第13話 魔王デルニアとの約束

シルバーと会う約束をした日に魔王デルデニアは約束の海岸に昼ごろ来ていたすると既にシルバーは来ていて何やら料理をしていた。

「おい早すぎやしないかまだ昼だぜ」

と呼びかける魔王にシルバーは

「どうせその前に一悶着ありそうだから飯の準備をして待っていたよ。」

と答えた、そして

「文句のある奴はどこにいるんだ、この先の広場で待つからくるようにと言ってくれ、時間は1時間以内だ、いいかい?」

と言うとさっさと歩き始めた。


魔王は配下に

「神の使徒があの先で待つと言っている、用がある者はすぐに向かえ時間は1時間だ」

と言うと魔王は用意されていた椅子に腰掛け湯気の出ている料理を食べ始めた。


「美味いな」

思わず声が出た、そばに控えるジーンとメリクリーンにも

「お前たちも食べてみろ」

と進め始めた、ジーン達は少しばかり戸惑ったが美味そうな匂いに勝てずいくつかの料理に箸をつけた

「「美味い」」

2人とも同じように叫ぶと次々に食べ出した。

それを見た魔王は

「幹部でもそうなのだ魔族の多くのものは美味い飯を食べずにいる・・・だからなのだ。」

と呟いた。


ーー 広場での戦い(?)


神の使徒と手を結ぶこと、邪神の教えを無視することなど納得がいかぬ魔族達約100人が空き地に現れるとそこには地面に座って海を見る男が1人いた。

「あいつが使徒か」

誰かがそう言った、誰かが

「俺が行く」

と言って走り出したすると何人もの魔族がその男に殺到していったが後10mと言うところで足が止まった、いや動けなくなったと言う方が正しい。

男が振り向くすると10m程近くまできていた魔族は力がぬ寝るように倒れ始めた、さらに目があった離れた場所の魔族までが立つこともままならず地面に倒れ始めた。

「これはどうしたことか」

四天王のドーンとグリーンは近くにいたミノタウルスのブラックに声をかけた、すると

「お前らはわからんのか、あの魔力圧が多分近くにいるもので生きているものはいなかろう。魔王様どころの強さではない魔神か亜神に違いないこれでは勝負さえできないほど角が違うわ」

と言って魔王の元に戻り始めた。

その後も経っている者がいなくなるのに10分とかからなかった、ドーンもグリーンもその魔力圧に当てられ意識を失って倒れてしまった。

それらを見たシルバーは

「こんなもんだろう」

といいつつ魔王の元に歩き始めた。


「もう戻ってきたのか」

魔王がシルバーに声をかける

「ああ、意外と弱かったな・・・まだ飯はあるなそれなら酒を出そう」

と言いつつ収納魔法から酒を次々に出してテーブルに置いていった。

「さあ、飲んで食って楽しもうか」

シルバーはその辺りにいた魔族にも「食え」「飲め」

と言いながら魔王と酒を酌み交わし始めたのだった。


意識を失っていた魔族達が目を覚まし出したが未だ体は恐怖のためにカチカチに固まってた。向こうのほうで何やら楽しげな声が聞こえる誘われるままにはうよにしてその場所っに向かうと、あの悪魔のような男が魔王様と楽しげに酒を酌み交わしていた。


魔王がそれらに気づき

「お前達どうだったか?その体で思い知ったっか。まだ敵対するものが居れば前にでよ」

と言う言葉に誰も前に出るものはいなかった。いや出ることすらあの男の姿を見た今ではその気が起こらなかった。

「そうか、それならこっちに来て飲め」

と魔王に誘われおっかなびっくりの体で座に加わった。


暫くすると魔王が立ち上がり

「今代の魔王は人種との争いを行わず、魔族の明日を見て生きる」

と宣言しこの宴会は終了した。



その後魔王は移転門の設置場所の選定や交易品の選定に大いに多忙を楽しんだがその甲斐あって魔族領は次第に豊かになっていった。



ーー キグナス王国と周辺国の対応と魔族の一部


 キグナス王にシルバーは魔王と和解し交易を始めたことを報告した、キグナス王ははじめ大変驚いていたが邪神との決別を宣言した魔王の言葉に信憑性を感じ

「シルバー伯爵領のみで交易をすることを許可する」

と認証してくれた。


「魔族が人を襲わない!そんな話が信じられるか!」

ゴールデン王国やその他周辺王国はこぞってその話を信じようとしなかったがシルバーが

「攻撃すれば反撃をするそれは当然だろう、あなた達の国が魔族領を攻撃するならキグナス王国は協力はしない特に俺は関与しない」

と公言すると勇者亡き今、魔族特に魔王に対抗する力のない国は黙るしかなかった。


魔族内部にも不満をお持つ者はいた、武闘派の魔族や以前勇者らと戦った魔族達の中には未だ燻るものがあったが魔王にはいやと言えなかった。

そんな魔族達に邪神が囁く

「今代の魔王は騙されておるのだ、誰かが目を覚ましてやらねば魔族は滅ぶぞ」

と囁きながら煽り続けていた。


特にドーンとグリーンは納得がいかなかった。確かに神の使徒は自分達が束になっても敵わないような絶対的力を持っているが所詮1人ではないか。

一斉に魔族が人族に攻撃すればいくら使徒といえども全てを防ぐことは不可能。魔族の領土は広がり更なる勢力拡大になるではないかと言うのが彼らの言い分。だが他の魔族はそんな簡単に話が進むわけがないとくに今の豊かさを得つつある魔族の住民はいまさら戦に何のメリットも感じていなかった。


邪神は焦っていた、

「こんなはずではなかった。今一度魔族を立ち上がらせねばもう1人魔王を作るか。」

邪神はドーンとグリーンを融合させ新たな新星魔王を誕生させた。

「この力は!俺が新たな魔王だ人を根絶やしにしてやる。」

申請魔王ドグリーンは海を渡りインダス王国に向かっていった。


神は焦っていた

「邪神めルール違反も甚だしい。」

「シルバーよ聞け新たな魔王が生まれインダス王国を攻撃しようとしているこれを討伐せよ」

神託を受けたシルバーは悩んだ。


魔族領に飛び魔王と会合すると神託の内容を話した

「多分それは四天王の2人であろう姿が見えぬし納得がいかぬ顔をしてたから邪神の声に心を動かされたのだろう」

と魔王は言うとシルバーは

「ならば今回だけは神託に従ってやるか」

と言いつつシルバーは移転魔法でインダス王国にとんだ。



ーー新生魔王の討伐 密かに、 神々の対応 密かに


 魔王ドグリーンは全能感のままインダス王国の地を踏んでいた。

そして街に向その歩を進めようとして強い殺気に後ろを振り向いた、そこにはあの神の使徒がいつの間にか立っていた。


「お前は使徒、こで会ったのは運命俺の最初の獲物としてくれよう」

魔王がシルバーを攻撃始めるいあっまでとは訳が違う魔力の攻撃と大幅に向上した身体能力を遺憾に発揮し一方的に攻撃し始めた

「みろみろみろー!俺の力は絶対だ、誰も止めるとこはできん。ハハハッハッハ。」

勝鬨を上げる魔王が次に見たのは細切れになったシルバーではなく全く変わることなく立ち続けるシルバーお姿だった。

「嘘だ!魔王のお力が及ばぬはずがない」

もう一度攻撃しようとする魔王に

「無駄だ」

と一言シルバーは言いながらその両手を突き出し左右から抑えるような仕草すると魔王がうめき出した

「何だこれは俺を押し潰すつもりか!やられるものか」

と抵抗しようとするがシルバーの手が合わさると魔王の姿もそれに合わせて「プチ」と音を出して消えた。


新生魔王はこうして討伐されたのだった。


邪神は慄いた

「何だこの力は!コイツは邪神である俺の力さえも超えていると言うのか!」

と口ずさみその存在を消していった。


神は困っていた

「ここまで強くなると神としても手が出せないわね、この世界は暫く彼に預けるわ」

と言いつつ監視をやめて他の世界の管理に向かった。



ーー 魔王という人族の怨敵がいなくなったこれから


 新生魔王を倒し邪神の気配がなくなったのをシルバーはキグナス王に報告した、すると王は近隣王国に使者を派遣し王族会議を呼びかけた。


1月後大陸の中心であるセラーヌ王国内にて王族会議が開催されることになった。

集まった王族は

 ・キグナス国王

 ・セラーヌ国王

 ・ゴールデン国王

 ・ガルガット国王

 ・ソレイユ国王

 ・ズール国王

 ・インダス国王

 ・オスマン獣人国王

の8カ国とフンランド皇国の代表それとシルバーの10人だ。


呼びかけたキグナス国王から今回の趣旨が語られる

「今までこの世界は数100年のスパンで魔王と勇者が争う歴史を繰り返していたが、今回その原因が判明し排除されたため魔族との争う必要がなくなったことを世界に宣言したいと思い集まってもらった。」

と説明しシルバーを見た、シルバーが手を上げ席を立ち国王らをにながら


「私はキグナス王国内で伯爵位を持つシルバーと言うものです。

また神から使徒の名を授けられた者でもあります。

今回邪神が神との勢力争いのために魔王や勇者をこの世界に作り争わせていたことが明らかになりました。

復活した魔王デルデニアとそのことに気づいた俺は魔族との和解をなして邪神の目的を防ぐと、邪神は新たな魔王を誕生させ人族に侵攻しようとしましたがそれを討伐することで邪神も諦めたようでこの世界から去って行きました。神についてもこれから暫くはこの世界に干渉する気はないようです」

とことにあらましを伝えると


「新たな魔王」「討伐した」「邪神が」「神が」

と口々に呟いていたが皇国の代表が立ち上がり

「私はフンランド皇国の代表です、今彼が言ったことは我が皇国においても確認済みです、神の神託で暫くはこの世界は自分達の手で良きように作り上げるように」

とのお言葉でした。


すると開催国のセラーヌ王国国王が

「それが事実であればめでたいことだ、それで魔族とはどう付き合っていくのか」

との呼びかけにキグナス国王が

「それは今我が国で1ヶ所のみであるが交易をしておる、上手く行きそうであれば他国もそれに倣って構わないとわしは思う」

と答えた。

その後いろいろなことが話し合われたが結局のとこと、魔族との交易は暫くシルバーの領地のみで決着した。

お開きの後シルバーは各国の国王に誘われパーティーに参加した。、どの国王も使徒の力と人間性を確認したかったようだ。



ーー スクナ、カクナ side


 最近シルバーは忙しそうに飛び回り領地にいないことが多くなった。

その間グリーンアースの街をまとめるのは学園を卒業したてのカクナと既に仕事をしていたスクナの仕事である。スクナも19歳になり大人の女性である。

 見合いの話は数多くあれどスクナは首を縦に降らないためシルバーは諦めていた。

「スクナ姉様、この書類はこれでいいですか?」

カクナが姉に確認を取る書類を見直したスクナが

「ええいいわ、もうだいぶ仕事に慣れたみたいね」

と妹の成長を喜ぶ、するとカクナが

「シルバー兄様も早く帰ってくると良いのにね」

と姉妹で顔を合わせて笑いあった。


既にグリーンアースは街と言うよりも王都と言っていいほどの人口と活気に満ち溢れている。そして何よりもお他の街と違うのは魔族が住んでいることだろう。人族と同じように魔族もこの街で生活をし語り合う姿は他の国でも見かけない話だ。


東部大深林は既に「魔の森」と呼ばれることはなく今では「恵みの森」と呼ばれて久しい。

そのためシルバー伯爵領も大きく領地を広げこの度辺境伯に陞爵することが決まっている。


シルバーはこの10年ほどを振り返り想いに耽っていた

「俺は地球の人生でクソつまらない人生を送っていたがこのお新しい人生では悔いのない人生が送っていけているのか?」

そう常に自問自答しながらの人生だった、これからは本当に自分でしたいことをするために生きてゆこう。

そう決意すると自分の街を見下ろしここを誰に任せればいいのか、と思案に暮れ始めた。



ーー グリーンアースの街中のある孤児院にて


 彼は見上げるような勇壮な城壁を見ながら呟いた

「俺もこんな魔法が使える英雄になるんだ」

と、この街ではあよく見かける男の子の叫びだ、その男の子を後ろから頭を叩く女の子が

「もういい加減してよね、英雄になるまえに立派な人になってねダン。」

女の子はそう言うと大きな荷物を背負い直し孤児院の方に歩いてゆく。慌ててダンと呼ばれた男の子も荷物を背負い直して駆け出す、彼らは孤児院で暮らす孤児であった。


その孤児院はシルバーが最初に作った孤児院で「シルバー孤児院」と呼ばれていた。

初めはローカル辺境伯のシンカーの街やその他周辺の街や村で身元がない子供達を引き取り、読み書きや手に職を持たせて社会復帰できるように計画したモデル孤児院である。

その実績は華やかなもので孤児でもない子供らが読み書きを習いに通いだすほどでここを卒業した若者はその名で良いところに就職ができると評判になる程だった。だがだからと言って孤児がいなくなることはなく病気や災害それに人災で今でもある一定の孤児は存在し続けている。


ダンはこの孤児医院でも年長の男の子だ歳は13歳もうすぐ独り立ちする必要があるが、この孤児院卒園者はどこでも良い条件で雇ってもらえるのだがダンは冒険者を望んでいる。

 冒険者はその成功も失敗も個人責任と言われる職業である、孤児院で高い教養を受けた子供が付くような職業では無い。


いつもそんなダンを注意するのは同じ歳のメイである、彼女はシルバー伯爵の屋敷に文官として雇われることが決まっておりダンにも同じ文官になろうと誘っていたのだがどうしても冒険者になりたいダンはうんと言わずに今に至っている。


 ダンは今、冒険者ギルドに来ている、冒険者登録をするためである。

キョロキョロしながら受付に向かい受付嬢に

「どうしました?」

と声をかけられキョドッていた、それを見ていた柄の悪い冒険者が3人ほど

「おい小僧、ここは鼻垂れ小僧がくるとこじゃねぞ、早く帰んな」

とおちょくってくる、それを無視して受付嬢に

「登録に来ました」

と伝えると無視された冒険者らはさらに絡み始めた

「無視するんじゃね、こっち向けガキ」

とダンの肩を掴んで振り向かせようとした。ダンは身長160cm中肉の少年その少年が大柄の冒険者に捕まれて力任せにされれば普通はね抵抗することもできずに力に屈するはずだが。ダンは違った。

 時々孤児院に姿を見せるシルバーに身体作りから訓練方法までを見てもらっているため並みの冒険者では歯が立たないほどの基礎体力と技術を持っている。


びくともしないダンに痺れを切らした冒険者がダンに殴りかかった。しかしその拳は空を切るばかりでかすりもしない、他の仲間も加わり3対1で殴りかかる冒険者それを見ていたギルド職員も地元の冒険者も特に止めようとしない。

なぜかと言えばダンはシルバー孤児院のバッジをしていたからだ。


 数年に1人か2人シルバー孤児院の卒院者が冒険者になるがいずれも直ぐに冒険者として名を上げていく。

それは幼い頃から伯爵に鍛えられており十分な基礎体力と知識を持ち無謀なこと阻止ないからだ。

今回も珍しくシルバー孤児院の卒院者のようだったので皆評判の悪い3人の冒険者が痛い目に遭うのを笑いを堪えて見ているのだ。


3人がかりでも全く捉えられない子供の動きに周りの者が全く止めようとしないことに不信を感じながらもこのままではメンツが丸潰れと感じた3人はとうとう刃物を手にした。

「舐めやがって、カタワになっても恨むなよ」

と言いながらリーダーのような男がダンに切り掛かった、その瞬間ダンの雰囲気が変わった。

 突然少年が目の前から消えナイフを持った手があらぬ方向に曲がった

「いててて!」

ナイフを取り落とし腕を庇う男。

すると他の2人も突然腹を抑えて床に倒れる、周りを見回す男すると少年と思えないほどの威圧を出しながら男の顎に少年の拳が入る、男はその場に崩れるように倒れると意識を無くした。


ダンは3人の足を掴むとギルドおの外に引きずり投げうっせた。

「あんたら次そんなことすれば冒険者どころか生きてさえいられないよ」

と言うとギルド内に戻っていった、男たちは剣を手に少年に飛びかかろうと立ち上がったがそれを止める若者が1人

「おいおい、自分達の力も相手の力もわからんのか、それでは早々に死ぬぞっどコカよその街に行きな」

とその青年は3人に言う


「他所に行けだと誰の許可でそんなこと行ってるか、冒険者は自由だ」

と嘯く3人に、青年は

「俺が言うんだそれ以上もそれ以下もない今日中に出てゆけ」

と威圧まじりに言う青年の圧力に腰を抜かす3人を後に青年もギルドに入ってゆく。


「ただじゃ済まさんぞ」

という男らに近くにいた冒険者が

「お前らあの男を知らんのか?生きてこの街出たけりゃ黙って逃げな。あいつはここの領主シルバー伯爵様、いやもう辺境伯様だ国王すら黙らす男にそれ以上言えばお前ら死ぬしかないぞ」

と青年の身元を教えてくれた。


それを聞いた男らはその後荷物をまとめて逃げ出していた。



ギルドの中では笑い声が響いていた

「アイツら最近態度が悪かったからちょうどいいお灸になったんじゃねえか」

「そうだあのバッジの意味も知らねえとはね」

と口々に話ながら新たな冒険者を労い出した。

「坊主、困ったことがあったら何でも聞いてこい」

と1人が言うと


「お前じゃ役者不足だぜ」

と違う男がそう言いながら少年の登録を見守っていた。


するとギルド内の空気が変わった、1人の青年がギルド内に入ってきたからだ、

「シルバーだ」

「あれが領主様か」

「あれが竜殺しよ」

などと声がするのを聞きつけダンが振り向くとシルバーがいた


「シルバー様、俺冒険者になることに決めました」

と力強く言うダンに

「そうか、頑張れよ」

と答えるシルバーにダンは大きく頷いた。

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