第5話 スポーツ大好き後輩女子の灯ちゃん②
「なぁ、日笠」
「え? あ、は、はい! 何ですか先輩?」
日笠に何て言おうか一瞬悩んだけど……メンドクサイから単刀直入に聞いた。 夢の世界なのに一々悩んでられるかっての。
「何で緊張してるんだ?」
「え!? し、ししししてないですよ!? 緊張なんて一切!」
「お、おう? そ、そうか」
いや明らかに動揺しているんだけど? それと何故かわからないけど、俺の思春期エロ大好きっ子レーダーもビンビンに反応している。 うーん、よくわからないんだけど、今の日笠には同士特有の童貞臭さが滲み出てる気がする。
(そうだ、困った時は……“概念を逆転させてみる”んだ!)
困った時は“発想を逆転させる”と良いと、昔の偉人が言ってた気がする。 なので俺は“発想”ではなく“概念”を逆転させてみた。
つまり、何で日笠が挙動不信になっているのか? を考えるのではなく、俺が日笠の立場だったらどうなっているか? を考えてみるんだ。 いやまぁそんなの考えた所で……
(……あっ!)
……いやあったわ、俺も同じ場面を体験したわ。 高校一年の時に、サッカー部の女子マネージャーの先輩(美人・彼氏持ち)と二人きりで備品を購入しにスポーツセンターまで出かけた事があったわ。
(あーはいはい、確かに1年の時に俺も同じようなシチュエーションにドキドキしたわ)
その時の俺は初めて異性の先輩と二人きりで出かけるというシチュエーションにテンション上がってたわ。 それで緊張とドキドキの状態で先輩にめっちゃ話しかけまくったんだけど……それが全て空回ってしまい、先輩にはずっと苦笑いをさせてしまったという悲しい記憶を思い出した。 いや今思うと恥ずかしいな。
(でも日笠が俺と二人きりでドキドキするなんて事あるか?)
俺は自分の事を俯瞰して考えてみる。 俺みたいな男には女子をドキドキさせられる程の魅力はあるのか? いやそんな魅力は無い。 自分で言ってて悲しくなるけど。
いやだって俺の顔つきは中の上(あくまで本人談)くらいしかなからなぁ……あ、でも、鹿島さん曰く俺の身体つきは“ドチャクソエロい”らしいよな……あれ?
(……あっ! これって巨乳でドチャクソエロい身体つきをしている女子先輩と二人きりで買い物に出かけてるっていうシチュエーションなのか!?)
あ、あぁそりゃドキドキするわ、そんな言葉だけを聞いたら俺だってかなりワクワクしちゃうもん!
それに異性と二人きりな時点で多少はドキドキしちゃうよな、俺もさっき自分で日笠と二人きりなんて「デート」みたいだなって言ってたし。
……でも、今の俺は「夢の中だと思ってる補正」と「鹿島さんに胸を滅茶苦茶揉まれた補正」が入ってるおかげか、正直これくらいの出来事では全く動じない。 ある意味今の俺は無敵な男になっているのかもしれないな。 なんか恋愛ゲームをやってる時のような気持ちに似てるのかも。
でも日笠からしたら、昔の俺と同じで、これはドキドキするシチュエーションなんだろうな。
「……うん、なるほどなぁ」
「な、なるほどってなんですか!? 緊張とかしてないですって!」
「あぁ、わかったわかった」
「ほ、本当にわかってますか?」
日笠は全力で否定してきたけど、大丈夫だよ日笠。 年上の異性にドギマギして上手く喋れずに緊張してしまうなんて俺達にとっては日常茶飯事だからさ。 だから安心しろ日笠。
そしてこれはつまり、日笠にも素質が十二分にあるって事もわかった。 え? 何の素質だって?
それはもちろん思春期エロ男子……じゃないか、思春期エロ女子のな。 きっと日笠もいつか拗れに拗れた鹿島さんのような一人前の女子になる事だろう。
そんな未来の同士のために、今の俺が日笠にしてあげられる事は……“思春期特有のつい妄想してしまうようなエロさ”を味合わせてあげて、日笠自身の成長を促させてやる事しかないだろうな。 うん、それしかない。
(俺は女子マネの先輩に成長を促して貰うような事なんて一切されなかったんだからな日笠! だからお前はラッキーだぞ!)
俺はそんな事を思いながら、どんな事を日笠にしてやろうか頭に思い浮かべた。 さっきの鹿島さんみたいに言葉で喜ばしてあげてもいいけど……うーん、何がいいかな?
(うーん、ちょっとだけ休憩しよう)
中々良い考えが思いつかず俺は一度考えるのをやめて休憩する事にした。 そして俺は糖分補給をするために、バッグの中からいつも食べてる棒キャンディを取り出した。 俺はこの棒キャンディが好きなので、バラエティパックを買って普段からバッグに入れていた。
「ふんふんふーん♪」
俺は鼻歌を口ずさみながら、バラエティパックの中から一番お気に入りのコーラ味の棒キャンディを取り出して一舐めした。
「……」
「……うん?」
そんな俺の様子を日笠はじーっと眺めていた。
「日笠も1本いるか?」
「え? あ、はい! 欲しいです」
「ん。 何味が良い?」
「あ、じゃあ私もコーラ味が欲しいです!」
「あいよ。 えぇっと……」
俺はバラエティパックの中を見ながらコーラ味を探す。 でも……
「すまん、コーラ味ばっかり舐めてたからもう無いわ。 これが最後の一本だったわ」
「あ、そ、そうなんですね……」
「すまんな、他の味なら全部残ってるんだけど」
「あ、い、いえ! 大丈夫です、他の味も好きなんで!」
「そ、そうか? それじゃ……あ」
その時、俺は手元にある一舐めしたコーラ味のキャンディを見つめながら今の状況を思い出してみる。 ……もしこの状況で当時の女子マネージャーの先輩にして貰えたら嬉しい事があるとしたら……それは……
「じゃあさ……これあげようか?」
「……え? ……えぇっ!?!?」
俺はそう言って、俺が手に持っていたコーラ味のキャンディを日笠に渡してみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます