第17話 えっちぃ話を大衆の場でしてたらそうなるよね①

 今日の授業は全て終わり、今はようやく放課後になったところだ。 んー、何だか今日は色々な事があった一日だなぁ。


「んぁあー……」


 俺は背伸びをしながら椅子から立ち上がり、近くの席に座っている雄二に話しかけた。


「なぁ雄二」

「うん、どうしたの葵君?」


 雄二は学生鞄に荷物を詰め込んでる最中だ。 普通に帰る支度をしてるようだ。


「雄二って彼女いるか?」

「え、どうしたの急に? まぁいないけどさ?」


 俺は雄二に向かってそう聞いてみた。 雄二は鞄に荷物を詰める作業を一旦止めて、怪訝そうな顔をしながら俺の顔を見てきた。


「なるほど。 んじゃあさ、彼女とか欲しかったりはしないのか?」

「うーん、そりゃあ僕も欲しいとは思うよ」

「あ、そうなんだな」


 なるほど、そこはちゃんと元の世界と同じなんだな。 そしてこの逆転世界でも雄二に彼女がいない事がわかって俺は一安心した。 うん、これならきっと、こちらの世界の雄二も童貞だな、間違いない。


「ちなみに雄二は付き合うとしたらどんな女子が良いとかあるか?」

「そうだなぁ……趣味とか話が合う子だったら嬉しいかな」

「ふぅん? ちなみに見た目の好みとかは無いのか?」

「え? うーんと……見た目に関しては別に何も気にしないかな。 やっぱり外見よりも中身の方が大事だからね!」

「あ、な、なるほどな……」


(……なにこれ、気持ち悪いんだけど)


 雄二の好みが元の世界と比べたら全く違っていて俺は酷く驚いた。 元の世界の雄二にもこれと同じ質問をした事があるんだけど……その時に返ってきた答えは「巨乳でエロい女」としか答えてなかったからな。


(そう考えるとこちらの世界の雄二は誠実な男子になってるのかな? い、いや誠実な雄二とかどう考えても気持ち悪いんだけど……)


 でも……うん、そうだよな。 元の世界の鹿島さんの性格はどんな感じか知らないけど……でも流石に大衆の場で女子友達とエロ話をするような子では決して無かったからな。


 そう考えると、この逆転世界は友人付き合いとか大まかな部分は元の世界と同じなのだろう。 でも個人の趣味や性格、思考などは元の世界と比べると、皆結構変化しているのかもしれない。 なるほど、そういう所も勉強になるな。


(……ん? じゃあ姫子の性格も実は変わってるのかな?)


 俺の幼馴染は元の世界だとかなり怖い性格をしてたからな……こっちの姫子はもう少しマイルドな性格になっててくれないかなぁ。


 でも昨日姫子と話をした時はいつもと全く変わらない気がしたけど……まぁ今度会った時にもう少しだけ探ってみるか? いや普通に怖いけど。


(うーん、でもなぁ……)


そんな事を考えていた俺だったのだが、それでもやっぱり誠実な雄二は気持ち悪くて嫌なので、俺はもう少し踏み込んだ質問を雄二にぶつけてみた。


「ちなみにさ、そうだなぁ……例えば、エロい女子とかはどうだ? 好きか? それとも嫌いか?」

「え、流石にエッチな女子は無理だけど」

「あ、そうなん?」


 それでも雄二の回答は即答で無理だと突っぱねられてしまった。


「うん。 同学年でもさ、下ネタばっかりいう女子って多いじゃない? 僕そういうの子供っぽく感じるからすっごい嫌なんだよね」

「あ、あー、なるほど?」

「うん。 だからさ、もし誰かと付き合う事があるとしたら、僕はもっと大人な女性の方がいいかなぁ。 同年代の女子なんて子供にしか見えないし」


 俺の友人(童貞)は何とも大人びた意見を言ってきた。 そして下ネタばかり言ってる子って……つまりは鹿島さんみたいな女子の事だよな。 あれ? もしかして鹿島さんって男子側からの評判って結構悪いのか? それってつまり……俺にとってチャンスじゃねぇのか??


(うん、それならやっぱり俺が鹿島さんの都合の良い男になってあげないとだな!)


 鹿島さんはめっちゃ可愛いのに、この貞操逆転世界だと他の野郎からの人気が全然無いだなんて……こんなの童貞な俺からしたらチャンスすぎる! やはりこの世界は俺にとって天国なのかもしれないな。

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