第8話 胡散臭い異世界
ーー 討伐されたオーガ side
時期は1月ほど前、魔の森からはぐれのオーガが迷い出ていた。
目の前に魔族の男が現れ抵抗する間も無く身動きを抑えられたオーガは、魔族の力に恐怖を抱いた。
魔族は何か不思議な球をオーガの口に入れた。
激しい痛みが全身を襲うオーガは、自我を保つ事がやっとだったがその後は魔族に運ばれた森で眠りについていたのだった。
そして周りで動物の逃げ回る気配を感じ目を覚ますオーガ。
なぜか人の姿を見つけた途端激しい痛みと怒りが湧き出て、意味もわからず襲いかかったその後も何度か人を見つけると襲うことを繰り返していたが、ある街道で人間の馬車列を見つけ飛び出し抵抗する人間を蹴り飛ばしながら魔力の大きい人間に向かって移動したところでオーガは、その者に出会わした。
オーガはその時魔族に出会った以上の衝撃を受けたが、一瞬の躊躇の後その男に襲いかかった。
硬く人の武器では傷すらつけられたことの無い自分の防御力に自信を持っていたが、その男が振るう剣は自分の手足の肉を紙の様に割いていくのに、恐怖を覚え思わず逃げようとした隙に首を駆られたのがった。
その後は意識が覚醒する様な感覚と麻痺する感覚が同時に現れ意識が途絶えたのだった。
その様子を遠くから見ていた者がいた。
オーガに不思議な球を取り込ませた魔族の男だ。
「今回は予想外のものが現れ早期に討伐されたがあの男がいなければ、計画事態はうまくいったと言えよう。
次の段階に移るか。
しかしあの男は問題だローカル辺境伯と一緒にいたところを見ると、辺境伯の家臣か何かだろう。
暫くはあの方面には近づかない様にしながら目的を果たそう。」
と独り言を言いながら溶ける様に姿を消した。
ーー 王都の王城にて
王と宰相それと騎士団団長が執務室で話し合いをしている。
「ローカル辺境伯が討伐したオーガは、本当にあの変異体で間違い何のか?」
王が騎士団団長のオーガス=クリストファ伯爵に確認する。
「間違いありません。ただオーガは首を刎ねられて絶命しており、討伐者の腕、更には剣の性能が予想を超えると考えております。」
と答えると王は宰相に向かい
「ローカル辺境伯が連れてきた例の男爵が討伐したと言うことで間違い無いのか。しかも単独で」
と確認するように問えば
「間違いない様です。その躯もその男爵の所持していたマジックバッグに収めて持ち込んでいた様です」
と男爵程度では持ち得ないマジックバッグの情報まで出たがそれについて宰相は、
「かの者はAランクの冒険者でもあり、魔の森のダンジョンに潜り色々と手に入れているとの話、間違い無いかと思います。」
との説明に王は、
「そうかそうなると褒美について考え直さなければならんかな・・・。」
困った様子の王に宰相が
「ローカル辺境伯の話ではその男、金や爵位にはあまり興味がなさそうと言う話であります。今回の法衣の叙爵でいいのでは無いでしょうか、あとは何か特権でも与えればと考えます。」
と自分の考えを口にした。
「そうじゃのう、まず本人と話をして決めよう。」
そう王が話を終わらした。
次の日王の謁見の間に控える俺の姿と、そばで立ち会う辺境伯の姿がある。
そこに王の登場を伝える声が響くと、
「シルバー=グリンアース男爵面をあげよ。今回は我が王室の王子2人の危機にその方の献上したポーションが非常に有効であった事及び、今回その原因となり民衆に少なくない被害を与えたオーガを討伐した功績は大きい。今回その功績に次の褒賞を与える。」
すると宰相が読み上げる。
・一つ シルバー=グリンーンアース男爵を子爵に叙爵するものとする
・一つ この宝剣を授与し特使の権能を与える
言うもので詳しくは後で確認する必要があるようだ。
その後場所を変えて顔合わせとなった、メンバーは。
王、宰相、騎士団長、ローカル辺境伯に俺だ。
「改めてお礼を申す。王子2人がその方の献上したポーションにより命を長らえただけではなく、体を十全に動かす事ができるほど回復した。しかもその元凶のオーガを討伐し王家並びに王国の威信を守ってくれたこと直接礼が言いたかった。」
と王が言うのを俺は黙って聞いていた。
その後当たり障りのないあ話をしたところで、恩賞の詳しい話にとなったことから
「話の腰を折る無礼お許しください。今回王国の国王にお目通りするにあたり魔の森で手に入れたマジックバックを献上致したいと持ち込みました御改めください。」
とバッグ1つを差し出した。
それを手に取り宰相が、
「これはどの程度の能力があるのか?」
と言う問いに
「おおよそでいいならお答えします。・・・このバッグの容量はおよそ馬車10台分でさらに時間停止またはそれに近い効果がある様です。」
と言うと王、宰相、団長それぞれ驚き子声を上げたが王が
「真であれば神話級の宝。それを王国に献上するとは信じられん。」
と言う問いに、
「実は運が良いのでしょう。効果容量こそ違いますがバッグは5つほど手に入れました、
自分のものは一つあればよかろうとお世話になっている辺境伯様と騎士団にも持ってきました。
なお、騎士団についてはオーガを収納していたものです後で確認してください。」
と伝えると王が、
「無欲なこと感服する。その方の献上品王国に利になるよう使わせてもらう。」
と答え王は中座した。
その後叙爵の件と特権について説明を受けた。
・基本法衣の子爵位であるが魔の森の辺境伯側の所有権を認める
・他国に出る際、王国の高位貴族並みの権限を与える
と言うもの。
つまり魔の森で手に入れた宝や素材は自由にしていい、開墾するならば領地として認めると言う話である。
この話は俺にとって都合の良い話だった。
魔の森の外縁部を開拓し小さな城塞都市を作る、そしてそこで魔の森の素材やダンジョン産の宝を管理して辺境伯を通して交易を行う。
高位の魔物や貴重な薬草を採取して効果の高いポーションと値段は安いがある程度の効果のあるポーションを製造販売すれば、冒険者を中心にかなりの需要が望める。
さらにマジックバッグの活用や俺の転移魔法を使えば距離や時間の不利はなくなるいい事ずくめにみえる。
ーー 一国一城の主人 シルバー=グリーンアース子爵の誕生 3年後
今俺が行っているのは、
・土魔法を行使して辺境伯の街道から石畳の道を敷設しながら魔の森の外周に道を通す作業
だ。
土魔法レベル9の俺の魔法は見える範囲なら想像する物がより具体的で鮮明ならば一気
に発現できると言う事だ。
しかもある程度の魔力を込めた場合半永久的にその姿を維持する事が可能。
・近くの河から運河を通し馬車道だけではなく水路も整備中。
・魔の森の奥の山から鉱物を掘り出し錬金術で抽出しインゴットの作成。
・直径1km周囲やく3kmで高さ30mの丈夫な石の城壁を構築、その中には鉄筋コンクリー
トで補強した構造物でドラゴンが体当たりしても大丈なほどの城壁を作った。
・地下約1000mほどの穴を掘り温泉を掘り当て巨大な公衆浴場を完成させた。
・冒険者ギルド、商業ギルド、薬師ギルドの支店を招き魔の森産のあらゆる物を自由市場とし
て無税とした。
・温泉の中に湯治用のものを作り温泉成分にポーションを混ぜ治療効果を高め湯治の地とし
ても宣伝活動を行なった。
・転移陣と言う魔道具を開発し同じ転移陣のある場所にある程度の人や物を移転できること
になり、距離的問題をお金で解決した。
それぞれを実施しながら今は街づくりを行なっている。
俺も20歳となり妹たちも大きくなった。
スクナは14歳の美少女に育ちどこから見てもお嬢様に見える教養と立ち姿をしている。
カクナも11歳幼女から少女に変身し姉と同じく美少女だ。
魔の森の外周に建設した城塞都市も名をグリーンアースとし鉄筋コンクリートのそびえる様な壁が城塞都市を中心に5km、10kmとその範囲を伸ばし人の安全な生活圏を広げ今では人口3万人ほどの商業と湯治の街で有名になっている。
その成功は王国をして過去に同じ様な例はないと言わせ伯爵に叙爵されたのがついこの間だ。
そこで現在この城塞都市に大きな城を建設中だ。
ーー 邪神の計画と神の目的 1
3年前王国の王都付近においてはぐれオーガを放った魔族が王国北側の街で準備を進めていた。
大きな屋敷の地下に魔の森で捕まえ召喚獣とした
・地竜
・火竜
・オーガ
・サイクロプス
にあの薬を与えて荒れ狂う魔物としていたのだ。
魔族の男は祭壇の様な場所で、
「我が主よ、準備はできましたこれより生贄を捧げいたします。」
と言うと地下の魔物らを次々に予定していた場所に解き放った。
この様子をこの世界を管理する神が見ていた。
「とうとうあれらを解き放ちましたね。これよりこの世界は多くの人が命を落とすでしょう。
早くあの者が気付いてくれることに期待するしかありません。」
と独り言の様にあの時の神が呟く。
邪神は魔族を使役して多くの魂を取り込みこの世界に影響力を持ちたい様で、それを管理者の神が防ぐと言うのが神と邪神の関係の様だ。
魔法陣が王国の各所に現れ荒れ狂った高位の魔物や属性ドラゴンが姿を表した。
それらは人を見ると直ぐに破壊の限りを尽くし出した。
王都にも火竜が現れた!
ローカル辺境伯のシンカーの街の直ぐ近くにも地竜が現れた!
王都の火竜は火を吹きながら王都の街を灰に変えていった。
王国の騎士団が火竜退治に向かったが、空を飛ぶ火竜に効果のある攻撃もできず被害が拡大の一途を辿っていった。
同じ頃ローカル辺境伯も地竜退治に兵士を差し向けたが、その鉄壁と言える防御力と大地を突き破る土魔法に城壁が半壊状態になっていた。
「辺境伯様、地竜を止める事は出来なさそうです。退避してください。」
スカイ男爵が進言するが
「民を前にして私が先に逃げることなっで出来ぬ。」
と避難を拒否し討伐隊に参加する勢いだ。
そこに連絡を受けたシルバー伯爵が移転してきた。
「辺境伯殿、シルバー伯爵ここに参上いたしました。これより地竜を討伐してみせます。」
と言うが早いか書き消える様に姿が消え次にその姿を見つけたのは、城壁の上まさに地竜が城壁を乗り越えようとした時だった。
「魔法無効、物理無効結界発動」
と唱えると地竜の周りにガラスの様な囲いが完成した。
怒り狂う地竜がその結界に体当たりを試みるも全く結界は壊れる様子がなかった。
その結界ごと地竜を魔の森の最奥に移転させるとシルバー伯爵は王都に移転した。
王都はその時火の海と化していた火竜は今まさに王城にてブレスをぶつけようとしていたところで、同じく結界で囲むと自分のブレスが結界内で巻き上がり少なく無いダメージを受けていた。
シルバー伯爵は水魔法で雨を降らせ火を鎮火させると、火竜を魔の森に移転させた。
その後も王国各地の魔物を結界で捕獲しては魔の森に連れて行き、そこで全てを討伐すると不思議な球が現れた。
スキル叡智で調べると
[魔族が魔物を使役する際に使用する「従属の種」と言うアイテム]
の様だった。
「従属の種か、確かあのオーガからもこれが出たな。」
そう呟くとシルバー伯爵は、その従属のタネから魔力をたどり魔族の居場所を探す。
「王都の近くにいるな・・・被害か召喚獣の状況確認のためか」
丁度シルバーが移転用に借りている屋敷の近くだったのでそこに移転する。
気配を消し魔族の現在位置と姿を探すと、余裕たっぷりの様子で王城の方を見ながら頭を捻っている。
「おかしい。なぜ攻撃が止まった。火の手も下火だし・・・他の召喚獣も魔力の繋がりが切れている?」
などと独り言を言っていた魔族に背後から声をかける。
「そこのお兄さん、こんなところで何をしているんですか?」
と、気配に気づかず直ぐ後ろを取られたことが信じられなかったのか、非常に驚きながらもシルバーを見ながら
「俺としたことがここまで気づかずに近づかれたとは、かなり油断していたようですね。」
と言いつつ攻撃魔法をシルバーに放った。
炎と風の複合魔法で当たれば骨すら残らないような威力だ。
虫でも踏み潰したような顔で再度王都を見る魔族に全くダメージのないシルバーが、
「どこを見てるんだい、これはどうかな」
と言いつつ炎と風の複合魔法の更に魔力を練った攻撃魔法を放つと
「何!どうして?これは最上級クラス・・・!」
と言いかけたが言葉をこれ以上は発することが出来なかった。
魔族は半身を消し飛ばされ今まさに消滅の危機にあったのだ。
「しまったこれじゃ話を聞けないか。それなら頭を直接探るか。」
そう言いながら魔族の頭に手を差し入れ情報を吸い出し始めた、その途中で魔族は死に絶えていた。
「そうか、邪神の影響力を強めるために大量の魂を欲していたのか。」
「どうやらこの世界は邪神が狙っているようだ。あの神は何も言っていなかったが代理戦争のようなことになっているのかな・・・それならそれで一言言ってくれてもいいのに・・まあいいか」
と呟きながらシルバーは名も聞かずに殺した魔族を収納して自宅に戻った。
「予想以上にあの者は強くなっていました。しかも上手い具合に私と邪神の関係を言い当てていましたね。今後も良い働きを願いましょう。」
と神は下界を見ながら1人呟いた。
「我が眷属を反撃も許さず抹殺した者がいる・・・神の手先勇者か・・・いやそれ以外の存在のようだが・・・次こそ・・」
どこかわからない場所で邪神が唸る。
ーー 王国の復興の手伝いの奔走する
ローカル辺境伯にことのあらましを報告しながら魔族の死体を見せると。
「これが魔族か!ドラゴンさえ凌ぐ戦闘力と昔話にあったがそれを・・・取り敢えず王には私から報告しておこうそれと復興の手伝いをしてもらうことは可能かな?」
と王国内の惨状について可能な限り支援して欲しいと言われた。
そこで俺は、
「いいですとも。俺の支援は怪我人の治療と家を失った者に簡易の住居と食事を与える程度ですが、いくつの街に対して支援しましょうか?」
と言うと、
「それは頼もしいが多すぎてもいかんので我が街と王都ではどうかな?」
と提案され明日から復興に携わることにした。
シンカーの街は地竜に襲われたため
・街の城壁の損壊
が主な損失で冒険者と辺境伯の私兵の損傷が主なものであったので、冒険者ギルドに地竜の素材を売りつけた後、
・怪我人の治療
・怪我人や仕事を失った者にしばらく生活できる金を配布
その金は地竜の代金から賄った。
王都は火竜の攻撃を受けたため火災で家を失くした者や炎で怪我をしたものが多く、治療優先で行うことにした。
焼け後の一角に大型のテントを張り魔法で強化し野戦病院とした。
治療代は無料で火傷や怪我のひどいものから治療を始めた。
俺は範囲魔法の治療術が使えるので治療用のテントに同じような程度の怪我人を50人ほど集めると一気に治療した。
10日ほど治療していると、ほぼ怪我人の治療は終了した
すると次は衣食住の提供である、焼け跡を一気に更地にすると居住地を買い取りそこにコンテナハウスを建設し始めた。
コンテナハウスなら丈夫で重ねるととも簡単なことから2人暮らしから4人、6人、8人、10人暮らし用のコンテナハウスを建設し元の住民に低価格で販売すると、王都住民の王家への信頼と尊敬は大いに増すことになった。
更に治療行為で王都にある教会から感謝の印として司祭の位を贈られたが、宣伝五日割れた感が大きい。
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