第9話 幼馴染の白雪姫③
「え? い、いやです」
「は、はぁ? どうしてよ?」
そんな怖すぎる発言を受けた俺は一瞬で嫌だと姫子に返答した。 だって俺と姫子はアニメとか漫画みたいな創作上の幼馴染ではなく……本当に絶妙な距離感の幼馴染なんだぞ? だからそんな姫子の家で暮らすなんて怖すぎて嫌だわ。
(いやでも……そんな事を提案してくるってことは?)
もしかしたらこちらの逆転世界だと、俺と姫子の関係性は思春期に突入した後も仲が良い幼馴染の関係が続いているのかもしれないな。 いわゆるラブコメ作品に登場する幼馴染キャラみたいな? いや知らんけどさ。
それに俺の両親と姫子の両親は友達同士だし、俺自身も子供の頃から姫子の両親には良くしてもらっていた。 だから本当に居候を提案してみたとしても、姫子の両親は快く許可してくれるのが容易に想像つく。
(まぁ絶対に嫌だけどな!)
誰に何と言われようとも俺は自由な一人暮らしを続けたいんだ。 姫子の家に居候なんていしたら気軽にエロ本も動画も何も見れなくなるじゃん。 そんなの俺に死んでくださいと言うようなもんだ。 だから俺は全力で抗うよ……!
「なんで嫌なのよ?」
「だ、だってほら、姫子の家に居候しちゃうと、友達と家で遊ぶことも出来ないだろ? 姫子にも両親にも迷惑がかかっちゃうしさ」
「友達ってどうせ志摩君でしょ? 別に私は気にしないわよ」
「ま、まぁ相手は雄二だけどさ……い、いや逆に姫子が友達を家に呼ぶ時に、俺がいたら迷惑だろ?」
「別に迷惑じゃないけど?」
「いやいやそんなわけないだろ。 え? この人誰ですか? 白雪さんの何なんですか? ってなったらお互いに気まずいだろ?」
「別に気まずくないけど?」
「俺が気まずいんだよ! そ、それにほら! 年頃の男女が同じ家に住むとさ、お互いに彼氏彼女が出来た時に大変だろ? お互いの恋人に変に勘ぐられて喧嘩とかになったら困るじゃ――」
「は、はぁ!? アナタ彼女がいるの!?」
姫子による今日一番の大声が飛び出した。 俺は普通にビックリとしてしまった。
「え? い、いや、いないけど?」
「あ……な、なんだ、ビックリしたじゃない! ……ま、まぁでもそうよね、アナタみたいな男子に彼女が出来るわけないものね」
「は、はぁ?」
いきなり姫子からモテないと馬鹿にされだしたので、流石に俺もカチンと来てしまった。 いやでも俺がモテないのは事実だから何も言い返せないんだけどさ……
(……ん? でも……)
俺は今日の出来事を思い出してみる。 鹿島さん曰く俺はドチャクソエロい男らしい。 それは後輩の日笠も一緒にいた時の態度で証明してくれていた。 という事は……もしかしたらこの夢の世界なら俺って結構モテるんじゃないのか?
(……うん、まぁいいや。 どうせ夢の中だし、姫子と盛大に喧嘩しちゃえ!)
あぁやっぱり「夢の中補正」って偉大だわ。 今からやろうとしてる事は、現実だったら絶対にやろうとは思わない事だからな。 何だかんだ言って俺はこの夢の世界を滅茶苦茶楽しんでるわ。
「……いや姫子には今まで言ってなかったけどさ、実は俺めっちゃモテるんだよね」
「は……はぁ!?」
「それに今日も二人の女子から言い寄られてきてさ、本当に困っちゃうよな」
「な、なにそれ! 私そんなの聞いてないわよ?」
俺は口からでまかせにそんな事を言い始めた。 姫子は「そんなの嘘だろ!」 ってすぐに言い返さずに動揺している辺り、もしかしたらこの世界だと俺はモテるタイプという説は本当に合っているのかもしれない。
「あ、相手はどんな子なのよ?」
「同級生と下級生に一人ずつだな。 下級生の方は俺の事を常に慕ってくれるサッカー部の後輩なんだ。 いつも元気で愛嬌もあってとても可愛いし、本当に良い女の子なんだよなー」
「へ、へぇ……そうなんだ、か、可愛いねぇ……ふーん。 で、でもアナタには年下よりも同学年以上の方が似合ってるんじゃない?」
「あ、そうかな? でも同級生の方はさ……いつも俺に会う度にエッチさせてくれって言ってくる超ドスケベ女なんだよなぁ」
「ぶはっ!? な、何よその女は!?」
俺は鹿島さんと日笠の事を多少ぼかしながら話してみた。 いや鹿島さんに関してはだいぶ脚色してるけど、まぁ夢の話だし別にいいだろ。
「え? だから俺の事を慕ってくれてる同級生の女子だよ。 いやぁ、やっぱり思春期の女子はエッチな子ばかりで困っちゃうよ。 あ、姫子の所は女子高だけど、そういうエロイ女子はいないのか?」
「い、いるわけないじゃない! そ、そんな卑猥な事を考えてる女子生徒は一人もいないわよ!」
姫子は顔を真っ赤にしながらそう言ってきた。 そんな事言ってるけど、案外姫子もこの世界だったらエロかったりするんじゃねぇかな? 全然わからないけど。
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