第36話 ゲーマーな地雷系女子の美玲ちゃん①

 次の日の朝。


「ん……あ……?」


 気が付いたら寝てしまっていたようだ。 目が覚めるとベッドには俺だけしかいなかった。 どうやら姫子は先に起きてベッドから出て行ったようだ。


「ふぁ……」


 俺は欠伸をしながらベッドを出て居間の方に歩いて行った。 すると姫子は昨日と同じくちょこんと正座をしながらマグカップでコーヒーを入れて飲んでいた。


「あ、おはよう姫子」

「っ! お、おはよ……」


 姫子は俺を見てビクっとなっていたけど、でもすぐに何も無かったかのようにいつも通りの平然とした態度で俺に接してきた。


「あ、アンタもコーヒー飲む?」

「あぁ、飲みたいな」

「ん、わかった。 じゃあ入れておくから早く顔洗ってきなさいよ」

「あぁ、ありがと姫子。 じゃあちょっと洗面所の方行ってくるわ」


 姫子にそう言われたので、俺は感謝を伝えて洗面所の方へと向かって行った。 うーん、何だかいつもの姫子と比べたら若干優しくなってる気がするなぁ。 いつもはツンデレ度9:1くらいの割合で常にキレてたのに、今日の朝の雰囲気は7:3くらいに感じた。 いやまぁ時間が経ったらいつも通りのツンデレ度に戻るんだろうけどさ。


 でもせっかく姫子が少しだけデレてくれてるんだし、朝にもえっちぃちょっかいをかけてみ……いや、流石に朝からそんな事したら普通に怒られそうだからやっぱり自重しておこう。


 という事で今日の朝はお互い登校する時間になるまで、一緒に情報番組を見ながら朝ご飯をのんびりと食べていった。


◇◇◇◇


 そしてその日の昼休み。


「ふぁあ……」


 俺は欠伸をしながら廊下をとぼとぼと歩いていた。 何だかんだ言って昨日は姫子のおっぱいを揉みのに夢中になりすぎて寝るのが遅くなってしまった。 おかげで今日は学校に到着してからもずっと欠伸が止まらなかった。


 いやそれにしても姫子がゲーム滅茶苦茶上手くなってる事には驚いてしまった。 こちらの世界では男性向けのエロコンテンツという最高の娯楽が無くなってしまったので、今の俺に残された娯楽はもうゲームしかないっていうのに……それで姫子に負けるというのは何だか癪だな。 うーん、これからはゲームを上達させるために少しは特訓とかしていこうかな。


「ふぁあ……とりあえず眠気覚ましにコーヒーでも買うかな……」


 という事で俺はコーヒーを買うために自販機に向かって歩いている所だった。 しかしその廊下を歩いている途中で突然、俺は後ろから声をかけられた。


「ねぇねぇー、そこのおにーさーん!」

「……うん?」


 それは少し甘ったるい口調で喋る女子の声だった。 俺は誰だろうと思いながら後ろを振り返ってみた。 するとそこに立っていたのは……


「ねぇねぇ、そこのおにーさーんさぁ! 良かったら遊んでいかないー??」

「えっ?」


 そこにはちょっと奇抜な見た目をしている女子生徒が立っていた。 身長はおそらく150センチ台でかなりほっそりとしたお人形さんみたいな体型だった。 髪型は黒髪ショートでぱつっと直線に整えられた髪型にしていた。 確かそれは姫カットと呼ばれている髪型だと思う。


 さらに目元の涙袋をかなり強調しているメイクと、人形のような青白い肌がとても特徴的な女子生徒だった。 それと手にはピンク色と黒色を基調とした可愛らしいネイルが施されており、耳には沢山のピアスが空いていた。


(え、誰この子?? 俺の知り合いにこんな女子いたっけ??)


 そんな感じのいわゆる“地雷系ファッション”を全身に纏っている女の子が俺の前に立っていたんだけど、でも俺にはその女子との面識はなかった。 とりあえず第一印象は地雷系ファッションがめっちゃ似合ってる子だなって思ったんだけど……でもこれ完全に校則違反しまくっているんだけど大丈夫なのかこの子??


「お、良かったぁ、お兄さんこっち見てくれたぁ。 はい、じゃあこれ、良かったらどうぞー」

「えっ? あ、ありがとう……?」


 俺は訳も分からずその女子の事をじっと眺めていたら、その女子は嬉しそうにしながらこちらに近づいてきてチラシのような物を俺に手渡してきた。


「え、えぇっと、なになに……“e-sports部”?」


 という事で俺は手渡されたそのチラシに目を通してみたんだけど、そこには“e-sports部 部員大募集!”と大きな文字で書かれていた。


「え? なにこれ? 部活勧誘のチラシ?」

「んーそうそう、先月から新しく出来た部活なんだぁ。 初心者大歓迎だし良かった遊ぼうよー」


 どうやらこの女子は部活勧誘のチラシ配りをしている所のようだ。 という事はこの女子が俺を呼び止めたのはただの偶然か。 どうりでいくら考えてもこの女子の事を思い出せないわけだよな。


(それにしてもこんな部活もいつの間にか出来たんだな)


 ゲーム好きな俺としてはかなり興味がそそられる部活だ。 どんな活動をしてるのかちょっと聞いてみようかな?


「ってかさぁ、お兄さんどうしたのー? 目元すっごいクマだよぉ?? 何だかめっちゃ疲れてそうじゃんー」

「え? あ、あぁ、えっと……いや実は昨日友達とゲームしててさ、おかげで今日はずっと眠いんだ、あはは」

「うぇっw 何それヤバすぎじゃんww ってか、え!? お兄さんもゲームやる人なのぉ?? うわー、それはすっごい奇跡だねー!」


 俺は寝不足の原因をちょっとだけ誤魔化してそう伝えると、女の子はケラケラと笑いながらも俺がゲームをやっている事にはかなり驚いた表情を見せてきた。 先日しろねこさんが言ってたけど、ゲームやってる層は女子>>男子らしいから、もしかしたら驚いた反応とか見してくれるかなってちょっとだけ期待したんだけど、案の定予想通りの反応を見してくれた。


「あっ、じゃあさじゃあさ、良かったらお兄さんも“e-sports部”に入ろうよー! 出来たばっかりで部員少ないけど和気あいあいと楽しくゲーム出来るよー??」

「うーん、それは確かにめっちゃ興味あるなぁ……あ、ちなみにだけど部員ってどれくらいいるの? あと男女の割合とかも知りたいんだけど」

「あぁ、うん、いいよー。 部活は出来たばっかりだから部員はボク含めて3人しかいないよ。 んで、部員に関してはもれなく全員女子部員ですww」

「あ、やっぱり全員女子部員なんだなー」

「あーやっぱりそこ気になっちゃうよねー。 うーん、やっぱり女子しかいない部活に入るのなんて男子からしたら絶対に嫌だよねー?」

「え、いや全然? そんな事ないけど?」

「え、そうなのー?? お兄さん意外と照れたりとかしないタイプなのかなー?」

「いやいや、普通に女子ばっかりの部屋だったら緊張するよ。 でもゲームを一緒にする友達だったら別に男女の違いとか関係ないでしょー」

「おー、お兄さんめっちゃ良い事言うねー! うん、そんなお兄さんには是非ともこの部活に入って貰いたいなー!」


 何だか俺は良い事を言った風だったけど、単純に俺は沢山の女の子に囲まれた環境でゲームしたいという欲からそう言っただけであった。 まぁそんな本音を伝える気はさらさらないけど。

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