿の辺りから切られ転がっている!次の瞬間両手が転がった?


「何だと言うのだこれは幻覚か・・」

とこぼす言葉の続きは無かった首が落ちたからだ。

その切り刻まれた死体を見下ろしながらシルバーは

「今回の奴らも馬鹿ばかりか、問答無用で片付けるかな。」

と独り言を言いながら死体を燃やし尽くすシルバーであった。


その頃残りの二人は仲間の死を感じていた、

「アローンが死んだか、早すぎる。情報を集めねば同じ轍を踏む可能性があるぞ。」

ガーリックはヌーディクに語りながら冒険者として情報を集め始めた。

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