第7話 家を買う

ーー シルバー家を購入する



 辺境伯の屋敷のほど近くの貴族街の一角にシルバーは不動産社員シャナと共に来ている。


「はいこれが辺境伯様の許可証です。」


と言いながらシルバーは先日もらった許可証を手渡しながら鍵を受け取っていた。


「これでここは俺の屋敷だ。改装と執事や庭師などを雇わなければ・・・。」


と呟くとシャナが


「それなら商業ギルドで斡旋してますよ」


と声をかけた、


「あそうなの?場所教えて。」


とすぐに食い付きながらシャナと商業ギルドに向かう。




 商業ギルドは冒険者ギルドの近くにあった。


建物に入ると受付と商談をする小部屋がいくつかある感じの落ち着いたギルドだった。


キョロキョロしていると見かねた受付嬢が声をかけた。


「何か御用ですか?私ケイトが承りますが」


と優しく聞いてきた。


「はい、屋敷を購入したんですが屋敷を維持するために人手を求めにきました。」


と俺が答えると「屋敷」の言葉に反応したようで


「お屋敷はどこのお屋敷でしょうか?」


と質問されたのでシャナからもらった譲渡証明書を見せると


「え!このお屋敷を購入されたのですか。


 はいすぐに準備させてもらいます、暫くこちらの部屋でお待ちください。」


と商談用の部屋に招かれた。



 待つこと5分、ケイトと名乗った受付嬢は1人の男性社員を連れて部屋に入ってきた。


「失礼します、こちらは担当になるジェラートです。」


と40歳ほどのやり手セールスマン風の男性を紹介して受付に戻っていった。


「初めましてジェラートです。

 屋敷を維持する人材をお求めと伺いましたが間違いありませんか?」


とテーブルの反対側に座りながら名刺のようなものを手渡し話し始めた。


「そうです、これが譲渡証明証です。


 屋敷も庭も広いので俺と子供の姉妹の3人で住むには手が足りないので雇いたいと考えています。


賃金を含め相談に乗ってください。」


と素直に俺が伝えると。


ジェラートは「分かりました」と頷きいくつかの履歴書を目の前に差し出した。


「この物件でしたら執事1名、メイド3名、調理師2名、庭師1名と馬車のどお持ちであれば御者1名が基本でしょう。」


と言いながら履歴書をその数ほど揃えて


「ここに用意した人材は現時点で最高と自負しております。


この執事は最近まで王都で伯爵の執事を務めていたもので引退後に故郷に戻ってきたものです。


こちらのメイドは同じく王都おにてメイド長を歴任していた者で間違いありません。」


と説明しながら他の5人も経歴や性格などを説明してくれた。


「分かりました、ただ俺は冒険者でこの若さですが大丈夫でしょうか?」


と不安を伝えると


「この物件を購入できることがステータスです。問題ありません。」


と断言するのを聞いてそんなものかと思った。


契約をしながら改装の業者について話を振ると


「それもご安心ください我が商業ギルドの専属がおります。」


と答えるジェラートと改装の日程や雇いれる人物との顔合わせを決めて手付金を支払って宿に帰った。




ーー ローカル辺境伯邸にて



「お父様、おはようございます。」


辺境伯の屋敷ではこれまで約1年間聴こえていなかった明るい子供の挨拶の声が辺境伯の耳に心地よく響いた。


「ああ、ジーノおはよう。」


と娘に挨拶をする辺境伯は妻の眠る部屋のドアを静かにノックすると、中から返事を聞きながら部屋に入る


「イースおはよう今日の気分はどうだい」


と愛妻に声をかけると妻は


「はい、とてもよろしくてよ。しかもなんだか若返ったみたいで。」


と答える妻を見ながら本当に若い頃に戻ったようだと同じ感想を抱く辺境伯。


それから食堂で後から起きてきた息子を含めて食事を取る、幸せを感じる辺境伯だった。



「お父様、命の恩人のシルバー様にはいつご挨拶が出来るのですか?」


と娘ジーノが聞いてきた


「ああそうだね、この近くに越してくるそうだからその時に屋敷に呼んでもいいね」


と答えておいた


「嬉しいわ、お母様もうすぐお会いできるようですよ」


と嬉しそうな娘の笑顔の癒される辺境伯だった。



 その後辺境伯は執務室で仕事の片腕として信頼しているスカイ男爵に


「あの話はどうなっている」


と調査の進捗状況を確認すると


「はい、カブト医師並びに調理人と給仕のメイド2名を拘束して尋問したところ次のことが判明しました」


と言いながら報告書を差し出した内容的には


 ・カブト医師はガルガット王国の間者でメイドと調理人を買収して毒を盛ったことを自供

 した。


 ・ガルガット王国は、戦争の準備をしておりこのローカル辺境伯の力を落としておいて攻

 め込む予定だったようです。


 ・シンカーの街にも辺境伯様を暗殺する者を差し向けた様子があり先に確保した者たちが

 その者のようです。


と書いてありさらに「あの件は」という辺境伯に


「はい、シルバー殿はあの屋敷を購入し現在改装中で明日にも入居する様子です。


 時期を見てここえの招待状を手渡す準備をしております。」


と答えるのを頷きながら辺境伯は


「決して不快な対応をしないよう徹底させてくれよ。


 そして王家への新興男爵位の件はどうなっておる。」


と聞けば


「はい、そちらも根回しが済んでおり数日中には許可が下りると考えます。」


と打てば響くような報告に深く頷いた。





ーー 新しい我が家を見ながら



 改装が完了したと報告を受け現場確認に来た俺。


神様にもらった日用品各種の魔法バッグは優秀で洋式の水洗トイレやジャグジー付きの広い浴槽など想像しながら取り出すとこの世界仕様の魔道具として現れることが判明し改装のついでに設置をお願いしていた。


「ご主人、このトイレや浴槽は魔道具ですか?」


と改装業者の職人が苦労しながら設置したようで使い具合を試して欲しいと申し出ていた。


使うと地球の文化レベルと遜色ないものが準備でき俺は非常の満足していた。



 ここ十日ほど俺は、屋敷に飾る希少種の魔物を魔の森に行き狩り尽くしていた、


 ・ワイバーン20頭

 ・グリフォン3頭

 ・オークキング1匹

 ・キングスネーク5匹

 ・火竜1頭

 ・地竜2頭


などを筆頭に数百の魔物を狩り冒険者ギルドに素材の一部を卸していた。


おかげでランクはAに跳ね上がり待遇は下級貴族並になった。




そんなことで新しい屋敷に引っ越しをしながら雇った執事などと顔合わせを済ませていると辺境伯の使いから招待状がもたらされた。


『ご家族でお越しくださいか』それなら5日後にと返事してスクナ姉妹にドレスを仕立てるようメイド長に命じて執事のクロードにお土産について相談し始めた。


「ご主人様、辺境伯様は無類の酒好きで奥様は女性ですから美容か宝石の類、お嬢さまはアクセサリーかスイーツそしてご子息は剣など如何でしょうか。」


との申し出に同意をした。



 俺が神から貰った生活用品各種(望みのまま)というスキルは俺が欲する記憶にある物を取り出すことのできるスキルで、食料はもちろん衣類に薬品それに機械類を出現させる。


機械については魔道具的なものからガソリンエンジンまで燃料ごと取り出せるので生活するのに心配することはほぼない感じがする。


 今回神から貰った剣やナイフを見ながら作りだす事にした


 ・片手剣(不壊 斬れ味+5)


 ・ナイフ(不壊 斬れ味+3)


というものでもこの世界では家宝クラスだ。


 魔法のレベルも軒並み5以上あり無双することも可能なのだがそこは気ままな生活を望む俺としては必要に応じて対応することにしている。



辺境伯の屋敷に向かう日、俺はスクナ姉妹と馬車に乗り3人で向かった。


出迎えの執事に案内され屋敷に入った俺たちを辺境伯は家族総出で出迎えてくれた。


「ようこそシルバー殿そしてその妹がた、今宵は私のささやかの御礼を受けてくれてありがとう。


可能な限り寛いでくれ。」


とローカル辺境伯が言うと妻や息子や娘も


「「「どうぞ」」」


と奥に招いてくれた。




辺境伯の妻や子供たちは3日後には出歩くことができるほど回復しすっかり元気になっていた。


そこで俺は準備していたお土産を差し出すと


「おいおい、こちらが呼んだのにプレゼントとは心苦しい真似はやめて欲しいが今回だけを快く受け取るよ。」


と辺境伯の言葉に早速中身を確かめる辺境伯家族そして


「これは見たこともない酒だねこんなに種類があるし早速後で飲んでみよう」


「これはお化粧品ですか?香水まであとで使い方を教えてくださいね」


「僕のは・・・ナイフに不思議な剣・・すごくかっこいいありがとう。」


「私のは綺麗なアクセサリーの詰め合わせ!本当に嬉しいわ」



皆とても喜んでくれた。


辺境伯の妻と娘はスクナ姉妹と化粧品などの使い方と別に持ってきたシャンプー、リンスに石鹸の使い方をメイドを含めてレッスンを受け、辺境伯と息子はプレゼントの剣などの使い方を教えたあと辺境伯とお酒の試飲をして過ごした。


 「シルバー殿、この酒は素晴らしいどこで手に入れたものですか?」


という辺境伯に俺は


「入手先については極秘ですが辺境伯が使う程度は俺が準備しますよ。」


と答えると俺の両手を掴んで感激していた。


その後夕食になり豪華な食事にあと俺が準備していたスイーツを運ばせると


「シルバー様このスイーツは王都でも食べられないようなものですわ。


どこで手に入れられたのですか?」


辺境伯夫人が興味津々で聞いてきたが


「今日のプレゼントなど俺の持ってきたものは入手先は極秘ですがたまには提供できますので必要とあれば連絡ください。」


と答えると「約束ですよ」という夫人の目が怖かったのは愛嬌。




その夜は辺境伯の屋敷に泊まり次の日の昼に家に帰ったがスクナ姉妹は辺境伯夫人とお嬢様とすっかり仲良くなったようで、


「いつでも遊びに来なさい」と言われていたことなどを興奮して話してくれた。



 5日ほどすると辺境伯夫人から連絡が来た。


「貴方から頂いた化粧品各種とシャンプーリンスは非常に効果が高くシャンプーリンスはメイドたちがこぞって使うので品薄状態になった出来れば購入したいのだけど。」


という内容だった。


最近になり魔力を込めると欲しいものの量が大きくなることに気づいた俺は詰め替えようとして18L入りのシャンプー、リンスとボディソープを10セットと夫人にあげた化粧品セットを1年分5セットを金貨50枚で届けた。



 この世界の金貨といえば現在のお金で10万円ほど、なかなかの金額で売れたことになる。


しかしその効果はこの世界の人にとって非常に効果のある物のようでお礼を会うたびに言われるほどだった。


 そしてスクナとカクナについても辺境伯の屋敷で妹と言われて俺は2人を本当に妹にすることにした。


2人は驚きと喜びに一晩泣いていたが次の日にははにかみながら「「お兄さん」」と呼んでくれるようになった。


1月ほどした頃辺境伯から再度の呼び出しを受け向かうと


「勝手な話なんだがシルバー殿に法衣の男爵位を受けてもらいたいのだが。


これは強制力や義務の非常に少ないものでシルバー殿の損にはならぬと考えているのだがどうかな。」


叙爵の話であった。



「んー、確かのこの街は気に入っています。


ここを拠点にと考えてはいたんですが・・・いくつか質問させてください。」


俺は条件の確認を行なった


「なんでも聞きたまえ」


「それでは


 ・一つ 必ずしなければならない義務や責任は

 ・二つ 準備しなければならない物や雇わなければならない人は

 ・三つ 他国に行くことについてに制限は

 ・四つ 俺一代の話か


なんですが。」


との質問に


「そうだな一づつ答えよう


 ・この国に不利になる行為は謹んでほしい、貴族として手本となる行動をとってほしい

 ・屋敷や人については今の規模で構わないが妹さんたちに教育をお願いしたい

 ・他国については移住や年単位の長期でなければ届出で大丈夫だ

 ・貢献度などで違うが今のところは一代の予定だがさらに上の叙爵もありうる


このくらいだろうか。」


と辺境伯は答えてくれたので


「それではお受けします」


と答えた、多分俺に何かしら恩を感じた辺境伯が手を回した結果だろうと思ったからだ。


「そうか、受けてくれるか良かったすぐに手続きをしていこう。」


と辺境伯は側近に話を通しながら


「話は変わるがシルバー殿から貰ったあの酒、


 非常に旨い王家にひとつ献上したいと思うのだがどれか樽で購入できるものはないかな」


と俺をさらに売り込み見たいようだそこで


「分かりました樽で熟成するものがあるのと別に辺境伯へ瓶詰めを纏った数お渡ししますので好きにしてください」


と言いながら事前に準備していたものを執事に依頼して馬車から持って来させると感激した辺境伯は始終ニコニコ顔だった。





ーー 貴族として異世界を楽しもう



法衣とはいえ年間金貨300枚を貰う貴族になった俺は辺境伯にこういう提案をした


 ・効果も高いポーションを一定数王国に提供する

 ・辺境伯の依頼で高位の治療魔法を行使する


と言うものだ。


この世界病気や怪我が大変大きな問題となるそれを奇跡のような魔法やポーションで治せるとなればかなりのアドバンテージになるだろう。


すると辺境伯は


「確かにシルバー男爵の治療魔法は奇跡に近いそれだけに使い所が難しかったがポーションを提供してもらえるなら十分貢献となるだろうよろしくお願いする。」


と言ってくれた。


辺境伯の権限で男爵位の叙爵は可能なので王都に行く必要もなく俺は男爵となりスクナとカクナを学校に通わせることにした。


学校は王都にある貴族や裕福な者が通う学園とある程度大きな街にある学校がある、


今回は自宅から通うと言うことでシンカーの街の学校にした。


学校では


 ・読み書き計算の基礎を習う

 ・貴族の子息として必要な知識を習う

 ・文官を目指す者用の高等な知識を習う

 ・騎士や魔法師を目指す者が訓練をする


等があり当然2人は上二つと自宅でダンスや礼儀作法を家庭教師を雇い習うことになった。



「頑張れよ」


と言う俺に2人は


「お兄さんの足を引っ張らないように頑張るね」


と健気に言っていた。


 俺はそれらをしなくていいのかと言うと「叡智」と言うスキルが非常に役に立ち一度見せて貰えば行事作法やダンスなどは完璧にこなせた。



 今日は献上用のポーションを作成のため自宅の作業部屋で朝から錬金と創薬三昧、

ポーションと言えば


 ・エリクサーなどのレベル8〜9の神話級

 ・手足の欠損を治すレベル6〜7の最上級

 ・大きな怪我を治すレベルレベル4〜5の上級

 ・軽い怪我を治すレベル2〜3の中級

 ・打撲程度を治すレベル1の低級


に分かれるが今回は最上級3本と上級20本それに中級100本を献上用のすることにしたが、作るのは神話級を10本と最上級100本に上級1000本だ、この世界は魔物がおり危険も多いので準備だけはしておく。


出来上がった献上用のポーションと辺境伯用のポーションを辺境伯の屋敷に届けると


「これ程のものを短期間作るとは流石である。


しかも私用にも提供してもらい感謝に耐えない。」


と感謝ひとしきりだがその反応の大きさはすぐにわかることになった。





ーー それから10日ほど経った王都王宮にて



「誰か!治療士を呼べ!」


王の声が響く、第一王子と第二王子が近くの森で鹿狩りをしていたところはぐれのオーガが現れ襲われたようで、


両足と右手が千切れかけて瀕死の重傷を負いまもなく城に運び込まれると連絡があったのだ。



 はぐれオーガとは、魔物は基本的に魔素の濃ゆい場所に居るものだが、時折変異した魔物の中に単独で人の住む場所に出てくる魔物がおり、しかも恐ろしく強い個体の場合が多い。


今回の魔物も騎士団級の強さで同行した近衛20人はほぼ全滅し辛うじて大怪我を負った王子達を連れて逃げ出した状況のようだ。



 城に運び込まれた王子たちを見た王は絶望した、


 ・第一王子は両足を膝から下千切れかけ

 ・第二王子は右手と顔に大きな損傷を受け


それぞれ瀕死の状態だった治療魔法士が癒しの魔法を行使しているが命を保つのが精一杯の状態で治る見込みなどほぼないと思われていた。


 そこにローカル辺境伯からのポーションの献上品が届いたその説明では最上級が3本あると言う


「直ぐに王子に使用せよ!」


と王が叫ぶが宰相は


「まだ鑑定が済んでおりません、しばらくお待ちを!」


と安易な使用を止めるしかし事態は一刻を争う王は


「構わぬ、ポーションを持ってこい!」


と命令し目の前で両王子に一本ずつポーションを振りかけると、


ちぎれかけた手足が映像が巻き戻るようにして治癒していく


「これは真に最上級のポーションに違いない残りの1本も半分づつ飲ませよ」


と王は決断し様子を見守ると5分後には安らかに寝息を立てる2人の王子。



「良かった本当に・・・しかしなんと言うタイミングじゃ、辺境伯の手紙をもて」


ポーションと共に送られた手紙を読む王


「宰相よ!新たにローカル辺境伯が男爵位に叙爵した者からの献上品のようだ。


この様なポーションを手に入れることの出来る者をこのままにしておくのはいかん。


今回の褒美として子爵位に叙爵せよ」


と直ちに命じた。




そんな事が王都にてあっていたとは知らないシルバーは、


魔の森と呼ばれる魔物の跋扈する森で魔物狩りをしていた。


 自分の屋敷に帰ると辺境伯の者が訪れていた、


「辺境伯様から手紙を預かって来ました良ければ明日にでも屋敷までお越しくださいと伝言を受けております。」


使者はそう言って帰っていった、


「何!王都ではぐれオーガが王子たちを襲い大怪我を負わせたが、


たまたま俺の送ったポーションを使用し事なきを得ることができたので、


褒美を与える話になったか。」


シルバーは執事のクロードに辺境伯までの先触れを頼み明日の訪問の準備をするのであった。





 季節は初夏から夏に移ろい山の緑も濃ゆく畑では作物が大きく育ち始めていた。


馬車に揺られ辺境伯の屋敷に向かうシルバーもそんな牧歌的風景が好きだった。



 数日前にシルバーは時空並びに空間付与の魔法が十全に使える様になり幾つかのバックを作っていたのだが昨日狩れた魔物がとても相性の良い素材でつい沢山作りすぎたのだった。


そこで辺境伯へ献上と思っていたところでの呼び出し幾つか見本に持って来ていた。


「忙しいところよく来てくれた感謝する。


早速だが王都にシルバー男爵のポーションを献上したその日に王子2人が大怪我を負う事故があり早々役に立った事で王が大層お喜びの様子、是非王都に呼び褒美を渡したいと連絡が来た。


私としては応じてほしいがどうかな?」


辺境伯は俺の意思を尊重したい様だがここで断れば辺境伯に要らぬ迷惑をかけそうだと判断した俺は受けることにして


「はい、その依頼お受けします」


と答えた後


「それとは別に辺境伯に見てもらいたいものがありますコレです。」


と一つのバッグを差し出した、それを手に取る辺境伯は


「素材は・・かなり高位の魔物・・・まさかドラゴン!


 ・・これはドラゴンの素材で作ったバッグなのか?」


と驚く辺境伯に


「確かにそうですが素材ではなくその性能なのですが。


 それで馬車4台分の容量でさらに時間停止の魔法が付与されております。」


と言うと


「馬車4台分!・・時間停止!・・まるで神話級の物ではないか。


 まさかシルバー男爵が作ったのか?」


と言うと辺境伯に


「ちょうど良い素材が手に入りましたので魔法の練習用に作りました宜しければ辺境伯様に献上させて戴きます。」


と俺が言うと


「王家にもないような物を私が持つことは問題の種にしかならぬ残念じゃが・・王家に献上するか。」


と喜びも束の間ガッカリする辺境伯に俺は


「王家にも献上する分はありますのでご心配なくそれで相談ですが、俺が作ったと教えるべきかそれともダンジョンで獲得したと言うべきかと考えて」


と俺の相談事に辺境伯は


「確かにこの様な神話級の魔道具を作れるとなれば・・男爵の自由が無くなるやもしれん。


暫くはダンジョン産と言っておくのが良かろう。


それもあの魔の森の奥にあると言うダンジョンが良かろう。」


と助言してくれた。



それから5日ほどした日に王城への呼び出しが正式に来た。


俺は最上級のポーションを10本ほど詰めたバッグを献上用にと準備し辺境伯と共に王都に向かった。


 今回俺は移転魔法が使える様になったことから国内に移転場所を作ることも目的としていた。


王都近くまで来たところで物々しい武装の商隊に出会った。


問題のはぐれオーガが未だ討伐されておらず時折商隊を襲っているのがその理由の様だ。


 俺は辺境伯に尋ねる


「辺境伯様、はぐれオーガとはそれほど討伐困難な物でしょうか?」


それに対して辺境伯は


「オーガ1体なればB級の冒険者パーティーにでも討伐依頼で済む案件だが、今回のオーガは特異変異体の様だランクはAの上と言うところで若いドラゴン級の難易度だ当然騎士団級の準備がいるだろう」


と話をしこれから討伐が行われるだろう、しかも王子らが襲われていることから威信をかけたものになるだろうと語った。


 そんな話をしているところに騒ぎの声が聞こえ始めた


「商隊を守れ」


「相手は魔物一体のみだ囲んで対応しろ!」


と言う声と共に重い打撃音や悲鳴が聞こえ始めたところで警備の兵士が


「辺境伯様から避難ください!例のオーガと思われる魔物が前方で暴れております我々が時間を稼ぐ間に後方へ!」


と聞き迫る進言だったが辺境伯は


「こんな時こその貴族であろう。私の剣を持ってこい。」


と言いつつ馬車の外に飛び出した。


それを見た俺は改めて辺境伯の人となりに感心したがこの人物をここで危険に晒すのはもったいないと思い馬車から出ると


「辺境伯!、ここは俺に働かせてもらえませんか辺境伯様は人民の非難をお願いします。」


と言うと


「男爵殿出来るのか?」


と言う問いに大きく頷くと


「分かった存分に働くが良い、後方は私が守ろう」


と言うと兵士に次々と指揮を始めた。


俺はそれを後ろに聞きながら前方で冒険者が全滅しかかっている状況に


「冒険者よ怪我人を後ろに連れてゆけ、俺がオーガを倒す」


と叫びながら収納魔法から取り出した神様からの剣を手に持ちオーガの目前に躍り出た。



 俺の魔力を感じたかオーガは一瞬動きを止めたが今まで以上の興奮具合で俺に襲いかかって来た。


体長5mほどの巨人と言える体躯そこから振り下ろされる手足の攻撃は一つでも当たれば人の身体などミンチ以外には存在できない事が軽く想像できる。


身体に似合わず素早い動きで俺に攻撃を仕掛ける、それを交わしながら手足に剣を這わせると紙を切る様にその硬い身を削り取る。


命の危険を悟ったオーガはこのまま戦うか逃げるか迷った隙を見逃すことなく俺は高く飛び込みすれ違いざまに首を切り落とす。


首を切り落とされてなおオーガは暫く手足を振り回していたが突然の様に仰向けに倒れ息絶えた。


 その瞬間周りから大きな声援が聞こえた!


周りの冒険者や辺境伯の兵士が声を上げていた様だ。


その後俺は傷ついた冒険者などに上級ポーションを与えて怪我からの回復を行いつつ命を落とした者たちを埋葬するなどの作業にあたり予備のマジックバッグにオーガの死体を収納し王都に向け再出発した。



「流石男爵殿先の戦い王国の騎士団長並みかそれ以上の腕と見た。


今回の討伐は大いに王国の力を民に示す事ができたと考える、私からも感謝をする」


と感謝を述べる辺境伯に俺は


「いや、俺は辺境伯の貴族らしい態度と使命感に感銘しただけです。


王国の憂いを収める事ができて良かったと思います。」


と答えて王都に意識を飛ばした。


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