第14話 愛嬌のある後輩をじっと観察してみる②
―― キーンコーンカーンコーン……
「はぁ……やっと終わった……」
ようやく数学の授業が終わった。 寝落ちせずになんとか授業を聞き終えたのは奇跡だと思う。 日笠のすらっとしたエチな足に感謝だな。
「ふぁ……でもやっぱねみぃな……」
眠気は少しだけ飛んだけど、やっぱりそれでも眠い事には変わりない。
「葵君、凄く眠たそうだね」
「あぁ、まぁちょっとな……」
近くに席に座っている雄二からそう話しかけられた。
「何か飲み物とか買ってきたらどう?」
「んー、そうしよっかな。 ちょっと自販機の所行ってくるわ。 雄二も何か飲むか? ついでに買ってくるけど」
「いや、僕は大丈夫だよ。 行ってらっしゃい」
「ん、わかった」
俺は雄二にそう言い終えてから席を立ちあがり、外の廊下にある自販機へと歩き始めた。
◇◇◇◇
自販機前。
「あ、先輩!」
「んー?」
俺は自販機で買った紙パックのコーヒー牛乳にストローを差して飲んでいると、唐突に声をかけられた。 声をかけられた方向に振り返ってみると、体操服を着た日笠がこちらに向かってパタパタと走ってきた。
そういやこの自販機がある廊下ってグラウンドから更衣室に行く途中にあるんだったな。
「おう、日笠じゃん。 お疲れさん」
「はい、先輩もお疲れさまです」
日笠は俺に向かって軽くお辞儀をしてきたんだけど、体育の授業終わりだったからか、日笠の額には少しだけ汗が流れていた。
「体育で疲れてんだし、そんな走ってこっちに来なくても別にいいんだぞ」
「で、でも、先輩と少しでも話したいからつい……」
俺がそういうと日笠はちょっとだけしょんぼりした表情になった。
(うーん、こっちの日笠はなんというか……)
こちらの世界の日笠は、ワンコ属性というか、弟属性(妹?)みたいなのが強くなってるような? いや元の世界でも素直で真面目なタイプの子だったけど、それ以上に素直で従順な子になってる気がする。
「でも体育の授業頑張ってたな。 心の中で日笠の事を応援してたよ」
「あ、は、はい、ありがとうございます! あ、そういえば先輩。 さっき目が合いましたよね?」
「あぁ、日笠の走る所ずっと眺めてたわ。 走るのメッチャ早くてカッコ良かったぞ」
「え? そ、そうですか? それなら良かったです、えへへ……」
俺は素直な気持ちで日笠にそう言うと、日笠はしょぼんとした顔から一転して照れたような顔をしながらもはにかんだ笑顔をこちらに向けてきた。 こうやって純粋に喜んでくれるのは、俺としても嬉しい気持ちになる。
そしてこう純粋で素直な所を見してくれる日笠には色々と良くしてあげたいなって思うし、そして何だかついつい甘やかしてあげたくなる気持ちにもなる。
(んー、なるほど、これが母性本能をくすぐ……いや、俺は男だから父性本能をくすぐるってやつかな?)
俺は目を閉じながら腕を組んでそんな事を考えていた。 すると、日笠は何だか怪訝そうな顔でこちらを見てきた。
「せ、先輩? ど、どうかしましたか?」
「ん? あぁ、いや別に何でもないよ」
ということで“都合の良い男”になると決めた俺は日笠に対しての方針を決めた。 いやもう父性本能に従って日笠の事は色々と甘やかしてみようかなと。 元の世界で言う所の“お姉ちゃん属性”ってやつかな? まぁそんな感じで日笠とは接してみようと思う。
「よし、せっかくだし、頑張った後輩に飲み物奢ってやるよ」
「え、いいんですか? ありがとうございます!」
「おう、何飲みたいよ? ……ふぁあ……」
「えっと、じゃあ……って先輩すごい欠伸ですね?」
という事で日笠に何か飲み物を奢ろうと思ったんだけど、その時にまた大きな欠伸をしてしまった。
「あぁ、ちょっと昨日夜更かししちゃってね」
「あ、そうなんですね。 何か面白いテレビでもやってたんですか?」
「いや、そうじゃないんだけど、あ……」
「え?」
流石に部活の後輩に対してエロ動画やら画像を探してたら朝になっていた……なんて言うのはあまりにも恥ずかしすぎるから言うのを躊躇おうとしたんだけど、
(でも昨日、日笠と喋った感じだと……)
昨日話した感じだけど、日笠はエロに関してはひた隠しにしたいタイプの子だった(通称ムッツリドスケベタイプ)
だから俺がそういう事を恥ずかしがってしまうと、日笠に対してエチな展開に発展する事なんてないじゃないか?
(……うん、そうだよなぁ……)
きっと日笠の事をひたすら甘やかし続けていたとしても、それだけじゃエチな展開は望めないよな。 だってムッツリスケベタイプは自分の力でエチの展開に持っていこうなんて絶対にしないからさ(あくまでも童貞男子高校生の意見です)
だから日笠に対しては“お姉ちゃん属性”だけでは駄目だ……“エッチなお姉ちゃん属性”にならないと日笠は動いてくれないと思う。
(……よし、それじゃあ頑張りますか!)
ということで俺は日笠への接し方についての方針を改めて決めたのであった。
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