第18話 えっちぃ話を大衆の場でしてたらそうなるよね②

「あ、ごめん。 この後は部活の方に行く予定だから、今日は先に帰っていいよ」

「わかった。 じゃあまた明日な、雄二」

「うん、また明日ね」


 そう言って雄二は教室から部室棟の方へと向かって行った。 雄二を見送った後はそのまま自分の席に戻り、俺も帰る準備を始めた。 今日は一人で帰るか。


(いや、もし鹿島さんがまだ残ってるようなら声でもかけてみるかな?)


 俺はそう思って教室をキョロキョロと見渡してみたが、鹿島さんの姿は無かった。 どうやら今日はもう帰ったようだ。


(ちょっと遅かったかぁ。 まぁしょうがないか)


 俺は気持ちを切り替え、今日はさっさと家に帰る事にした。 ということで早く帰るためにも机の中に入れていた教科書類を鞄の中に押し込めていった。


「ねぇ、倉橋君?」


 そんな時、唐突に後ろから誰かに声をかけられた。 俺は誰だろうと思って後ろを振り返ってみるとそこにいたのは……


「え? って、さ、桜井さん?」


 俺の後ろにいたのは同じクラスの女子生徒である桜井明日香だった。 身長は160センチくらいの細い体型の女子で、明るい金髪ロングヘアに化粧とネイルが特徴的な女子……ってかまぁ一言で言えばギャルの女の子だ。


 ちなみに元の世界で桜井さんとの面識はほぼ無い。 だって桜井さんはスクールカースト上位のパリピギャルなのに対して、俺は平々凡々なただの童貞だからな。 接点が無さすぎて同じクラスでも話す事なんてほぼ無かったわけだし。


 そんなギャルの桜井さんが話しかけてきたので俺は普通に驚いてしまった、というわけだ。 一体何のようだろ?


「どうしたの、桜井さん?」

「んー、実はさー、倉橋君と少しお喋りがしたいなって思ってさ」

「え? 俺と?」


 何か俺に用事があるのかなって思ったんだけど……何か思ってたのと違った。 俺と話しがしたいってどういう事だろう?


「いや話しをするのは別にいいんだけど……あ、でも、俺って桜井さんとそんなに頻繁に話をする仲だったっけ?」


 とりあえず当然の疑問を桜井さんにぶつけてみる。 桜井さんとは元の世界なら接点無いのだが、逆転世界だと接点あるのかな?


「いやー? こうやって話をするの初めてかもね、あはは」

「え? あ、そうだよね」


 やっぱりこちらの世界でも桜井さんとの接点は無いようだ。 じゃあ、何で桜井さんは急に俺と話したいって思ったんだろう?


「あのさー、倉橋君。 お昼休みにさ、知佳と何か話をしてたよね?」

「知佳……? あ、鹿島さんの事か」


 桜井さんに“知佳”という女子についての事を聞かれた。 一瞬誰の事かわからなかったけど、すぐに思い出した。 “知佳”とは鹿島さんの名前だ。


「うんそうそう。 それでさ、倉橋君は知佳とどんな事を喋ってたのかなー?」

「え? うーん、そうだなぁ……」


 どうやら桜井さんは、お昼休みの俺と鹿島さんのやり取りが気になっているようだ。 でもなんでそんな事を気にしてるんだろ?


 それに鹿島さんの事を“知佳”と名前で呼んでいる辺り、鹿島さんとの仲が良いのかな? まぁそこら辺については今は別にいっか。


「まぁ普通に今度遊びに行こうっていう話をしてただけだよ」


 何て答えるか少しだけ考えたけど……でも桜井さんの意図が全くわからないので、俺は無難な回答をする事にした。 それにこの回答も別に嘘じゃないからな。


「あ、そうなんだね、一緒に遊びに行くなんていいなー。 ちなみに倉橋君って知佳と付き合ってるの?」

「え? 別に付き合ってないけど?」


 桜井さんは笑いながら俺にそう聞いてきた。 んー、俺と鹿島さんが付き合ってるのかどうかを気にしてるって事なのかな。 でも何で鹿島さんと付き合ってるって思ったんだろ? 未だに桜井さんの質問の意図がよくわからない。


「へぇ、そうなんだ。 え? じゃあさ……倉橋君は付き合ってない女と“ラブホ”に行っちゃうような子なんだねー」

「……え?」


 鹿島さんはケラケラと笑いながらそんな事を言ってきた。 俺はビックリして桜井さんに聞き返してみた。


「どうしてそれを?」

「んー、普通に盗み聞きしちゃった。 だって知佳が楽しそうに話してるし気になるじゃん?」


 どうやら普通に盗み聞きされただけのようだ。 いやまぁでもそうだよな。 大衆の場でエロ話してた時点で誰かしらに気が付かれる可能性はあるよな。


「いやでもさー、あんなに真面目で優等生な倉橋君が、まさかエロい事に興味があるなんてねぇ」

「え? あ、あぁそっか、そういや真面目だったな俺」

「しかもそんな倉橋君がさぁ、彼女でも無い女をラブホに誘うとかさ……え、それって良くない事だよねぇ?」

「まぁ、それはそうだよな」


 まさかここで正論の説教が始まるとは思ってなかったので、俺はグゥの音も出せなかった。 まぁ非は俺にあるので、ここは素直に桜井さんの説教を聞くしかないか。


「あーあ、真面目で優等生な倉橋君がさぁ……実際にはド変態な淫乱な男子だって皆に知られちゃったら困るんじゃないかなー?」

「うん、そうだよな……って、はぁっ?」


 桜井さんの説教を素直に聞こうかなと思っていたんだけど、いきなり流れが変わったんだけど? しかもこれってなんだか薄い本でよく見るシチュエーションだな。


 真面目な女子生徒が教室内でエチな事してたら不良に見つかって脅されて性奴隷にされる的なやつかな? ……え、何それえっちじゃん!

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