第4話 冒険者としての実力

ーー キグナス王国の国境の城塞都市 シンカー 俺冒険者になる



 遠くに見えていた城塞都市の西門が、直ぐ近くに見えたところでスクナに聞いた。


「スクナ、街に入るのに何か必要なのかな?」


と聞くとスクナは


「多分、身分証かお金がいると思います。」


と答えた、身分証はないが金ならある・・・大丈夫だろう。




門の列に並んでいると門兵と思われる男に


「身分証を出せ。」


と言われた。そこで


「すみません身分証は持っていません。村がオークに襲われ逃げてきたので。」


と答えると


「そうか、それは大変だったな。それならそこの部屋で待っていてくれ。」


と直ぐ脇の小部屋を指されたので、3人でそこで待っていると違う兵士が来て。


「この魔道具に手を載せて名前と年齢を言うように。」


と水晶のような球が乗った箱を持ってきて俺が手を載せると。


「名前は?」


「シルバー」


「歳は?」


「16」


「犯罪歴は?」


「ありません」


「出身は?」


「日本」


「ニホン?」


それらを紙に書き取りながら


「よしいぞ次はお前だ」


とスクナにそしてカクナに同じ質問をして終わると


「金もっているか?1人銀貨1枚だ。


なければ仮り身分証を発行するから5日以内にお金を持ってきてくれ。


 それができなければ不法滞在になるから気をつけろ。」


と言うので、その場で銀貨3枚を支払い身分証を手に入れ街の中に入っていいった。



 この街の名は、シンカーと言いローカル辺境伯様が統治する城塞都市のようだ。


俺たちが歩いてきた森は「魔の森」と呼ばれる場所で魔物のスタンピードと隣国に備えるために辺境伯が統治していると言う話だ。



 街中は辺境とは思えぬほど人が多く賑やかだった。


俺は2人を連れて冒険者ギルドの建物を目指した。


叡智の情報でこの世界は手に職のないものは、冒険者として登録し仕事を受けてお金を稼ぐようだと分かっていたからだ。


道を聞きながら出店の食べ物を3人でつまみながらギルドの建物についた俺は。


2人を伴って中に入る。そこは不思議な建物だった。


 入り口から入ると広いホールがあり正面奥に受付の窓口が5つ、その横には買取カウンターのような場所がある。


左手の壁には依頼書の紙が貼り付けてあり、その前に何人かの冒険者と思われる男や女達が依頼書を吟味していた。


右手は食堂兼酒場で数員の冒険者が、食事をしたり酒を飲んだりしていた。



 俺たちは受付に向かい空いている受付で声をかけた。


「すみません。いま良いですか?」


と言うと、受付のお姉さんが顔を上げ。


「はいどうしました。登録ですか?依頼ですか?」


と尋ねるので


「登録しに来ました、それと素材の買取を。」


と答えると


「えーと、君だけで良いですよね。


 これに必要事項を書いてください。書けない場合は代書しますから教えてください。」


の問いに


「大丈夫です。」


と答え欄を埋めて


「これで良いですか?」


と確認をすると


「シルバー=グリンアース 16歳 人族で魔法が使える・・剣も使える・・・」


と小声で確認していたが顔を上げて俺を見ながら。


「これはね、本当んことを書くもので見栄や嘘はその後の生き死にに関わるのよ。」


と力説しながら「書き直して」と言うので


「本当のことですよ、確認すれば分かることでしょ。」


と答えると、


「そこまで言うならいいわ、これに手を載せて。」


と不思議魔道具を取り出し手を載せられた。


すると一瞬光ったと思うと1枚のカードが出来ていた。


「これにあなたの血を垂らして。」と言いながら小刀を差し出す受付嬢。


指先を切って血を垂らすと登録は終わり、そしてその内容を確認する受付嬢の顔が驚愕に歪んだ。



「・・・ちょ・・ちょっと待っててね。先輩!ヘルプ!」


と近くのお姉さんをよんで何事か話をしていたが、奥の部屋に小走りで行くとすぐに戻ってきた。


「お待たせしました。これがシルバー様のギルドカードです。


あとランクについてはF~Sまであるんですが、シルバー様はDランクからになります。


あとは依頼の達成率と昇格試験でランクが上がりますので。


・・・それと先程魔物の素材があると言われましたが持ってきていますか?」


と態度をすっかり変えて尋ねる受付嬢に。


「ここでは場所が狭いので・・・。」


と言い淀むと受付嬢の後ろに控えていたお姉さまが。


「買取カウンターの奥から裏に行く通路があります。


裏では大物を買い取っていますので、どうぞそちらにお越しください。」


と受け付けカウンターから出てきて案内し始めたのでその後についていった。




ーー 魔の森の魔物達



奥の扉を開けると血生臭い匂いが漂ってきた。


そこは魔物の解体などを行う場所のようで大きな倉庫という感じだった。


「どのくらいの場所があれば良いかしら。」


そのお姉さまは聞くので


「1度にどのくらい捌けるんですか?その量によりますが魔の森の魔物ですから。」


と答えると、お姉さまは手で俺を制し近くの職員に。


「主任を呼んできて。」


と伝えた。


すぐに恰幅の良い男性が現れ。


「どうした、カレン。その小僧がオレに用か。」


と言う男にカレンと呼ばれたお姉さまは


「魔の森の素材らしいの。かなりの量の。」


と伝えると男は「え!」


と言った後オレを見直し


「魔の森の何をもってきた?手ぶらじゃねえか・・・まさか収納持ち。」


その呟きにオレは


「そうだ。」


と答えながらワイバーンの首を取り出した。


1mほどもある嘴を付けたワイバーンの頭だ当然身体も含めると5〜7mは有にある。


すると


「ワイバーン!、まさか丸ごとか?」


の質問に


「いくつまで処理できるんだ?」


と問うオレの言葉に男とカレンは


「「幾つ!ワイバーンの素材をいくつも持ってきているて(の)。」」


と悲鳴のような声。


オレは指を立てながら数え出すと、3本立てたところで。


「そこまで!一回で処理できるのは3頭までだ、後は10日後でどうだ?大丈夫か?」


と男が言うので。


「分かった良いだろう、何色がいいんだ?」


の問いに男は「色?」とわからない顔をする


「ワイバーンは色で属性が違うだろ。オレの持ってきたのは赤と緑だ。」


と言うと「え!」と言う顔をしながらも


「どれでもいい。」


と答えるだけだったので、赤2つに緑1つを取り出すと小山ができていた。



カレンという職員が


「ワイバーン以外にも持ってきていののですか?」


と聞くので


「ああ、森を抜けるときに狩った魔物がかなりある。欲しいものがあるなら出すぞ。」


というと


「森を抜けた!・・・えーと。


 オークなっど持っておられれば少しばかり肉が品薄なので。」


と答えるカレン嬢の前にオークジェネラルの死骸を5つ取り出すと


「オーク・・・ジュエネラル!それも5体。」


「ありがとうございます。すぐに清算します。」


と言いながらオレらを別室に連れて行くと、お茶菓子でもてなし始めた。


するとそこにえらく柄の悪そうな顔に傷のある男が入ってきた。


オレを人睨みすると


「お前がシルバーとかいう小僧か。


誰に頼まれたか知らんが収納スキル持ちが強がっていい場所と、そうでない場所があることぐらい弁えろよ。」


というとそこに買い取り金を持ってきたカレン嬢に。


「買取額はその半分でいい。」


と言いつけ始めた。オロオロするカレン嬢が。


「ギルマス、シルバー様は代理できたわけではないと思います。


正規の金額で買い取らなければ、今後シルバー様からの素材の提供はなくなると思いますが。」


としっかりと言い切りオレに頭を下げた。


するとギルマスと呼ばれた男は。


「はー。カレンオレに意見する気か!小僧裏にこい!性根を叩き直してやる。」


と俺を引きずるように移動するのを見て、怖がるスクナとカクナに「大丈夫」と言い残し、男の後について裏の広場についていった。




ーー 俺の実力



ギルドの裏には、解体場と別に訓練場を兼ねた広場があり。ギルマスと呼ばれた男が


「好きなようにかかって来な!ワイバーンを倒すほどの男ならオレを倒すのも訳がなかろう。」


とオレを睨みつけるので


「倒せ?殺していいのか?」


と聞くと


「出来るものならやってみな。


その代わりお前も半殺しの覚悟はしておけよ。」


というので「それでは」と言って素直に歩いて近づくと顔を平手で叩いた。


するとギルマスは10mほど吹き飛び地面を転がり壁に当たって止まった。


そこにゆっくり歩いて行く俺。


やっとのことで起き上がるギルマス。


何が起きたのかわからないようだ。


 今度は前蹴りをかますとまたギルマスは、体をくの字に曲げて10mほど後ろに飛び地面にしこたま頭を打ち付ける。


ここに至ってギルマスは自分の過ちに初めて気づく。


「ま、まっ、待ってくれ!オレが勘違いしていた。許してくれ!」


土下座しながら謝り出したギルマスにオレは、火魔法のファイヤーボールを人大にして5つ浮かべると


「今度は魔法を味わってもらおう、その後は剣だ!」


という言葉を聞き終わるまえにギルマスは気を失った。


オレは後ろを振り返り、カレン嬢に


「大した怪我はしてないはずだ買取額に色をつけてもらおうか。」


というと青い顔をした彼女は「分かりました」というと。


先程の部屋に迷惑料込みの買取額を出してきたので受け取ると。


「この街で一番いい宿と信頼できる不動産屋を紹介して欲しい。」


というと丁寧に道順が描かれた紙を2枚持ってきて渡してくれた。



ギルドを出てから宿に向かい10日ほどの連泊を前金で払い部屋に入った。


部屋は5人ほどが休める部屋で1泊金貨3枚の部屋だった。


何かと目をつけられる可能性を考え連れの2人と同じ部屋にして、食事も部屋食にしてもらうことにした。



その頃冒険者ギルドのギルマスの執務室のソファーの上で目を覚ました。


ギルマスのゴードンはしばらく今の状況が理解できなかった。そこにカレン嬢が現れ


「ギルマス調子はどうですか?骨には異常がないと言われてましたが。」


の言葉で冒険者になりたての小僧に殺されかけたことを思い出した。


「カレン!あいつは何者だ。」


という質問になんと答えようか迷ったカレンは


「受付のアリスが手続きしました。


 その時レベルが70、HP(生命力) 35500 MP(魔力) 58500で口頭ですが魔法も剣も使えると申告しています。」


「そして彼は魔の森を抜けてきたと言っています。


 まだ沢山のワイバーン他強力な魔物を所持しているのは確実です。


 彼を怒らせるのはこのシンカーの街を滅ぼすことと同じだと思います。」


という言葉を聞いてギルマスは


「レベル70・・・H Pが3万越えMPは5万越え・・・。


 オレが気を失っている間に何か言っていたか?」


慌てて聞くギルマスにカレン嬢は


「いいえ、ギルマスのことは気にもしていませんでしたが。


迷惑料は払えと言われたので、1.5倍を支払いました。問題ないですよね。」


という念押しにギルマスも


「分かった、よくやった今後もギルドに来るようならカレンが専属で対応しろいいな。」


と命令してどこかに出ていった。




残されたカレンは


「他の冒険者や職員にもそれとなく話をしておこうかしら・・・気が重いな。」


と呟きながら職員価格で手に入れたオークジェネラルの肉を抱えて家路につくのであった。


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