第6話 日本の匂いがする薬師店

ーー 時は戻って カリンの店にて




「お邪魔します。店主のカリン様はいらっしゃいますか?」


と声かける俺の顔を覚えていた店員が


「この前はありがとうございました。本日は店主に御用ですかお約束はありますか?」


と丁寧に聞かれ


「いや、約束はないけれどギルドでこちらが依頼している魔物素材の依頼を、達成できそうなので直接会いにきたんです。話だけでも通してもらえませんか?」


と言うと

「かしこまりましたしばらくお待ちください。」

と言いおき奥に下がった。




暫くすると先程の店員が


「どうぞこちらに。」


と店の奥を案内するのに従い奥に行くとそこは商談するような部屋になってた。


部屋の奥の机に座っていたカリン様は立ち上がりながら俺に席を勧めた。


「この前は店に大きな被害が出るのを防いでくださったそうで、知らないとはいえありがとうございました。」


と頭を下げ「それで本日は?」と続けた


「ええ、こちらで貴重な素材をギルドに依頼していると聞いて。


ちょうど俺はいくつかの素材を持っていたので、条件次第ではお安く譲ろうかなと思いまして。」


と言うと、


「それは本当かえ、何をどの位持っておるんじゃ?」


と食い付き気味に聞いてきたので


「その前に一つ教えてください。患者の数と病状を。」


と言うと急に慎重な表情に変わるカリン様、


「それを知ってどうしようと言うのじゃ。」


と問う


「何興味本位ですが、ただ俺のスキルに叡智というものがあって結構物知りなんですよ。


だからひょっとしたら素材だけではなくて治療または創薬に協力できるかなと思って。」


そう答えると


「叡智!本当に叡智のスキルがそしてそのレベルはいくらじゃ?」


と聞いてきた


「叡智のレベル?・・俺の叡智にはレベルは無いですよ。」


と答えるとそれこそ驚きの顔で


「レベルの無い叡智のスキル・・・信じられん・・が、


それなら今から言う症状の治療方法または特効薬を調べてみてくれ。」


と言いつつ患者の年齢、性別、症状それと今までの臨床結果と対処療法を伝えてくれた。


「分かりました、その病名はカカリス病。


カカリスと呼ばれる魔物の毒を少量づつ飲ませるとそのような症状を見せます。


そして内臓が石化し始め心臓又は肺に至った時点で死にます。」


「ただ、治療魔法レベル8かエリクサーの服用で完治します。」


と答えると


「やはりその病気か、それならもう手の打ちようは無い。残念だ。」


とカリン様は肩を震わせ涙しはじめた、俺は


「どうしてガッカリしてるんですか?病名も治療方法も分かったのに。」


と当然のように聞く。するとカリン様はあきれたものを見るような目で俺を見ていたが。


突然顔色を変えて


「まさかお主、直せると言うのか?」


と言うので頷いて見せると


「エリクサーを持っているのか?」


と聞くので


「いいえ持ってませんよ。」


と言い切るとやっぱりかと肩を落としたので


「治療魔法8で良いんでしょ?出来ますよ俺。」


と答えると真っ赤になって


「冗談で済ませられない話だよ。


 人はレベル5までしか達することは出来ないレベル6~10は御伽噺の話なんだよ。」


と机を叩いて怒りを表したが


「そんな怒っても俺の治療スキルはレベル9ですよ。」


と答えると


「まさか!本当なのかレベルの限界を突破したのか?」


と言うので


「そうですね、魔法ならMP2万を超えたところで1万ごとにレベルが上がりました。」


と答えると


「・・・お前のMPは5万を超えていると言うのか。」


の呟きに


「ええ、ギルドで聞けば教えてくれますよ。」


となんでも無いように答えると


「すぐにわしと一緒に辺境伯の屋敷に行ってくれんか?もうだいぶ症状が進行しておるのじゃ。」


と焦る姿に


「良いですよ、いきましょう。」


と答えカリン様の店の馬車で辺境伯の屋敷に向かった。





ーー ローカル辺境伯の屋敷



 早馬で知らされた情報に辺境伯は

「信じられん」


の言葉を繰り返していた、自分の家族


 ・妻


 ・娘


 ・息子


の3人が病に倒れて早1年。


最近では呼吸すら苦しそうでもうダメだと半ば諦めていた。


そんな中珍しい魔物の素材を持っている男の情報がもたらされたしかし、


病気が分からなければ完治は難しいと言われている幻のエリクサーでもなければ、


そんな時にまたしてもカリンから急報が


 ・病名とそれを治療できる男が見つかったすぐに向かう準備を


との伝言を受けた取るものも取らずに玄関先で到着を待つ辺境伯、そこに馬車が。



「待たせたな、ローカル辺境伯。こちらが治療できる男じゃ」


と昨日自分を自爆テロのような事件から救ってくれた若者がいた。


「え!彼が治療士?冒険者ではなかったのか?」


驚く辺境伯に俺は


「取り敢えず、手遅れになっても困るので患者の元へ」


と言って患者に会わせてくれるよう言うと


「そうだな」


と言いながら屋敷の中のある部屋に連れて行かれた。


そこには呼吸の弱々しい10歳くらいの男の子と13歳程の女の子が寝かされていた。


同じ病気のため同じ部屋で看病していたのだろう。


俺はすぐに全鑑定魔法で体の状況を確認する


 ・カカリス病重度 余命3日


 ・カカリス病重度 余命2日


2人とも危ないところであった。俺は辺境伯に


「2人とも余命2日と3日です俺が治療しても良いですね。」


と念押ししたすると苦悩の辺境伯はしっかりと俺の目を見て


「頼む」


と一言言った。



俺は治療魔法レベル8による完全治癒を発動。


眩しい光が部屋を包む光が収まると穏やかな顔で眠る2人の子供たちそしてすぐに


「他の患者は?」


の質問に辺境伯は


「こちらだ、妻も頼む。」


と隣の部屋に案内した。


 ・カカリス病重度 余命10日


こちらも危ないところだった。すぐに治療魔法を発動すると辺境伯の妻は目を開け。


辺境伯に


「辛さが嘘のように消えました。子供たちはどうですか?」


と子供らの心配をする妻に


「大丈夫だ、治療は間に合ったから安心しろ。」


と答えると涙を流し始めたので俺はそっと部屋を後にした。




 別室で控えていると患者を診てきたカリン様が


「ありがとうもう大丈夫じゃ完治しておる。」


と太鼓判を押してくれた。


なぜ俺がカリン様と心で呼んでいるかと言うと


 ・カリン=カモミュール エルフ  1203歳  HP15000 MP19000


と鑑定で知っていたからだ、お年寄りには敬意を払わなくては。



 うまい茶を頂いていると辺境伯が部屋に入ってきた。そして俺に頭を深々と下げ


「シルバー殿今回のこと本当にありがとう。どんなお礼でもしようなんなりと言ってくれ。」


と言う辺境伯に


「それではお言葉に甘えて・・・屋敷を買う許可をください。」


と言うと辺境伯とカリン様はしばらく無言の後


「屋敷が欲しいと言う意味か?」


と聞き返す辺境伯に


「屋敷を買いたいんですが辺境伯様の許可がいると言われ。なんでもここに近い区域なのだそうで許可もらえますか?」


と理由を言う俺の言葉に


「許可を・・それだけか。いやその屋敷私がシルバー殿の治療代の代わりに差し上げよう。」


と言うので


「それでは高すぎます、今回一切金も素材も使っておりません。許可だけで結構です。」


と言い切る俺に


「分かった、お礼はまた考えよう。どこでも許可を出そう。」


と言ってくれたので一筆書いてもらい宿に1人帰った。


もちろん辺境伯の馬車を出してもらって。



 残された辺境伯の屋敷の一室で辺境伯とカリンが話している。


「今回病名が判明したのは奴のスキルレベル無しの叡智のおかげじゃ。

そして原因も判明しておる、カカリスの毒を少量づつ飲まされた結果じゃ。

心当たりはあるかえ。」


と話をするカリン様に辺境伯は暫く考えていたが


「多分、給仕か料理人とかかりつけのカブト医師あたりが臭いな。

直ぐに拘束して調べよう」


と言うと執事を呼び何か指示していた。


話が済むと辺境伯が


「あの者はどういうものかわかるか?カリン様なら。」


それに答えるように


「分からぬ。しかし彼奴は人の限界を遥か上まで突き抜けておることだけは間違いない。古龍の人化した姿と言われれば、それはそれで納得できる。」


と言う答えに辺境伯が


「勇者ということは」


と問うと


「それはなかろう、ただそれ以上だとしか言えん。」


「それ以上と言われるか。神の使徒若しくは神そのもの!」


2人はそのまま考え込んでしまった。

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