第7話 幼馴染の白雪姫①

 その後は、特に問題も起きる事はなくスポーツショップで備品購入をする事が出来た。 そして今は備品購入を終えてスポーツショップから出てきた所だった。


「どうします? 今から学校に戻りますか?」

「んー、たいした荷物じゃないし、今日はこのまま帰ろうか」

「はい、わかりました!」


 もう時間は結構遅くなってしまったので、俺達は学校には戻らずそのまま駅の方へと向かって歩いた。


 スポーツショップから歩きだして10分くらいで駅前に到着した。 日笠とは使用している路線が違うので、俺達は駅前で解散する事となった。


「お疲れ様です、先輩」

「おう、それじゃあな日笠」

「はい、また明日です!」


 俺はそう言って日笠が改札に入っていくのを見送ってあげた。 色々あったけど最後にはちゃんと笑顔の日笠が見れて本当に良かった。


 日笠を見送った後は、俺も自分の使っている路線の改札へと向かって行った。 その途中で俺は今日起きた色々な出来事を思い出していった。


(はぁ……なんだか今日は色々とあって疲れたな)


 鹿島さんと日笠の二人としか絡んでないはずなのに……思い出してみるとなんだかどっと疲れだしてしまった。 というかこれ夢なんだよな? なんでこんなにリアルな徒労感を覚えているんだろう?


―― ピコンッ


「……ん?」


 そんな事を考えていると、ふと俺のポケットに入れていたスマホが鳴り出した。 スマホを取り出して画面を確認してみると……そこにはとある人物からのLIMEメッセージが届いていた。


“夜に家に行くから”


「げっ……!?」


 そのメッセージの送り主は、俺の幼馴染である白雪姫子からだった。 何で夢の中でまで幼馴染に会わなきゃいけないんだよ! ……いや待ってくれよ、本当にそもそもなんだけどさ……


「この夢、本当にいつになったら覚めるんだよ……」


 俺はそんな事を思いながら帰路へ着く事にした。


◇◇◇◇


 俺は最寄り駅前のスーパーで買い物をしてから、一人暮らしをしているアパートに帰宅した。 時刻は18時半をちょうど過ぎた所だった。


 俺の両親は今現在海外に出向中なので日本にはいない。 両親には俺も海外に付いていくか? と誘われたんだけど、俺はそれを断って日本で一人暮らしをする事にした。 だって日本語以外喋れないから何か怖いじゃん。


 そんなヘタレた理由で一人暮らしを始めたんだけど、でもそろそろ一人暮らしを始めてから一年が経つ。 始めたばかりの頃は色々と失敗してきたけど、ちゃんと家事スキルは向上してきているし、今では割と一人暮らしを楽しめるようにはなっていた……だけど……


「はぁ……今日姫子来るのかぁ……」


 そんな俺の一人暮らし生活を脅かす天敵が一人だけいた。 それが俺の幼馴染である白雪姫子だ。


 姫子は俺と同じく17歳の高校二年生で、高校は俺の通っている高校の少し先にある女子高に通っている。 平均くらいの身長にスラっとした身体(胸についてはノーコメント)。 ヘアスタイルはセミロングでポニーテールにしてる女の子だ。


 性格は……うーん、なんて言えばいいだろう? 微妙な距離感だから上手く説明するのが難しい。 そりゃあ姫子と会話は普通にするけど、でも幼馴染だからと言って特別仲が良いかと言われたら、そんな事は全くない。


 いや確かに子供の頃は姫子とはよく一緒に遊んでいた。 俺の両親と姫子の両親が友達同士だったから家族間での付き合いがあったし、姫子の家にお泊りとかも頻繁にしていたしな。 


 でもそれはあくまでも子供の頃の話だ。


 思春期になると流石に異性の幼馴染と遊ぶ事はかなり減っていったし、俺達は高校も違う高校になったので、多分このまま俺達の関係は疎遠になっていくんだろうなぁ……って思ったんだけど、実際にはそうならなかった。 理由は俺が一人暮らしを始めたからだ。


 俺の両親が姫子の両親に頼んで、俺の生活をちょこちょこ確認しておいてくれと言ってしまったんだ。


 その結果、数日おきに姫子が俺の家に襲来するようになり、家の状況を確認してくるようになった。


 それで姫子は俺が料理とか掃除、洗濯などの家事全般をちゃん出来ているかをチェックしていき……それでもし俺が出来ていなければ、その事を両親に問答無用で報告するんだ。


 そのチェックが普通に厳しすぎたので、俺はこの姫子が襲来してくる日がとても恐ろしかったんだ。 ちなみに俺は心の中で姫子の事を小姑って呼んでいるんだけど、それは本人にだけは絶対に内緒だ。


 まぁそんなわけで、俺と姫子の微妙な幼馴染関係は高校生になった後もまだまだ続いていっていた。


「でもそれは現実の話だからなぁ。 この夢の世界では姫子との関係性ってどうなってるんだろう?」


 今日話をした鹿島さんと日笠は現実の彼女達とは性格は全然違っていた。 となると姫子も当然……?


「う、うーん……?」


 でもなぁ……俺達の間柄って腐っても幼馴染だからなぁ。 だから貞操概念が逆転していたとしても、俺達の関係性は変わらないんじゃないかな? いや知らんけど。


―― ピコンッ


 そんな事を思ってたら、姫子からメッセージが届いた。


“学校の用事があって遅れた。 あと一時間後に着くと思う”


 それは家に来るのが遅れるという旨の連絡だった。 俺は“わかった”と一言だけ返信してスマホを閉じた。


「んー、まだ姫子が来るまでに時間かかるな」


 あと一時間もあれば何かしら出来るな。 あ、そういえば……今日は滅茶苦茶疲れたし、今の内に風呂に入っちゃおうかな?


「……よし、今日は早めに風呂に入っちゃおう!」


 俺はそう決めて、制服を脱いでお風呂場へと向かって行った。

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