第10話 俺は決意する

 とりあえず今日はもう時間も遅いという事で姫子には無理矢理帰ってもらった。 帰り際に「次会う時にじっくり聞くからね!!」と言われてしまったけど……今は気にしない事にする。


「……まぁいいや、そんな事よりパソコンの中身だ!」


 俺はずっと気になっていたパソコンを立ち上げてみた。 そしてその中に入っていた秘密のフォルダを開いてみた。


「あ、なんだ……ちゃんと残ってるじゃん! 良かった……!」


 その秘密のフォルダの中には今まで購入してきた動画やら電子書籍などが入っていた。 とりあえず確認のために電子書籍(エロ本)を一つ選択してクリックしてみた。


「……なっ!?」


 それをクリックした瞬間俺は驚愕した……内容があまりにも違っていたからだ。 俺が開いた元の漫画は学園物のイチャラブエロ漫画だったはずだ。


 なのに俺が今開いた漫画はガチムチな男性が主人公の社会人エロ漫画になっていた。 筋肉溢れるガチムチの男性が主人公になっていて、相手役の女性は顔とか体はほぼ描かれておらず、男性の肉体美やアソコなどをとても丁寧に描かれた作品になっていた。


「な、なんじゃこりゃ!?」


 俺は続いて動画ファイルを開いてみた。 すると最初は演者さんによるインタビューが流れ始めた。 でもその演者さんは誰がどう見ても女性ではなくて、20代のイケメン風男性がインタビューに答えていた。いや俺が購入したのは人気女優のエロビデオだったはずなんだけど!?


「……え!? そ、そんな馬鹿な!?」


 その後シークバーをどれだけ動かしてもメインはそのイケメン男性で、相手役の女性が出てきたと思ったらその女性の顔は全く見えないようになっていた。 流石にこれをオカズにして抜く事は出来ないって……


「ほ、他のファイルはどうなってるんだ!?」


 俺は急いで他のファイルも全て調べていったんだけど……内容はどれも同じ感じだった。 俺が購入した作品はどれも男性向けではなく、女性向けのコンテンツになっていた。


 俺はそれらの動画を閉じて、一旦深呼吸をしながら落ち着こうとした。


 すーはーすーは……うん!


「……うんわかった、やっぱりこれは夢だ。 早く寝よう」


 落ち着こうとしたけど無理でした。 もう俺は考える事を全て放棄した。 俺はパソコンを開いたままの状態でベッドの中に入りこみ、そのまま眠りについた。


◇◇◇◇


 ―― チュンチュン……


 朝。 俺は目を覚ますと、すぐにベッドから飛び降りてそのままパソコンの画面を覗きこんだ。 でも秘密フォルダに入っていたファイルは……やはり全て昨日見たのと同じ内容だった。


「い、いや……この夢ヤバすぎるって……い、いや本当に夢なのか?」


 一度寝て起きたのに、ここは逆転世界のままだった……つまりそれって……?


「いやこれが夢か現実かなんて事はもうどうでもいいわ! 今の問題点はそこじゃないから!」


 そう、これが夢か現実なのかなんてもうどうでもいいんだ。 そんな事よりも今後のオカズ不足をどうやって解決させるかの方が圧倒的に問題なんだからな! 思春期エロ男子の性欲舐めんなよ!


「頼む頼む頼む……!」


 俺は祈りながら男性向けのエロコンテンツについて調べていったんだけど……どうやらこの逆転世界では男がオ〇ニーのをするためのオカズは圧倒的に供給不足のようだった……


「え……待ってよ、これ……俺死んじゃうって……」


 もうショックすぎてヤバイんだけど。 これから俺はどうやって抜けばいいんだ? この状況は童貞思春期男子に効きすぎるって! 死ねって言ってるようなもんじゃん!


「こ、この世界の男性は性欲無くなってるの? いやそんな事は無いよな……」


 でもこんな感じだと俺の周りにいる男子がそういうエロコンテンツを所持してるとは思えない。 昨日話した感じ雄二とかも絶対に持ってないだろうな。


「ど、どうすれば……鹿島さんに土下座して男の俺でも使用出来そうなエロ本持ってないか聞いてみるか?」


 鹿島さんは俺と同じ思春期拗らせたエロ高校生だから、きっと彼女もエロ動画や漫画は沢山持っているはずだ。


 こうなったら鹿島さんに俺でも使えそうなオカズがあれば提供してもらうしか……あ!


「……いや待てよ?」


 そんな事を思っていた時、ふと俺に天啓が閃いた。 いやこれこそ発想を逆転すればいいじゃんか!


「いやそうだよ! 供給が無いんなら自分で手に入れればいいだけじゃん!」


 鹿島さんに言われたけど、本当にビッチ男子を目指してみるとかどうだろう? 女子に都合の良い男子になっちゃえば全て解決するんじゃないか? いやでも……


「……いやでも俺童貞だしなぁ。 そりゃあ知識はめっっちゃあるけど経験が全く無いのにさ、それでどうやって都合の良い男になるんだ?」


 俺は頭を傾げながら自問自答を繰り返す。 そして延々と悩み続けた結果……とある結論にたどり着いた。


「……うん、よし! 考えるのやめよう!!」


 俺は考えるのをやめるという結論に至った。 そもそもこの世界が夢なのか現実なのかよくわからんし、いちいち考えてもやってられない。 とりあえず俺が今わかってる事だけをまとめてみる。


 1つ、何かわからんけど男女の貞操観念が逆転してる。

 2つ、俺のパソコンの秘蔵データが全て吹っ飛んでる。


 以上、この2点だ。 まとめる程じゃねぇや。


 まぁでもさ、今日の鹿島さんとか後輩の日笠を見てたら何なくだけど、多少は俺の事を意識してくれてるっぽいじゃん。


 それなら後は俺の頑張り次第でさ……色々と楽しい事が起きるんじゃねぇのかな?


「なら……頑張ってみるか……!」


 都合の良い男の成り方なんて童貞の俺にはわからない。 でもそこにはきっと全男子の夢と希望が詰まっているはずなんだ。 だからそれを目指そうとしない男なんていねぇよな!


 俺は眠気覚ましに両手で顔をピシピシと叩いてから立ち上がった。 そして決意を表明するために大きな声でこう言った。


「……よし! 都合の良い男に俺はなるっ!」


 全くカッコ良くない表明だと思うけど別に良いのさ。 俺は全ムッツリ男子達の夢と希望を叶えるためだけに頑張るのだから!

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